小さい頃から 理想の未来を 目指してる

片側が3車線もあって、歩いている人はポツリポツリしかいない、バイパスの只中に、レンタルビデオショップがあった。白白とした蛍光灯が、遠くから望める。店内はグレーが基調で、棚も黒っぽくて、BGMすら流れてなかったかもしれない。トイレを借りた覚えはないが、きっと2度は入らずに済ませたい感じだったと思う。

わたしはなにも借りなかった。それは、隣県にある祖母の家へ行きがけか、あるいはその帰りに、両親がかならず寄るレンタルビデオショップだった。

くらい所がきらいだった。ショップの周りには建物も少なく、そのころ住んでいた駅近くの街とは正反対の雰囲気だった。蛍光灯はいまにも切れてピカッピカッと鳴りだしそうだし、店員は寝不足の大学生みたいだし。もちろん、妄想である。まだ買い物もしたことがない、小学校にも上がらないくらいの時分のレンタルビデオ店の話だ。

だからかどうか、レンタルビデオのことを私はしばらく信用していなかった。映画やアニメは好きだとしても、借りてくることはしない。

今になって思う。あれは、あの時代に独特の、店というものの雰囲気だったのでは、と。

暗い所がきらいだった。明るさが薄暗い、という意味でもあるし、雰囲気がジメジメしているという意味でもある。わくわくしない場所。この地上のなかで、停滞している掃き溜め。

それを嫌がるのは、わたしと同世代の人間すべてに当てはまる事なのだろうか。人にはそれぞれ固有の性格があって、好き嫌いがある。暗くてせまい所が好きな向きも、もちろんあろう。

ただ、それから30年ちかく経って周囲を見回してみると、そういう陰気な雰囲気の店など、そうそうお目にかかれるものではなくなっている。みんな本当は、あれが好きじゃなかったのでは、ないだろうか。と、そう思う。

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