毎日毎日働いていたら


毎日毎日働いていたら あなたの名前の漢字を忘れた
と、尾崎世界観が歌っていた頃、ローソン、派遣、ローソン、派遣、ローソンローソンローソンと、よく働きよく遊んだ。今より時給の低いローソンだけで手取り20万以上稼いだこともあった。
これは2004年前後
中村さんという夜勤のアルバイトが、大雨の中自転車で出勤して、からあげクンなどが入るフライヤー陳列棚の中にびしょ濡れの自分の靴を入れた。彼は弁護士志望だった。靴が乾いたのか、乾かなかったのか知らないが、客に通報された。
次の日ぼくが夕勤で中村さんが夜勤だったのだが、中村さんの出勤時店長がぼくの横に居て、きのうの沙汰の後の店長、どんな接し方をするんやろかと見ていたら、中村さん出勤、店長、「中村くん、きのう、巨人勝ったね」って……。
これはいつ思い出しても愛おしい狂気の沙汰だ。
中村さんが辞めて入ってきたのが、後にセックス亀田と渾名され賢いユリシーズに加入することになる亀田さんだったのだけれど、初めて一緒になったときにハートのイデアの話をしてくれてちゃんと中村さんを継承していた。本人にそんなつもりは無いんだろうけど。

亀田さんが一人暮らしをするアパートにローソンのみんな(4人くらい)で行くことになってぼくが最初に着いたのだけど亀田さんは靴を履いたまま椅子に座っていたので「あれ……靴……」って普通に疑問を投げかけたら「アメリカではこれが普通ですよ」って言うんで、そのアメリカンスタイルに則ってぼくも靴のまま上がってみんなを待ち、他のみんなが同時に来たときに家主でないぼくが出しゃばって「この部屋は靴のまま入るみたいっす」と言ったらみんながニヤニヤしながら靴で上がったのだけど、「何やってるんすかー!靴脱いでくださいよー!」と、亀田さんキレた。

ローソンのシフトが増えたということもあったのだが派遣のバイトは移動時間が長く結果的に拘束時間と給料が見合わないと思ってやめた。
サンボマスターのボーカルみたいな男が事務所で寝て店長に起こされて出勤、という漫画みたいな情景が有り彼はプロミュージシャンを目指す男友達のために昼も夜も働いていると言っていたがまったく幸福な感じがしなかった。たぶん色んな話を聞いたが、〈足の裏をしっかり洗うとな。神様の道が出来て、お金が入ってくるんだぞ〉という話くらいしか覚えていない。
ローソンは店長も気のいい人でストレスはそれなりにあったものの〈こんなところからは早く抜け出したい〉的な思いがあったわけではなく、ただ、家から早く抜け出して一人暮らしをしたいと言う願望が強くあって、18歳になったとき生まれて初めて、貯金が貯まったので引っ越すことになり、その頃気まぐれで猫を飼い始めることになったのでペット可でなるべく安い物件を求めたところ、次長課長の河本みたいな不動産従業員が勧めてくれたのが八王子駅から8キロくらいの元八王子という場所にある積水ハウスのアパートで、築1年、1K、部屋は8畳でオートロック、家賃4万3000円という破格 で、即決した。
今思い返すとここまでの間好きにライヴを見に行ったりやったり、映画を観たりCDを買ったりと有意義に過ごしていた。
元八王子はとにかく仕事が無かった。なんとなく、電車に乗って仕事に行くというイメージも湧かなかったしそもそも駅までが遠かったのでなるべく近くで仕事を探した。
八王子駅前のキャバクラ店のボーイをやってみたが先輩のボーイのいびりが激しくて1日でやめた。
その後もっと家から近いマクドナルドで働き始めた。店員の殆どが創価学会員だった。そもそもぼくはマクドナルドがそんなに好きじゃなかったのだけれど、生活のためだとがんばってやっていた。

ここから先は

1,396字

¥ 500

基本的に無駄遣いします。