ス…イ…タ…(極怖い系)販売50突破記念1章無料公開中

俺は建築系の仕事をしている

毎日違う現場に行くから、始めた頃から数えると数千軒は行ったんじゃないかな

働いてるその時は面倒臭かったりツラかったりなんだけど終わっちゃえば案外いい思い出なんだよね

もちろんその全てがいい思い出じゃない

すげームカついたり怖い体験も腐るほどあった

その中でも一番忘れられない現場の話をしようと思う

それが







事故物件

事故物件と言っても勿論なんてことはない普通の現場と変わらない物件だって山ほどある

でもその現場は違った







思い返せばその日は朝からなんか変なかんじがした

普段朝起きてこない嫁が起きてきて見送ってくれた

嫁『なんか見送らないとって思って…』

嫁自身もなんでだかよくわかんないかんじだった

俺『今日死ぬみたいに言うなよww』

まさかあんなことになるとは思わなかったので笑いながら出発した

普段は二人で動いてるんだが、その日は相方が体調がすぐれないらしく一人で向かうことに

現場は東京都S区

いつも朝は首都高がすごく混むのにその日は大雨なのに一度も止まることなくすんなり現場に着いた

現場は古い木造の二階建てのアパート

首都高が混まなかったので予定よりも30分ほど早い

少し車で寝てるか…

アパートの前の駐車場に車をとめ、シートを倒して寝ることにした

しばらくしてウトウトしていると窓をノックする音が聞こえた

あっ、ここ止めちゃいけなかったのか

窓を開けて

『すいません今どかします』

とエンジンをかけようとすると外には誰もいない

あれーおかしいな…

窓を開けたせいで車内が雨でびしょびしょになっちまった

まだ少し時間があるので煙草を一本吸って今日の仕事の段取りを考えていた

ん…?

おかしい

雨が車にあたる音がすごいうるさいんだよ

それほどの雨だった

聞こえるわけねーんだよノックの音なんて

強くノックする音ならまだわかるけどそーゆー音じゃなかったんだ

けど確かにノックされた

気のせいかな…

時計を見ると予定の時間になっていたのでとりあえず現場の様子を見に車を降りて現場に向かった

こーゆーアパートのリフォームなんかは窓とかにキーボックスをつけてあって、勝手に入ってやってくれってかんじなのね

俺も事前にキーボックスの番号を聞いといたから鍵を開けて部屋に入った

現場は窓のシャッターも閉められていて真っ暗だ

あと芳香剤のキツイ匂いが鼻をついた

俺の嫌いな匂いだったのでこれはすごい覚えてる

真っ暗でなにも見えないので携帯のライトを頼りにブレーカーを探した

電気をつけて必要な道具や材料を確認して車に戻ってバケツに必要な物をつっこんだ

現場に戻ると部屋は真っ暗になっていた…

なんでだ…

漏電か?

漏電だとしたらブレーカーを上げたらすぐ落ちるし…

あまり深く考えずにまた携帯をとりだし再びブレーカーを上げた

その後小一時間ばかり仕事をしていると小便をしたくなったのでトイレに入った

トイレのドアがまた汚くて木の扉に20センチ角くらいのすりガラスがついてる

扉を開けると中はそれなりに掃除してあったのでそれほど汚いかんじでもない

小便をしていると横目でドアのすりガラスが一瞬暗くなったのがわかった

誰かが横ぎったように

やっぱこのアパートなんか変だ

さすがに怖くなってきて誰かと電話をしようと携帯をイジると圏外なんだよ

あーゆーときってほんとに圏外になるもんなんだな

ドアを開けて誰かがいたらと考えると怖くて開けるのをためらっていた

ガムを食べて携帯の音楽を流し、恐る恐るドアを開けると部屋には特に変わったところもなく誰もいない

さっさと終わらせて帰ろう

けど急げば急ぐほど仕事がうまくいかない

焦って仕事をしていると

ミシ……ミシ……パチン

後ろから音がしてまた部屋が真っ暗になった

俺は半分パニックになって全て投げ出して部屋を飛びでた

なんなんだよこのアパート

絶対おかしい

仕事は終わってないがとにかく早く家に帰りたい

落ち着くために車でコンビニに向かった

どーするか…

なんか現場が変なので帰るなんて会社に連絡したって通用するわけもないし、なによりこの先の信用を失っちまう

立ち読みをしながらさっきの出来事を頭で整理しようとしたが、いくら考えても不可解としか言いようがない

車に戻って嫁に電話をした

嫁『もしもし?』

俺『あー、今日はちょっと早く帰れそうだわ』

嫁『あ、そうなんだ。じゃあ帰りに味噌だけ買ってきてくれない?』

俺『あいよー。じゃあ』

さっきの出来事を話したかったがなんか躊躇して話せなかった

でも普段通りの会話をしたら少しだけ気持ちが落ち着いたので煙草を吸いながらゆっくりと車を走らせた

現場に着くと再びさっきの出来事が頭の中でぐるぐるしてなかなか踏ん切りがつかない

でも今日は帰るにしても道具も置きっぱなしだし…

意を決して作業用のライトを取りだし玄関の前へ

一呼吸おいて玄関を開く

さっきのままだ…

外から部屋の中を照らしてよくよく見ると芳香剤の数が異様に多いことに気がついた

おかしいよな

芳香剤なんか部屋に一つでもあればだいぶ匂いがするじゃん?

まるでなにかの匂いを必死にかきけそうとしてるとしか思えない

それに床にスゴい広範囲に広がるシミ

それを隠すように引かれたベニヤ

俺には誰かがここで殺されたか自殺したかして床に血の跡が残ったとしか思えなかった

まー考えててもしょうがない

やるしかねーんだ

こんなに緊張するのはいつぶりだろうか…

玄関の扉を開けたままにして部屋に入りブレーカーを上げる

やけに静かなアパートで他の部屋の住人の生活音なんかは一切しない

静まりかえったアパートに作業の音だけが響いている

とにかく帰りたい一心でまわりを見ないようにして黙々と作業をすると30分ほどで終わった

よかった……

やっと帰れる

もーこんな現場絶対断ってやる

ブレーカーを落として部屋をでようと玄関に向かうと奥の部屋からドタドタドタドタっとなにかが走ってくるような音がしたと同時に背後で






スイ…タ…







女のか細い声だった

脳が捕まれてるような感覚がした後スゴい目眩がしてその場に倒れそうになった

でもこのまま倒れたら死ぬって思って無我夢中で部屋をでて車に飛び乗った

今の声はなんだったんだ…

車に戻ると意識がハッキリしたんだけど、不思議とその時は怖いとかは思わなくて涙がボロボロでてきた

なんて言えばわかるかなー

悲しくもなんともないのに涙が止まらないんだよね

帰ってる時もあの出来事を考えてたんだけどやっぱり怖いとかじゃないんだよな

ただポケーっと考えてるだけってかんじ

スイタってどーゆう意味だったんだろう…

首都高に乗りいつもの慣れた道を走ってるとものスゴい音と衝撃がして意識がなくなった


読んでくれてありがとうございます、2章に続きます!


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