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残高報酬- 資産運用サービス ラップとシステム ⑦

初めに

 残高報酬は、一定期間お客様の資産をお預かりし、一任運用したことに対する対価として徴収されるものです。そのため、お預りし、運用を行った資産額に応じて報酬額を決定します。報酬額は報酬対象基準額に報酬料率を掛けて算出されます。
 最も基本的な報酬であるものの、細かい点で多くのバリエーションが存在します。いかにバリエーションに対応しやすく作っておくかが、開発担当者の腕の見せ所となります。

報酬計算期間

 3か月を一つの報酬計算期間として、年に4回報酬を徴収するのが一般的です。運用を開始した日から三か月経過後に報酬徴収すると、報酬徴収を実施する日が分散してしまい業務的に煩雑になることから、報酬計算期間の最終日を暦上の四半期に固定するのが一般的です。運用を開始した日から、その日が属す暦上の四半期の最終日までを最初の報酬計算期間とすることによって、必ず暦上の四半期終了に合わせて報酬額を計算し徴収します。図式化すると下記のようになります。

 システム開発者の立場から言うと、設計と製造(プログラムの作成)は、暦上の四半期に合わせる方式と運用開始から3か月ごととする方式で労力のさはありません。一方で、テストについては、年4回だけの稼働か、365日いつでも稼働する可能性があるかの違いあるため、テストケースを少なくできる「最初の報酬計算期間を調整する方式」の方がに楽になります。

報酬の後取り or 前取り

 「後取り」は計算期間終了後にその期間分の報酬を徴収する方式で、「前取り」は計算期間の最初に計算期間分を事前に徴収する方式です。

後取りと前取りにおける基準預かり資産額

 報酬の基準となる預り資産額は、前取り、後取りにおいて、下記のような制度設計にするのが一般的です。

後取りと前取りにおける実施業務の相違

 特定の日の総資産評価額がたまたま高かったり、低かったりすることもありますので、報酬計算期間中の総資産表額の平均を用いた方が、より残高報酬の概念に合致しているように思います。下図、参照。

 下記の図は、前取り方式において、途中で一部解約を行ったケースを表しています。途中から一部解約金額分の運用は行っていませんが、前取りしている分にはそれが含まれています。後取り方式で、平均を用いる場合には、日次の総資産評価額に一部解約額が反映されるため、平均にも自動的に反映されます。前取り方式においては、一部解約を行った場合、一部解約額分の残高報酬を算出の上、日割り計算を行い返金処理を実施(次回の報酬徴収から差引等)したりします。また、その反対で、増額契約が締結され、入金が行われた場合には、日割り計算の上、徴収したりします。

 前取り方式の場合、平均を求める処理は必要ありませんが、一部解約や増額時の業務が増える分、作成するプログラムの量が増えます。そういったことから、今日では後取り方式が一般的なように思います。

逓減料率

 「大口のお客様には、割引を提供する」、ビジネスとしては基本的な考えですね。ラップサービスの残高報酬においても、この考えは多くのサービス提供者が採用しています。 

 逓減料率は、下記のグラフのように、預り資産全体に適用するのではなく、預り資産の範囲に適用していくのが一般的です。この方式を採用しないで預り資産全体に逓減料率を適用すると、逓減料率の切り替わりの部分で、預り資産が多いにもかかわらず報酬額が小さくなるという事象が発生します。これが、範囲毎に逓減料率を設定する理由です。

逓減料率の管理

 我々は、制度設計が変更になっても柔軟に対応できるように、報酬料率をプログラム内に保持するのではなく、データベースに保持することによって、プログラムの修正を行わずとも新たな報酬料率と報酬レンジを変更できるようにしています。

 また、この日からこの料率と報酬レンジを適用するといった、適用日付も持つようにしています。このあたりが、我々の長年のノウハウと言えます。

その他バリエーション

 平均残高の算出において、暦上の全日付で行うのか、営業日だけで行うのかといったバリエーションも存在します。
 日割り計算において、閏年であっても365日として年率を除算するのか、366日とするかなど、細かい違いがあったりもします。小数点以下の丸め方も様々です。
 細かいところの違いは、システム屋泣かせですが、ラップサービスのお客様に対して、よりご満足いただける制度設計としたいという、ラップサービス提供事業者の皆様のご要望にお応えできるよう努力するのが我々の務めと思って、日々精進しております。

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