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スタジオや機材や楽器が充実していればいい音楽ができるということではない


一流スタジオの機材や録音する環境は完璧です。
確かにいい音で録れるし、作業をしていてもとても気分がいいです。
確かにその環境は大事なんですけど、それよりも大事なのは、作品を制作する過程でどれだけ楽しめているかということだと思うんです。
それは録音する環境、使用する楽器や機材とは別のもので、あくまでも制作する側の人間の作品に対する「想い」です。

例えば一流のスタジオで、機材や楽器も素晴らしく、ミュージシャンの腕前も最高!みたいな制作環境でも、お仕事として流れ作業になってしまっている現場で出来上がった音楽は薄っぺらいものです。

1967年12月25日に発売され、シングルの売上は283万枚に達したと記録が残っている、ザ・フォーク・クルセダーズの「帰ってきたヨッパライ」は、宅録でしかもモノラル録音です。

ボイスチェンジャーなんてない時代ですから、メンバーの北山修さんの自宅で、語学学習用のオープンリールレコーダーの回転速度を落として、楽器やボーカルの録音をし、元の速度に戻してセリフやコーラスをダビングしたようです。
クリックのようにカチカチ鳴ってる音は、回転速度を落として録音するときに、リズムがズレないようにガイドで鳴らしていたメトロノームの音です。

録音する工程では相当な苦労があったと予測できますが、そんなことより何よりも、きっと楽しかったんだと思いますね。
あれやこれや試しながら、時に煮詰まり時に大笑いしながらレコーディングしている姿が目に浮かびます。

やはりね、環境や機材や楽器にこだわることも大事なことなんですけど、アイデアや熱意、作品にかける愛情が人の心を動かします。
レコーディングは音の記録をする作業ですが、同時に熱意や愛情も記録されますからね。

だから、いま自宅にある環境で、やり方次第でいい音楽を作ることはできるんです。
足りないものを嘆くより、創意工夫して楽しみながら制作することで、いい作品が生まれるんです。


50年前に録音された音源がそれをよく物語っているので、ぜひ聴いてみてください。



Mail  quont1994@gmail.com

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