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子ども自身で考え、改善し、自己肯定感を高める!!オランダの「コーチング教育」現地視察報告会まとめ。

世界ー”こども”が幸せな国と言われるオランダ。

・テストもない
・宿題もない
・時間割は自分で決める

それでも(だからこそ、かもしれないが)労働生産性は日本の1.5倍だという。

そんなオランダの教育に以前から興味があり、オランダの教育視察報告会に参加させて頂いた。視察に行って来たのは、北海道教育大学の越智くんと長澤くんだ。今回のブログでは、その報告内容をふまえ、わたしなりに感じたこと、考えたことを記録しておこうと思う。

ティーチングには限界があるんじゃないの?

越智くん&長澤くんは、2040年を次のように予想している。

・人口はガクッと減少
・日本の49%の仕事が自動化される(人とAIの差はモチベーション。モチベーションの低い人はAIに取って変わられる。)
・学校いらない説(Google大先生、youtube、スタディーサプリなどで十分)
・幸せや成功の形が変わる(働き方も生き方も多様化)

→戦いのルールが変わり始めている。正解のない時代を生きる子どもたちに、教師は教えるだけでいいの?ティーチングには限界があるんじゃないの?

これが、越智くんと長澤くんがバックキャスティングアプローチから導いた現状教育に対する懸念だ。2人は教師になるべく、教育学部で学んできたわけだけれど、日本の教育をアップデートしないとヤバいんじゃないか?と感じている。では、どんな教育かいいのか、各国ではどんな教育が行われているのか視察に行こうということで、まずはオランダへ。

■オランダ教育の基本情報

・5歳〜18歳のすべての子どものために義務教育がある
・教育システムとしては初等教育と中等教育の2つに分かれ、そこからさらに年齢やレベル別のグループに分かれている
・入るのが難しいというより、出るのが難しい
・子どもたちを200名以上集められたら、自由に学校を設立して良い
・基本的に義務教育費用は公立、私立ともに無料
・おおよそ10人の子どもに1人の教師がいる

日本では「イエナプラン」「シュタイナー」「モンテッソーリ」と聞くと私立の学校が一般的だが、オランダでは公立でもそれぞれの教育方針に沿った教育が行われているところも多い。他にも「多重知性論教育」というのがあるそうで、これがわたしにはとても興味深かった。今日の本題ではないので簡単に書かせてもらう。

◎多重知性理論教育とは?

まず「多重知能理論」とは、人間には以下8つの知性があるとされ、これらのそれぞれが作用して、その人の個性を形成しているとする考え。

・論理数学的知能
・空間的知能
・身体運動的知能
・音楽的知能
・対人的知能
・内省的知能
・博物的知能

そして、「多重知性理論教育」は、その個性(その人に強く働いている知能)に合わせて教育を進める方法だ。例えば、対人的知能が高い人はグループワークなど、他者と関わりながら学びを深めていくのも良いが、内省的知能が高い人は集団で学ぶより個々で学習を進める方が良かったりする。

普通に考えていろんな個性の子がいるわけで(大人だってそう)、その各々に合った教育が出来るのであれば、これは効果が期待できそうな気がする!ただ、当然指導側にもきちんとそれぞれにあった知識や教育要領が必要となるので、日本の教育現場での実現はすぐには難しそう。

「多重知性理論教育」については、わたし自身かなり興味があるので、もう少し深堀して、また書きたいと思う。

■オランダの「コーチング教育」

今日の本題は、これから述べる「コーチング教育」。越智くんと長澤くんの「ティーチングだけでいいの?日本の教育をどうアップデートしたらいいの?」という問いに対し、オランダで目にした「コーチング教育」というのが1つの答えになったようだ。

ティーチング:「教員 →→→ 子ども」一歩通行での教え。
コーチング:「教員 ⇄⇄⇄ 子ども」双方向でのやりとり。相手の中にある答えを引き出す手法。

◎実際のコーチング教育現場の様子

1人1人の子どもが、1週間の時間割を自分で組み、個々のペースで学びを進めていく。国語、算数、美術など、教科によって学校側が決めた時間割はないので、1つの教室に算数をやっている子もいれば、国語をやっている子もいる。先生は教室の中を周り、子どもたちの様子を見ながら、必要があれば声をかけたり教えたりしていた。

評価の仕方は、みんなが同じテストを受け、その点数で「できたかorできていないか」を評価するのではなく、その子自身が考えた1週間の計画を振り返りながら、うまくいったのかどうかを先生と一緒に確認していく。計画通りにできていなかったからといって ”できていないね” ではなく ”どうして達成できなかったんだろうね” と問うことで、次の1週間の計画には改善が見られる。こうした1人1人の取り組みをトータルで評価していく。この流れがまさに「コーチング(教師=コーチ的存在)」で、子ども自身で考えさせ、結果にも改善が見られ、自己肯定感を高めていくことにも繋がる。

発達障害の子も同じ教室にいる。日本の公立学校の場合、30人ほどの生徒に教師1人という過酷な環境の上、みなが同じレベルの授業についてこれるように教師は奮闘するため、クラスに発達障害の子がいても、その子に合わせた特別なカリキュラムを組むなどの対応は難しい。でも、オランダの教室では、そもそも個に合わせた学習計画をその子自身で組むわけだから、発達障害の子も同じく自分にあったペースで、自分のやり方で進めれば良いのである。

上記のイラストは、実際に発達障害の子が自分で作った計画表の1枚だそうだ。彼女は、授業が始まっても他の子と同じようにスムーズに学習のスタートができなかった。まず自分が何をすべきが分からないのだ。本人だってきっとモヤモヤしたことだろう。「何をしたかったんだっけ?」「どんな準備がいるんだっけ?」といった先生の声かけ(コーチング)によって、彼女は自分が取るべき行動を分かりやすく可視化することにしたのだ。

