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圧巻漫才!タモンズが「詩芸」で伝える一心同体のエネルギー

圧巻の漫才だった。

2023年5月13日、タモンズのライブ「詩芸」を大宮ラクーンよしもと劇場の客席で観覧した。


タモンズの漫才に引き込まれた60分

吉本興業所属、芸歴17年目。大宮ラクーンよしもと劇場を拠点に活動する「大宮セブン」メンバーでもある大波康平さん、安部浩章さんによる漫才師コンビ・タモンズ。

「詩芸」は、タモンズが60分間1本の漫才を披露し続ける単独ライブ。

60分間漫才をやり続けるのは、だいぶチャレンジングな試み。やる方はもちろんだが、見る方もなかなか大変。

この「詩芸」の舞台、正直なところ、見ていてまったく疲れなかったとまではいえない。

長いな、ちょっと疲れたかなと感じた瞬間もあった。

とはいえ、二人が漫才を終わらせた瞬間に思ったのは、「えっ、もう60分たったの?」という驚き。

正直まだ賞味30分くらいの感覚だった。それだけ、タモンズ二人のエネルギーにぐいぐい引き込まれていたからだろう。

ちょっと疲れはしたけれど、彼らの漫才は本当に楽しかった。

最初から最後まで弾け続けた安部さん


この日、とにかく圧巻だったのは、ボケの安部さん。

ツッコミの大波さんは途中で一回だけ舞台裏にはけたけれど(たぶん、給水?)、安部さんは最初から最後まで出ずっぱり。歌ったり怒鳴ったり、SM女王様になったりして、身振り手振りも交えて全身全霊をマイクの前にぶつけていた。

後半になるにつれて汗だくになって顔も上気させて、でも所狭しと弾け続けていた安部さん。この日の彼は、「お笑いバックスちゃんねる」などでおなじみのおっとりして愛嬌あるキャラクターにパワフルな凄味が加わっていた。

安部さんの姿、ファンの贔屓目で褒めすぎかもしれないけど、ベテラン天才漫才師・オール阪神師匠を彷彿させるものがあった。

いつかタモンズがオール阪神巨人みたいになって、安部さんが阪神師匠みたいになってくれたらいいなあ。

賢さ・破天荒・覚悟を兼ね備えた大波さん

タモンズといえば、もちろん大波さんも忘れてはならない。

お笑いバックスちゃんねる」が好きでよく見ているのだけど、そこで感心するのは、大波さんのトークが非常にクレバーなこと。

いつでもその場の趣旨を理解して、的確なフォローをしたりわかりやすいトークを放り込んだりしてくれる大波さん。彼がいるおかげで舞台の風通しが非常によくなる…という場面を何度も見てきた。

もう一つ彼の好きなところは、非常に肝が座っていること。

賢くその場を滑らかにするばかりじゃない。芸人らしいパンチやカミソリをしっかり奥に仕込んでいて、時にとびきり破天荒な勝負を仕掛けることもある。その心意気がまた芸人らしい。

「詩芸」の舞台、安部さんが暴れまわる中で舞台が常にきちんと引き締まっていたのは、大波さんががっつり安部さんを受けとめ続けていたからこそだと思う(水は飲んだっぽいけど)。

舞台の風通しをよくできる賢さとがっつり戦う覚悟をかねそなえた大波さんがいるからこそ、タモンズの漫才は過度に散らからず、がっつり渋くかっこよく決まる。「詩芸」を見ていて、改めてそんなふうに感じた。

タモンズの一心同体エネルギーがいつか花開く

60分間、サンパチマイクの前で全力漫才をやりきったタモンズ。

荒削りなところもあったし、もう少し間があったり力がぬけたりしなやかになるといいな…思う部分もあるにはあった。

でも、そうしたことは漫才を続けていけば、おのずと熟練されていくだろう。

何より価値があるのは、タモンズが60分間全力で漫才をやりぬいたこと。

二人が畳み掛けるしゃべくりから、相当稽古したんだろうなというのがよくわかった。タモンズの一心同体のエネルギーが舞台に満ちていたと思う。

これぞ、漫才師だ。

「詩芸」、チャレンジングな試みではあるけれど、やり続けたならタモンズのしゃべくりはどんどん磨きがかかりしなやかになるだろう。その先には彼らが漫才師として花開く、輝く未来が待っているはず。

お笑いが進化し続ける中で、決してなくならないでほしい芸があるとすれば、サンパチマイクの前でしゃべくりだけで笑いをとるかっこいい漫才師。

タモンズはきっとそれになれるし、なってほしい。



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