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成功報酬- 資産運用サービス ラップとシステム ⑧

初めに

 成功報酬は、お客様からお預かりした資産を一任運用し、総資産評価額が増加した場合に、その増加(成功)に対する対価として徴収されるものです。総資産評価額の増加額に報酬料率を掛けて算出されます。

 成功報酬しか徴収しないラップサービスは非常にまれで、既に投稿済みの残高報酬と成功報酬の両方を徴収するか、残高報酬のみを徴収するのが一般的です。未経験の方を対象に、お試し的に少額でのみ利用可能とし、成功報酬のみ徴収するラップサービスも存在するようです。

報酬計算タイミング

 成功報酬の計算は、年に一度が一般的です。初年度は、運用開始日から、運用開始日が属す四半期から起算して4四半期が終了するタイミング、それ以降は4四半期が終了するたび、もしくは全て解約するときに報酬計算し徴収する方式が大半です。初年度が、ちょうど1年でないのは、残高報酬の報酬期間と同じ考え方ですので、そちらをご参照ください。

HWM(High Water Mark)

 HWM(High Water Mark) はあまり一般的には使わない言葉だと思います。直訳すると最高水位ですが、資産運用の世界では特別な訳は付けずにHWMという略称表記を主に使い、「ハイウォーターマーク」と発音するのが一般的です。

HWMを使わない成功報酬計算の例

 HWMの説明をする前に、HWMを利用せず、成功報酬タイミングでの総資産評価額と前回の報酬計算タイミング(最初の報酬計算の場合は運用開始時)の総資産評価額の差だけで計算した場合、どうなるかを説明したいと思います。

 上記のような総資産評価額をたどったとします。報酬計算1のタイミングでは、運用を開始した時点の総資産評価額(投資元本)から大きく増加、報酬計算2では、報酬計算1の時点よりも減少、そして報酬計算3では大きく増加した報酬計算1の時よりも総資産評価額が大きくなっている例です。

 このケースにおいて、成功報酬タイミングでの総資産評価額と前回の報酬計算タイミング(最初の報酬計算の場合は運用開始時)の総資産評価額の差だけで計算すると、下記のようになります。(報酬額は増加資産額の20%とする)ちなみに、その差が負の値の場合、つまり総資産評価額が減少した場合は、成功報酬額を0円とし徴収しません。逆に言うと、失敗分をお返しすこともしないです。

HWMを使った成功報酬計算の例

 HWMとは、運用開始時の総資産評価額(投資元本)を初期値とし、成功報酬を徴収する、つまり総資産評価額がHWMを上回った場合に、報酬計算後にその総資産評価額で更新するというものです。下記のグラフで、赤の線がHWMです。

 HWMを利用し、報酬計算時点の総資産評価額がHWMと比べて、増加してる場合に、その増加分を成功報酬の基準額とすると、下記のような計算となります。

HWMを使わない場合と使う場合の比較

 上記2例の成功報酬の合計額を比較してみます。HWMを使わない場合、1.3百万円で、使った場合は0.8百万円です。大きな違いですね。HWMを使わない場合、一度大きく資産を減らした後に増加する部分において、いわば二重取りと言ったことが発生します。2つのグラフの緑の部分(成功報酬基準額)を比較してみるとよくわかります。

 二重取りにならないように考えられたのがHWMです。日本においてラップサービスが始まったころは、HWMを使っていない成功報酬計算方式を採用しているケースがあったと記憶していますが、現在は存在しないと思います。当たり前ですね。すごく不公平感があります。

HWMの更新

 HWMの更新は、成功報酬を徴収した場合のみと記載しましたが、実際には他にも存在します。追加入金を行った場合には加算したり、一部解約した場合には減額したりします。一部解約の場合、いくつかのバリエーションがあり、複雑な計算を行うケースも存在するのですが、この場では説明は割愛します。その他、報酬徴収額をHWM更新に適応するケースもありますが、この場では説明を割愛します。

最後に

 この記事を含めて8回、ラップとそのシステムについて書いてきました。大半の事項をカバーできたと思っており、ここらで一区切りつけようかと思います。ただ、このあたりもっと書いて欲しいと言ったご要望をいただいたり、当方で何か記事化しようと思う事項が出てきたら、また投稿したいと思います。

関連ノート

資産運用サービス ラップとシステム①
残高管理 - 資産運用サービス ラップとシステム ②
ポートフォリオ管理 - 資産運用サービス ラップとシステム ③
乖離検知 - 資産運用サービス ラップとシステム ④
リバランス - 資産運用サービス ラップとシステム ⑤
報酬管理 - 資産運用サービス ラップとシステム ⑥
残高報酬- 資産運用サービス ラップとシステム ⑦
成功報酬- 資産運用サービス ラップとシステム ⑧(本記事)

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