まず自分は何をするのか、何が必要か、どう進めるのか、どうなればクリアなのかなど、自分自身がとるべき行動の順番が一目で分かるように仕上がっている。このプラス1枚があるだけで、彼女も他の子と同じようにスムーズに学習をスタートし、自分のペースで自己学習を進めていけるようになったという。

また、教室には信号機のようなものがあって、「青=しゃべっていいよ、黄色=ヒソヒソ話ならOK、赤=静かに学びましょう」というルールがあるそうで、必要以上にお喋りが目立っている時には「今、なんの色かな?」と教師が問うようにしているそうだ。

■オランダの「テクナジウム教育」

誤解してほしくないのは、オランダに「ティーチング教育」がないわけではないし、ティーチングを否定しているわけではない。オランダには「テクナジウム教育」という新しい教育を取り入れている学校もある。

その学校では、午前は教科書を使って、いわゆるティーチング教育、「解のある問い」を中心にした授業が行われる。午後になったら今度はコーチング教育、「解のない問い」をプロジェクトベースで行っている。

◎実際のプロジェクトベースコーチング教育現場の様子

現実に起こっている社会問題を取り上げ、その解決策を生徒が考えるスタイル。政府や企業から問題提起がなされることも普通にある。柔軟な発想を持っている若者たちに考えてもらうことで、政府や企業にもメリットがあるのだ。

課題の例をあげると
・ユトレヒトとスキポール空港の間で列車が増え、騒音が問題になっている。解決策を考えよ。
・1人暮らしをする人が増えている。よりエコな1人暮らしのマンションを考えよ。
・人はなぜ旅をするのか。
などがある。

個人、またはグループで解決策を考え、検証し、最後はプレゼンを行う。実際に優秀なアイデアは表彰されたり、企業に採用されたりすることもあるらしい。3Dプリンターが学校に設備されていて、実物(ミニチュア)を作りながら立証実験をすることだって出来る。この辺り、教育にかけるお金をケチっている日本とは違う。

ここで行われているプロジェクトベースの授業は、まさにわたしが早くから子どもにとって必要だと考える「PLTSサイクル」が一貫してできている。日本の総合学習の時間もこのレベルで取り組めれば、かなり充実するのでは?

■オランダの教員養成大学

ここまで述べてきたような授業を、すぐに日本で取り入れるというのは難しい。そもそも教員養成の段階で違いが大きすぎる。オランダの場合、教師の役割として「コーチング」「サポート」「インスパイアー」を子ども達に与えることが重視される。教員の卵が学ぶカリキュラムにも、きちんとそうした内容が組まれているからこそ、現場で活かせるのだろう。日本の教育過程に詳しいわけではないが、教員の知人に聞いてみると、学生時代に「コーチング」を学んだという者はほぼいなかった。

オランダでは教育実習も、大学1年生から積極的に行われている。まだ何もわからなくても、現場で子どもたちと向き合ってみることを大切にしているらしい。教育実習中の授業の様子は終始ビデオに撮り、後日、大学の教授や教員を目指す仲間と共に実習の状況を振り返る。「この場面で子ども達になんでこういう質問をしたの?」など、言動の動機と理念まで考えさせる目的があるそうだ。コーチング教育を行う教員自身もコーチング教育を受けているからこそ、そのメリットをよく理解している。

■コーチング教育を日本の学校でどう取り入れるか

最後に、越智くん長澤くんから「日本の学校でコーチングをどう取り入れられるか」という問いがあった。これはなかなか難しい。やはりまずは、教える側にそれ相応の準備が必要だと思う。

日本でも大人へのコーチングというのは割と昔からあるようで、企業では、社員向けにコーチングセミナーを行うことはよくあるらしい。まずは、それを教員向けにも行い、先生たちにもコーチング教育そのものを体感してもらってはどうだろう。その上で、子ども向けのコーチング方法を学び、実際の教育現場に活かしてもらえたら…と、いち母親としては思う。とは言え、現状の教員達は、新しい指導要領やら研修、雑務でアップアップだと聞く。子どもたちのために、一所懸命に尽力している先生方も数多く知っているが、日本の教育界は断捨離できずして新しいものを増やすばかりでは、どんなに優秀な教員だってキャパオーバーだろうなぁ…。

わたし個人の考えとしては、まずはコーチングの要領を家庭で活かす方がbetterだと思う。教育の場は、なにも学校だけではない。今回の報告会でも数名のママと出会ったが、これからを生きて行く自分の子ども達にどう”生きる力”を育くめばいいのか、みな真剣に考えていたし、出来ることから取り組もうとしていた。きっとそういうママやパパは全国にたくさんいるはずで、まずはその1つ1つの家庭から取り組みを始め、地域に、社会に、というふうに輪を広げ、みんなで子ども達を育むムーブメントが広がっていけば理想的だと思う。

既に、子育てにおけるコーチングは「子育てコーチング」として一部の親の間では注目されていて、「子育てコーチング」とgoogleで検索すると約3,370,000件ヒットし、amazon内で検索すると168件の書籍が並ぶ。わたしも、少しずつではあるが子育ての中に活かしはじめたところだ。ゆる〜く。

このブログを読んでくださって、ウチではこんな風に子育てコーチングを実践しているよ^^という先輩ママ&パパがいたらぜひ繋がらせて欲しい。(Twitter:@pumpkids7) 

ではでは。

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