ボクは普通のサラリーマン。

平日昼間はもちろん仕事に拘束されているので、自由になる時間なんてない。

そんなボクが唯一自由になれるのはいわゆるトワイライトゾーンだけ。そして撮影できる場所は通勤途中の風景だけ。

ボクの特技

だからボクが自然と身につけた能力は『日常風景の中であたらしい風景を見つける』こと。

その日はいい夕焼けだったはず

『はず』と書いたのは予定よりも仕事が終わるのがちょっと遅くなって、夕焼け空に出会えなかったから。

ボクが出会ったのはすでに夕日が落ちてしまったブルータイム。

あの日のあの風景に出会えなかった落胆しか残らない。

見つけたあたらしい風景

金沢市に住んでいる人なら知っている人も多いと思う。河北潟が日本海に流れ込んでいるところ、といえばいいのか。金沢医科大のすぐ脇の水門。

昼間は何の気なしに見ていた風景も日が暮れてLEDのダウンライトが点灯するとそれは現れる。
橋の上に等間隔で現れるあかりの輪。車が通ることをしばし待つ。

H鋼にチェッカープレートを取り付けただけのミニマルデザインの階段も、その表現を昼間と一変してボクの眼前に姿を現す。

ボクはシャッターを押すだけ。

なんてことないスキルだけど

小さなことなんだけどボクはこのスキルに小さな誇りと自信を持っている。

『地元ラブ』のもとに生きているとどうしても世界は狭くなる。

でも小さな世界の中でも、ボクがまだまだ見つけられていない風景がそこにはあるはず。

長いあいだ時間を共にしてきた彼女のかわいい面を新たに見つけるような、ささやかな楽しみをこれからも大切にして生きていきたい。