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“ヴィレッジヴァンガード”を舐めていた時代を懐かしく思った日。

ヴィレッジ・ヴァンガード (Village Vanguard)
が、出来たのは1935年。まだ軍靴の足音も聞こえて来ないNYマンハッタンで、その産声は上がった。先進的でジャンルをクロスオーバーするようなアーティストたちが集う社交場としての機能はやがて、腕っこきのミュージシャン達が、こぞってその技を競い合うジャズクラブに変貌を遂げた。

といったような場所ではなくって、ここでは、あの辺この辺あのモールそこの商業施設にブリブリに出店している『遊べる本屋』“ヴィレヴァン”の話をします。
そっちの方の、ヴィレヴァンしか知りませんし。

僕は、今、福岡にいます。
25年前も福岡にいました。学生だった僕にとってヴィレヴァンは特別な場所で、サブカルの見本市の様相を眼前にして、いつもウホウホしたものです。
とりあえずヴィレヴァンに行っとけば、ちょっぴし気の利いた雑貨が買えたし、いくらか友達を驚かせられる本も手に入りました。

それはごく簡単に見立てれば、
「センスの良い感じの、そして絶妙に貧乏くさい、雑貨のセレクトショップ」
だったんだと思います。まだ、ネットの海に深く潜ることに不慣れだった学生風情は、ヴィレヴァンの“軽〜く尖った”セレクトで、自らの所有欲と対人マウント願望を満たしていたのだと思います。

大学を卒業し、上京した当初も、僕にとってヴィレヴァンは特別なお店でした。プレゼントの類いは、みんなヴィレヴァンで揃えていたような気がします。吉祥寺や御茶ノ水、高田馬場、下北沢といった場所には、その土地柄を反映したセレクトの商品がガチャガチャと並べられ、いつ行っても一定の満足を与えてくれました。

ところがある頃から、ある商品に対して
「これ、ヴィレヴァンに置いてそうじゃね?」
という観点が自分に加わっていることに気付きだしました。この言葉に続けて発せられる二の句は、
「ダサくね?」
であり、
つまり、それ、繋げてみると
「“ヴィレヴァン”ダサくね?」
となる訳です。なんだか“ヴィレヴァン臭”のようなモノが芳しく漂ってくるようになったのです。ヴィレヴァンを求めて通っていた吉祥寺や御茶ノ水、高田馬場、下北沢を、さらに長く歩き、さらに深く潜れば、ヴィレヴァンよりも濃厚な、雑貨や書籍、服やCDを様々な店で発見することが出来たのです。

一つの道筋として。一種のイニシエーションとして、あの頃の“ヴィレヴァン通い”はあったのだと思います。ヴィレヴァンの間口の広さが、さらにもうひとつ奥の筋に入る勇気や心構えを準備してくれたのだと思います。

という感じで、ヴィレヴァンから遠ざかって15年。
この前の休日、映画をハシゴする合間の暇つぶしに、ヴィレヴァンに入ってみました。
何にも変わっていないなぁ、と思いました。「アイドル」まわりのラインナップは急増しているとは思いましたが、漫画・映画・アニメ・キャラクター・ゲーム・ジョークグッズ(この言葉まだあるのか)・駄菓子に、メインぽくはない感じの書籍。やはり確実に“ヴィレヴァン臭”はしました。
ただ、その臭いは結構「いい匂い」で。変わらないヴィレヴァンの佇まいに、何も変わっていない自分の趣味嗜好を嫌という程、再確認させられました。

そして、まんまと
藤子不二雄Aグッズ!¥2,000以上購入で『まんが道』ステッカーあげます!¥4,000以上購入なら2枚あげるよー」
というポップに魅せられて、自動的に『まんが道』Tシャツとアクリルマグネットを購入し見事¥4,000オーバーで、ステッカー2枚ゲットしたぜーー。
という顛末でした。

一応、今後10年はヴィレッジヴァンガードは行かないようにします。
もうこの文章中に“ヴィレヴァン”って19回も書いたんで、もういいと思います。
楽しかったけど、結局。
映画ハシゴするつもりが、ヴィレヴァンのハシゴしてしまったけど、結局。
なるべく、行かないです、ヴィレヴァン、多分。


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