見出し画像

「ものづくりは、物語を伝える道具」こだわりを突き詰める人、kibi-ru ACTION 武堂詠子

STORES ASSIST PROGRAMで支援が決まった5名は、それぞれにこだわりや好きを突き詰めた活動をしています。そのうちの1人、kibi-ru ACTIONの武堂詠子さんに、なぜブランドを始めたのか、なぜ福祉施設と協業を始めたのかを聞きました。

作る意欲が湧いてきた

ー武堂さんの創作の源を知りたいので、経歴を遡ってお話伺えればと思います。プロフィールに、「高校生デザインコンペ(バンタンデザイン研究所)で大賞をとった」とありますが、どんなコンペだったんでしょうか?

イラストのコンペで、テーマは「東京」でした。当時商業高校に通う3年生で、このまま事務職として就職するのは違うなぁと思っていた時に、ちょうどコンペのことを知って、描いて送ったら大賞をいただけました。

受賞したことで、「あんたはデザインの道に進まにゃいかん」と家族や親戚に後押ししてもらい、日本デザイナー学院のグラフィック科に入学しました。

ー日本デザイナー学院では、何を学ばれたんですか?

ファッション、インテリア、グラフィックの3コースがあったのですが、印刷物に携わりたいという気持ちがあったのでグラフィックを勉強していました。

ー好きな授業は何でしたか?

商業デザインが好きでした。例えば、広告ですね。メッセージを伝えて、それを相手が受け取って、どう感じるのかという部分に興味がありました。メッセージを伝えるための作業はすべて好きでしたね、コピーでも写真でも何でも。

ー卒業後は編集プロダクションに入社されたんですか?

日本デザイナー学院の講師は全員デザイナーで、エディトリアルの先生に引き抜かれて、編集プロダクションに就職しました。福岡では初めての女性ばかりの編集事務所でした。

はじめは紙面のデザイン、その後ライターの仕事をするようになり、最終的には編集者になりました。制作していたのは、旅行ガイドが多かったです。

ー結婚を機に上京されたんですよね。バッグを作るきっかけになったのは、子どもの通園バッグ作りとありますが…

しばらくフリーで編集の仕事をやっていたんですが、出産して10年くらい子育てに専念していました。

子どもが幼稚園に通うようになり、通園バッグを作らないといけなくなって。久しぶりにミシンを触ったら面白かったんです。作り始めるとどんどんオリジナリティを出したくなって、みんなと違うものを作りたいと、作る意欲が湧いてきました。

ーそこからどのようにkibi-ru ACTIONが始まったのでしょうか?

人が持っていないもの、オリジナルの布小物を作りたいと思っていた時に、ちょうどハンドメイドブームが起きました。ガレージセールやハンドメイドマーケットで、個人が自分で作ったものを売り始めるようになったんです。

私も、近所のママたちと数人で店の軒先を借りて、自分たちが作ったものを販売したんです。それが、好評で。主婦向け雑誌に「ハンドメイドでこれくらい稼げました」と金額が載っていたんですけど、その3倍くらい稼いでたんですよね。

もっと広げていきたいと思って、他のママたちにも「集客どうする?」など相談したのですが、他のママたちは無理のない範囲で続けていけたらという気持ちで、溝ができ始めました。このままではもったいない、1人でがんばってみようと始めたのがkibi-ru ACTIONです。

ものづくりは伝える道具になる

ーはじめから少数民族の布を使ったバッグを制作していたんですか?

はじめはよくあるナチュラル系のかわいいバッグを作っていました。

あるイベントに出た時に、フィリピンのビンテージの布でできたバッグを持っている男性に出会いました。あまりにもきれいで、どうやったらその布が手に入るのかをしつこく聞きました(笑)。その布にすごく惹かれたんですよね。しぶしぶ教えてくれたのが、ナヨンという事務所でした。

ナヨンには、山本まつよさん(元新聞記者、翻訳家)がアジア財団でお仕事をされている時に、フィリピンで見つけた布がたくさんあって。博物館に寄贈できるくらい貴重な生地や、1970年代の生地が手つかずで残っていました。

山本さんが生地にまつわるエピソードを書かれていたんですが、それを読むと色んな人の思いが織られているのを感じました。これが生地の持つ力強さだなと。このエピソードをバッグにして伝えますとお話して、取引を始めました。

ナヨンから仕入れた生地を使った作品の展示会をしたんですが、たくさんの方が来てくれました。

ーどんな展示会だったんでしょうか?

