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ゴミは燃えているか? 可燃ゴミの呼び方の研究

新たなスタート!
希望いっぱい、夢いっぱい、もう精一杯、で新天地での生活を始めるとなると、色々様々多種多様なローカルルールにぶち当たる事になります。
お雑煮にモチを入れるか入れないか?とか、お雑煮にモチを入れる場合に、そのモチを焼くか焼かないか?みたいな事が代表的ですけれど、
ゴミ出しのシステム
というヤツも各自治体によって異なるため、ローカルなゴミ出しのルールをさり気なくこなせる様になったならば、もう貴方はその土地の人。
ローカルマスター。ローカルゴミマスター。

で、私も、石川県金沢市にやって来て、いち早くローカルゴミマスターにならんと精進して来たのですが、最近、気付いたのが

可燃ゴミの呼び方、問題。

です。なんとなく常識的に燃えるゴミという呼び方をしてきましたし、それは「手塚治虫は寝なかった」くらいに当たり前の事だと思って生きてきたのですが、どうやら金沢市では、

燃やすゴミ

らしいのです。

「燃える」

「燃やす」
では、ゴミに対するコミットの度合いが違って聞こえます。

「あー、ほっておけば燃えるっしょ?」

「とにかく、何としても燃えてもらうからな!」
では
ゴミの燃焼温度が倍付けされるくらい違うような気がします。

「あー、本能寺が燃えているなぁ」
「そら、本能寺を燃やしてやるわ!」
前者が森蘭丸で、後者が明智光秀です。

勝手に燃えてくれるでしょう、というニュアンスのある「燃えるゴミ」
に対して、
とにかくコレは燃やしてしまいますからね、という決意がにじむ「燃やすゴミ」

コレは単なる言葉遊びでしょうか?

金沢市はアグレッシブに燃やしていく方向性に舵を切っている訳です。
以下、金沢市の「燃やすゴミ」の説明です。

そこで、全国的に各自治体で
可燃ゴミは、なんと呼ばれているのか?
の調査に入りました。
そして、さっき終わりました。ので、発表したいと思います。

日本全国の都道府県庁所在地47各都市のHPで当該地域における、可燃ゴミの呼称を調査しました。
「もやせる」といった平仮名表記は、漢字に。「ごみ」の平仮名表記は片仮名に統一させていただきました。

仮説として、関西でこの言い方が!東北はコッチか!みたいなサスペンスフルな展開を期待していたのですが、見事にバラついています。
「燃やせるゴミ」が多いのですが、統一概念の総称である「可燃ゴミ」とうたってしまっている地区も多く、消化不良感のある調査結果となりました。

過去、
「エスカレーターの左右どっちに立つ問題」では、関西圏とその他の地域という分布。
「アホとバカの境目問題」では、『探偵!ナイトスクープ』の言語地理/民俗学的著作「全国アホ・バカ分布考」において、罵倒表現が同心円状に伝達されるという方言周圏論の検証。
が、なされた訳ですが、この「ゴミは燃えているか? 問題」に関しては、まったく統一感の無い、規則性も無い、呼称分布となってしまいました。

というのも、この
可燃ゴミの呼称に関しては、方言・土着的な要素というよりは、
自治体のゴミ処理問題への姿勢の標榜、という要素が大きいと思われるのです。

例えば、神奈川県座間市は、まさしくその呼称を
「燃える」から「燃やす」に変える事によってゴミの減量化を推進する!
としています。

「燃えるごみ」から「燃やすごみ」へと変わっても、収集日や具体的な品目が変わるわけではありません。ただ少し考えていただきたいのです。「私はこれを燃やすのか」と。
 「燃える」が物の性状を表していたのに対し、「燃やす」は人の意識や考えを主体とした行動を表します。これまでの「燃える」という表現は、「燃えるごみ」に混ぜて出される「資源物」に対し、「材質として「燃える」から少しくらい出しても平気」という意識も生み出していました。その意識から脱却するための「燃やすごみ」への変更です。

「私たちはこれを燃やすのか」
という哲学的なまでのテーゼに真っ向勝負している座間市です。
この稿の冒頭で「言葉遊び」のように扱ったこの、燃える/燃やす、の言い換えを、ゴミの資源化・減量化対策として実施しているのです。
それぞれの意識に訴えかける先祖返り的な手法に、ゴミ処理問題の深刻さを見る思いです。
この施策がどの程度の効果を産むのか ?座間市の検証を待ちたいと思います。

そして、もう一例
今回の調査にも含まれている「燃やせるゴミ」派の、福井市のHPはこんな設問に答えています。

「燃えるごみ」と「燃やせるごみ」は、どう違うのですか?

容器包装リサイクル法やダイオキシン類などの有害ガスの発生などの理由により、燃えるものであっても燃やさず分別して再資源化(リサイクル)したり、直接埋立処分しており、各々の市町で、分別方法や燃やすごみの種類に違いがあり、呼び方も異なっています。福井市においては、新聞紙や雑誌などの古紙類、ペットボトルなどは、燃やそうと思えば「燃える」ごみですが、分別して燃やさずに「資源物」として分別回収し、リサイクルしています。
そこで、「燃えるごみ」ではなく、燃やすことができるごみを「燃やせるごみ」という名称で呼び収集して、クリーンセンターで焼却処分しています。

「燃えるけれど燃やさないゴミ」を、ゴミの資源化啓蒙の一環としてアピールするために、あえて「燃える」ではなく「燃やせる」という表現を用いているようです。

こうして、気軽な気持ちでヒマにあかして、調査してみた
「ゴミは燃えているか? 問題」
いくらかスピリチュアルな、言霊的な境地に踏み込んでしまったようです。
しかし、確かに、掲げた言葉に影響されたり、キャッチーで力強い言葉が運動を加速させたりする事は少なくないはずです。
言葉によって定義されていた内容が揺らぎ、それによって人々の意識にも変化が起きるやも知れません。

ただ、このままほっておくと、
「燃やすべきゴミ」とか「燃やさざるを得ないゴミ」とか「燃やしたくないゴミ」とか「泣く泣く燃やすゴミ」とか、より豊富なバリエーションが登場しそうなので、これからも可燃ゴミの多彩な表現を注視して行きたいと思います。

最後に、全国の可燃ゴミ袋で作った日本列島を見ていただいてお別れです。

《追記》
土着的言語や方言に依存していないと思われた
「ゴミは燃えているか? 問題」
ですが、神奈川県横須賀市では可燃ゴミの事を
燃せるゴミ
と呼んでいることがわかり慄然としています。


「も・す 【燃す】燃やす。たく。」

コレは、東北および関東で使われていた方言。
この横須賀市の「燃せるゴミ」は明らかに「燃す」から来ている「方言」用法に思えます。

こなた現代人の意識啓発のために言い換えられていると思えば、かなた方言の匂いを残す呼称も発見された「ゴミは燃えているか? 問題」
コレは、もっと細かい市町村単位での調査が必要かも知れません。
ただ、、市が792で市町村数は1,741あるのか。
多分、やりません!

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