下山田志帆のカミングアウト【ここから編】

【これまで編】でこれまでの人生を語ってくれた、しも。
これからどんな活動をしていくのか、「下山田志帆のここから」を聞きました。

▼拠点をドイツから東京へ

ふみな:
今ドイツでサッカーしてるじゃん?
東京にも住んでたことがあって、実家も別にあるでしょ?拠点問題は今後どう考えてるの?

しも:
実は、来季日本に帰るんですよ。ドイツのサッカーに不満があるわけではないんですけど、2020年の東京オリンピックに向けてLGBTの活動が各地で活発化してる絶好のチャンスに日本にいないのはもったいないと思って。
みんなが注目してるし、みんなが何かやろうとしてるのね。その波に乗らないわけにはいかない!と思って。

史菜:
なるほどね。オリンピックが日本であるなんて、一生に1度か2度だもんなあ。

しも:
とりあえずオリンピックが終わるまでは日本にいて、本業のサッカーは現役でやりつつ、LGBT関連の活動と女子サッカー選手のキャリアに関する活動をしていきたいと思ってます。
LGBT関連の活動に関しては、LGBTアスリートのコミュニティを作っていくところから始めようかな、と思っていて。すでに動き始めています。

史菜:
おお!いいね!

しも:
親にカミングアウトしてから、自分の「楽しい!」に正直に生きようと思ったの。今まで閉じ込めてた分、今年1年間は楽しい!に労力を注ごうと思って。ドイツでのサッカーが今の“一番の楽しい”“やりたい”ではないって気づいたので、年始にドイツに戻ってきて2日後には来季の更新は無しって伝えてました。

史菜:
しもって行動早いよね。

しも:
素直になった結果だよね。これやったら楽しそうだからやろう!って。オリンピックに向けての動きはもうすでに始まってるから、あとから乗っかる形にはなってしまうけど、やらずに後悔したくないな、と。

史菜:
何してる時が一番楽しいの?

しも:
ご飯食べてる時かなあ・・・

史菜:
あ、うん、OK!(笑)

▼これからの活動について

史菜:
女子サッカー選手のキャリアについてはどんな活動をする予定?

しも:
女子サッカー選手がもっとカッコ良いアスリートでいるためのアクションを起こす組織を作ろうとしてます。

史菜:
LGBTコミュニティと女子サッカー選手コミュニティの2つのコミュニティ、2つを運営していくことって結構大変なことだと思うけど、何か困ってることはある?

しも:
海外女子サッカーコミュニティは、仲間が見えている状態。
でも、LGBTアスリートコミュニティの方は女子サッカー以外のLGBTアスリートを直接知らないし、仲間が見えていない状況なので、そもそもどこへアプローチすればいいかわからない点ですかね・・・。

史菜:
なるほどね。大きな違いだね。

しも:
前例もないし、何も見えてないから一人でやるには不安すぎるんです。でも、あまりにも見えてないからこそ、誰かが「これやりたいんですけど、誰か一緒にやりませんか」って手を挙げないと、一生見えないままなんじゃないかっていう焦りもあって。
カミングアウトした時にいろんな人に「しもはしもでいていいよ」って言ってもらって、彼女も「リスクとかどうでもいいよ」って言ってくれたおかげで、今は勇気を持って手を挙げる覚悟がやっとできました。
自分が手を挙げた時に、誰かから「気持ち悪い」って否定されたとしても、それでも彼女とか友達はそれでいいんだよって言ってくれてる安心感があるから。

史菜:
「仲間が見えていない」状態のLGBTコミュニティ、どんな動きから始まるのかな?

