見出し画像

VSインフルエンサー

「……確かに何かがいる。人に『かくあらねばならない』と思い込ませている 何者かが。それは人々の間に入り込み、いつのまにか世界を軋ませている」
「……人間の生涯に、何らかの価値が あるとするならば、それはその何者かと戦うところにしかない。自分の代わりにものごとを考えてくれる イマジネーターと対決するVSイマジネーター ――それこそが人々がまず最初に立たねばならない位置だろう」
「ブギーポップは笑わない VSイマジネーター 240Pより」

 フェミニズムとアンチフェミニズム、表現の自由、そして少子化。
 あるいは右翼、左翼。陰謀論にアンチ陰謀論。
 そういった思想の対立を我々は常に目にし、いずれかの陣営に属し、その思想的リーダーである尊師グルなり思想家なりインフルエンサーなりそういったものの言葉に賛同している。

 それは、ライトノベル「ブギーポップは笑わない」で書かれる「イマジネーター」そのものだ。
 小説の中でイマジネーターとなったヴィランたちはその精神感応的な超能力「MPLS能力」を使い、人々の精神の、魂の有り様を超能力で変えていく。
 時にはその能力の強大さで広範囲の人々を洗脳したり、あるいは洗脳されたやつから別の人へと感染していったり……
 彼らがなぜそんなことをするのか、といえばそれは人類の進化のためであり、ある種の救済であるからだ。
 彼らはほぼほぼ善意や使命感から人の悩み苦しみを解決するために人類全員を無理矢理進化させようとしている。
 当然、そんなことをしようとすればメチャクチャ拒否されるために人類の意志の代行者であり主人公であるブギーポップという超越存在的なやつに「世界の敵」として倒されたり、陰ながら改造人間を使って能力者狩りをしている秘密組織「統和機構」に狩られたりするのだが。
 まあ、ブギーポップはそんな話だ。
 仮面ライダーとニュータイプ論を混ぜてボーイミーツガールの甘酸っぱさをまぶしたようなそんな作品だ。素晴らしいのでぜひ履修してほしい。

 そして、最近よく思うのが我々の「主義思想イズム」というものを巡る争いはまさにこういうものなんだろうな、ということだ。
 「主義イズム」とは「今までの価値規範を破壊するもの」であり「世界を変革する意志」そのものだと言うことによく注意した方がいい。
 思想の争いとは超人的な奴らが神話的戦いをして我々はその余波で死ぬモブか、よくて雑兵だ。
 たまったもんじゃない。いい加減にしてくれ。
超能力で洗脳されて不思議パワーで戦う雑魚モブになるのも、思想に傾倒してインフルエンサーの言葉を無責任にRTするも同じなのだ。

 だから、我々はまず自分の頭で考えるVSインフルエンサーにならなければならない。自分の代わりに考えてくれる誰かに任せちゃいけない。というわけだ。しんどいね……

 それはそうと、村木厚子らのグループ(WBPCとかナニカグループとか呼ばれてるアレ)の件はまさにフェミニストというイマジネーターによる能力者同士の戦いみたいでしたね……

 能力者がこっそり大規模な計画してたらなんかポップしたぜんぜん別の野良能力者に潰される、みたいな。

 VSイマジネーターがまさにそんな感じだったのでなかなか事実は小説より奇なりだななどと思っております。

 ここにまさにぴったりだなと思った台詞を引用しておきます。

「未来ばかり見ているからそういうことになるんだ…イマジネーター」
「自分だけが可能性だと思うから、思いも寄らぬところから出てくる他の可能性にいつの間にか足を掬われる」

そして……この有様になった世界にはこの台詞を贈りたい。

「もしも君が善良たろうとするなら、未来などにはかかわらぬことだ。 それはほとんどの場合、歪んだ方向にしか向いていない」



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?