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鉄道ファンのマナーに警鐘

相変わらず後を絶たない、鉄道の撮影を巡るトラブル。ただ、これまでは小競り合いや大声を上げるなどの迷惑行為程度で済んでいましたが(もちろん『程度』で済ませて良いとは思いませんけど)、ついに傷害事件に発展してしまいました。

事件は25日午後5時過ぎ、JR西川口駅で発生しました。その日に通過する臨時列車を目当てに、多くの鉄道ファンが西川口駅に集まっていましたが、撮影の邪魔になると10~20代の男性と中学生がトラブルになりました。その様子を撮影していた別の中学生に腹を立てた男性が、撮影していた中学生を押し倒し、中学生は後頭部を強打して頭蓋骨骨折の重傷を負いました。男性はその場から逃走したとのこと。

どのような状況であったとしても、相手にケガを負わせるようなことは絶対にしてはいけません。これは立派な犯罪です。撮影していた記録が残っていますので、犯人は速く自首した方が良いですし、仮に逃亡したとしても、まもなく捕まることでしょう。

しかし、これはいよいよ大きな問題となってきました。これまでも線路への侵入や器物損壊、迷惑行為で鉄道ファンそのものへの視線が厳しいものとなってきましたが、傷害事件ともなると、もはや見過ごして良い状況とは思えません。JRにしても、これまで撮影行為を禁止せず、わざわざ駅員や警備員を配置して対応するなど、辛抱強く撮影場所を提供してきたと思っております。ただ、そろそろ考える時が来ているのではないでしょうか。

私自身、鉄道そして鉄道ファンによって仕事をさせてもらっている手前、「鉄道ファンは撮影するな」とは言いたくありませんし、こうした事件を起こす人間はほんの一握り、大勢のファンがいれば、その何割かに迷惑な人が紛れ込むのは、別に鉄道趣味だけの話ではありません。しかし、あまりに迷惑行為、ましてや傷害事件まで発生したとなっては、駅構内での撮影は禁止という話に至っても仕方がないことだと考えます。同罪とまでは言いませんが、あのトラブルが発生したとき、周りにも別のファンがいたはずですが、誰も止めに入らなかったのは残念でした。自分たちの楽しい趣味を奪いかねない、迷惑行為を働く人たちを窘める、自浄作用が働かなかったことも問題です。

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ところで、今回の犯人を擁護するつもりは毛頭ございませんが、事件を伝える記事を読んでいくと、中学生が(撮影の邪魔になるから)もう少しだけ寄って欲しいという男性の言葉に耳を貸さなかった、という話もあります。これがもし事実だとすれば、これはこれで問題で、その場にいる皆が気分良く、最高の撮影ができるよう、相手を思いやることも大切です。事の発端が中学生のマナー違反だとしたら、いったい誰がそれを彼らに教えるべきなのでしょう。他人のことは考えず、自分さえ良ければ関係ない…というのは、なんだかネット社会への強い依存で、リアルな人間関係を築けていない人たちが増えているのではないか、という危機感もあります。

昔は、その場にいた年長者が若い人たちにマナーやテクニックを伝授し、それが代々伝わっていくものだったようです。もちろん、雑誌でもマナー向上を訴えるような特集がありました。それがリアルな付き合いが減り、雑誌も若い世代がネット依存であまり読まなくなったことで、以前ほどには影響力が無くなったことで、継承されなくなってしまったのかとも考えられます。

いったい、どうしたらこの問題を解決できるのでしょう?撮影は登録制にして許可書を持たなければ撮影できない?それとも鉄道会社が撮影場所を指定し、必ずそこで撮影タイムを設けてから発車?でもそうなると、せっかく駅で記念撮影しようと思っていた親子連れの笑顔すら奪いかねないですし…

日本のサッカーファンが、国際試合で試合終了した後に自らゴミ拾いをして、世界から称賛されたことがありました。それは、サッカーや選手たちへの最大限のリスペクトと言っても良いでしょう。しかし一方で鉄道ファンはどうか。罵声とゴミの散乱と小競り合いと迷惑行為、最後に傷害事件。鉄道に楽しませてもらっているのに、リスペクトの欠片もないと思いませんか?

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今、少なくとも良識ある鉄道ファンに求められるのは、こうした迷惑行為を働く人たちにNOを突き付ける、何らかの行動が求められているのではないでしょうか。残念ながら、鉄道職員や警察だけでは対応しきれなくなっています。自浄作用というのが、今の鉄道趣味全体に必要なことだと思います。

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