しも:
とにかく今は、仲間を集めたい。スポーツに真剣に取り組むLGBT当事者の選手と繋がれたらって。スポーツに真剣に向き合っていれば、学生でもプロでもアマでも良いです。セクシャリティが理由の悩みを互いに相談しあったり、一緒に頑張ろうって刺激しあえたり、そんな繋がりがコミュニティ内に生まれたらなと思っているところです。

実は既に同じようなLGBT当事者の元現役選手の人と現役選手の3人でコミュニティを発足していて。定期的にテーマを決めて話し合ったり、今後のことについて相談したりしてます。
今はまだ仲間が少ないし、前例がないからこそコミュニティに何を求められているのかが見えにくい状況だけど、それもまた話し合いながら作っていきたいなと。

史菜:
3人でどんな話をしたの?

しも:
例えば、チームへのカミングアウトについてとか。
自分含め2人は親に話すよりチームにカミングアウトするのは楽だったんです。でも、もう一人の人は逆だったって。
それを聞いて、自分が本当に無知だなあと。あまりにも居心地のいい世界(女子サッカー界)にいたので、多くのLGBTアスリートが抱えているであろう問題に疎いのかもってことに気づかされて。コミュニティを通して色々気づくことができたり、普段は口に出せなかった悩みを話せたりしていますね。

ただ、実際LGBTアスリートがどんなことを求めているのか、どんなコミュニティが必要なのか、そもそもアスリートだけに限定する必要はあるのかとか、とにかく本当に何も見えなくて…。どんなコミュニティであるべきなのかは、やりながら見つけていく感じになりそう…。

史菜:
コミュニティは「こうでなければいけない」って形があるものではないはず。
最近、会社もそうなっていくと思っていて。例えば、誰も所属していない法人格を作っておいて、プロジェクトを細分化した上で、「ここやりたい!」っていう人が分担していく働き方がこれから増えるんじゃないかな、と。
それって法人だろうが、コミュニティだろうが、一緒だと思うんだよね。

しも:
へ~。そんな風に思ってたんですね。面白い。

史菜:
私実は、最近流行りの「オンラインサロン」って言葉があんまり好きじゃなくて、この違和感、どこから来るんだろう・・・ってモヤモヤしてたんだよね。
でも茂木健一郎さんが「オンラインサロンが個人的にどうしても好きになれないので、note(ノート)を始めます。」に、「メンバーとそれ以外がはっきりと区別されているのも、ぼくの好みに合わない。」って表現してて。
例えば尊敬する教授がいて、その人の弟子になるために直接頼まず大学を「受験」しなければいけないっていうのはどうかと。メンバーが固定された閉ざされた空間だってことに気づかされて。
なるほど、私の「オンラインサロン」に対する違和感はこの閉塞感から来るのかな、と気づいたんだよね。
コミュニティも、閉ざされたものになるのは嫌だなって私は思う。

しも:
閉ざされたらもったいないよね。最初は閉ざされていたとしても、後々外の世界に飛び込んでいくことで初めて新しい楽しさに気づけるんだと思う。

史菜:
そもそもの話になるけど、LGBTコミュニティである必要ある?「LGBTに限定される」=「閉ざされている」って思えるんだけど・・・。
さっき「下山田志帆」という人間を描写すると、いろんな要素を言葉にして表現するって言ってたじゃん?それって「中崎史菜」もそうじゃん。「岩崎陸」(大学時代の監督)もそうじゃん。(笑)

しも:
急に岩崎さん。(笑)

史菜:
「コミュニティを作ること」=「カテゴリーを作ってそこに当てはまる人を集めること」だと思うんだけど、そうするとさっきしもが話してくれたグラデーションのある人たちをカテゴライズしちゃうことになるような気が。
「誰でも来ていいよ」で集まった人と楽しいことをするパーティーみたいなものとは、また別なのかな?

しも:
LGBTであることを否定されるかもしれないって怪しみながらそこに参加するよりも、安心して話ができる人たちの集まりだってわかって参加する方が最初はいいのかな、と思って。

史菜:
絶対的な安心感のある場所をまずは作っていくってことか。
安心できる場ってどう作っていけばいいのかなあ。

しも:
自分にとっての絶対的な安心っていうのと、他の人の絶対的な安心があまりにも違うってことに、コミュニティで話していて気づかされたんです。クローズドな状態が安心な人もいるんだなって。オープンにしても安心できる状況を女子サッカー界で知ってしまってるから、こんなにも違うんだっていう戸惑いが正直今はあります。
だからこそ、オープンにしたい人は仲間と一緒に外に飛び込んでいけて、クローズドにおしゃべりしたい人はおしゃべりを安心して楽しんで、どちらの需要にも答えられるコミュニティにしていきたいんだよなあ。
まだまだ小さな動きでしかないから、どうなるかなんてわからないけど。

史菜:
まだ小さな動きだとしても、賛同してくれている人はいるんでしょ?

しも:
はい。一緒にコミュニティづくりをやってくれている当事者2人の存在は本当にありがたいです。LGBTの周りにいる人の意識が変わることもとても大切だけど、当事者の意識が変わっていくこともこの先絶対必要だと思っているから。

史菜:
当事者の意識ってどういう意味?

しも:
怖いけど、殻に閉じこもるのではなくて、自分から飛び込んでみることかな。

いまだに「LGBTという存在」が見えていない人が多くて。「本当にLGBTって本当にいるの?」とか「LGBTの人ってちょっと変だよね」って思ってる人もいる。それを変えるために、これからは「実はLGBTなんです」って勇気を持って伝えてみつつ、普通で何気ない時間をその人たちと共有する。
そこで、まずは「LGBTって本当に近くにいるんだ」ってことに気づいてもらって、「なんだ、普通の人なんじゃん」って思ってもらえたら。セクシャリティを言える人が増えれば増えるほど、「普通なんだ」って思ってもらえる輪が広がっていくと思う。そうしたら、当事者自身も生きやすくなると思います。

史菜:
他の人を変えようとせずに、当事者も行動を変えてみようってことか。

しも:
ちょっぴり殻を破ってオープンにしてみるってこと。取り立てて突出する必要はないけど。

史菜:
好きな芸能人を話すようにセクシャリティをオープンに?

しも:
さらっと。特段言うことでもないですが。って。
今はそれがとても勇気がいることだけど、将来はそれを当たり前に普通に言えるようになるために今は覚悟を持って言っていく時期かな。

あ、めっちゃ喋っちゃった!2時間半も!!史菜さんと話してる間に、ツイッターのフォロワー2人増えたもん!

史菜:
着々と増やしてる!(笑)

しも:
ありがとうございました。引き出された感あります~。

史菜:
いや、2%くらいしか引き出してないと思うから、今度続編しようね。(笑)

上記は私が大学リーグで初めて得点した試合の写真。
しもと同じピッチに立っていて、ディフェンスラインから駆け寄ってきてくれたのを鮮明に覚えている。
(得点直後から号泣しているので顔がひどい)

思えば付き合いは6年にもなっていた。
頭のいいひとは話し言葉を書き起こしても文脈がしっかりしている、と聞いたことがある。文字起こしをしながら「あ、こいつ頭いいな」と思った。

次のステージに進もうとしている尊敬すべき後輩・下山田志帆を、心から応援しています。

すてっぴぃ@後輩からは基本タメ口


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中﨑史菜(すてっぴぃ)

3年勤めた出版社を辞めて、無職になり、シリコンバレーに行ってきました。 富山と東京を拠点にフリーランスとして活動中。 好きなもの:居酒屋のアジフライとレモンサワー 特技:DMの封入 twitter▶︎https://twitter.com/fuminakazaki

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コメント4件

ありがとうございました。
人は生きてこそ、尊いということを実感する文です。
人は、生きることが何よりもやりがいがあることを、これからも綴って欲しいと思います。
jsato0403さん、コメントありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです。
当事者の下山田さんに是非、一度杉山文野さんに相談してみてはどうか、とお伝えしてみてください。杉山さんはLGBTアスリートの現状をよく存じていると思うので。(有名なのですでにアポ取っているかもしれませんが…)
@名無しのスポーツ関係者 さん、コメントありがとうございます。ご助言、下山田にしっかり伝えておきました。こういった情報大変助かります🙇
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