2016年6月にhalo-halo CARAFT展という展示会を阿佐ヶ谷で開催しました。

山本さんは「子ども文庫の会」という家庭文庫振興の活動をされていて、当時読み聞かせをされていたようです。その読み聞かせに通っていた親子がたくさん来てくれて、山本さんを慕う会みたいになっていましたね(笑)。

「私、小さい時にこの布を丸めて遊んでいたんです」とバッグに使われている生地を見て、懐かしがってくれて。「あの時の生地が蘇って、みなさんに使っていただけるのが嬉しい」と言っていただけて。

ものづくりってそういうことなのか、て思いました。自分の表現、趣味でやるのもひとつだけど、伝える道具になるとその展示会で感じました。生地のストーリーを聞いて、バッグにして、バッグを販売しながらそのストーリーをまた伝えて、を繰り返しています。

編集作業と一緒なんですよね。企画して、物語を作って、本にして、本を売るときにまたその物語を伝えて。展示会は本の出版に似ています。テーマがあって、バッグを作って、プロモーションをして、最後お披露目できる場が展示会。

無駄なことばっかりやっていた気がしたんですけど、全部編集でしたね。

ーテーマを先に決めてから、展示会に向けて布を集めるんでしょうか?

布が勝手に集まってくるんですよ。南米の布が集まったら南米をテーマに、アフリカの布があればアフリカをテーマにしています。

不思議なんですが、「ここに布があるんですけど、どうにかできませんか」と連絡がくるんです。リユースも以前からやっているので、武堂に言えばなんとかしてくれるんじゃないかと思っていただいてるみたいです。

ー布が集まってくるんですね。

一生懸命探してもなかなか見つからないですね。少数民族の布を使ってバッグを作っているというと、よく海外に行ってるんですかと聞かれるんですけど、現地と繋がりを持っている人が届けてくれるんです。
kibi-ru ACTIONの「きびる」は博多の方言で「結ぶ」という意味なんですが、結んで動く、まさにそれで。すべて繋がりの中で、さまざまな人や街や国を結びながら、ものづくりをしています。

ボーダーレスに、美しい部分だけが混ざりあったものを作りたい

ー福祉施設との協業はどのようなきっかけで始まったのでしょうか?

障害を持った方と一緒にやりたいという思いがずっとありました。その思いを話したら、知り合いに仕事を探している福祉施設があると紹介していただきました。

今は2つの福祉施設にお願いしています。1つは紹介ですが、1つは飛び込みですね。家の近所にあると聞いて、お話をしにいきました。お返事をいただいたのが2ヶ月後で、諦めていた時に連絡がきました。

ー福祉施設にはどのような仕事をお願いしているのでしょうか?

少数民族の布は貴重なので、ハギレをずっととっておいてたんです。それを生地に戻すために、ハギレを一定規則で貼り合わせてもらって、生地として使えるようにしています。

ーバッグにする工程はどのように進めているんでしょうか?

ミシンでの制作部分を6人の縫い子さんにお願いしています。手間をかけて作ってくれているので、縫製が丁寧だと褒めていただけることが多いです。デザインはすべて自分でやっています。

ーひとつのバッグに携わるのは10人以上とありますが、本当に10人以上の方が関わってバッグができるんですね。

生地を仕入れるところから始まり、ハギレを処理したり、バッグを縫うのにと10人以上の方に関わっていただいてます。そこもきびるアクションです。

ー販売は展示会がメインなのでしょうか?

そうですね、展示会やイベントが決まって、それに向けて制作を進めています。イベントには遠方からも来ていただけるのでまずは対面で販売、残ったものをネットショップで販売しています。今の生産体制だと、半年に1回イベントをやるのが精一杯なので、縫子さんを増やそうとしている最中です。

また、今回のSTORES ASSIST PROGRAMを機に縫製会社を探しています。でも、1点1点違うので、生産料金がネックになっていて、折り合いがつく工場を探しているところです。

ー次のイベントが9月にありますよね。

はい、今回はエスニックではなく昭和のバッグ展です。所沢の「旧町」の写真と、その写真に出てくる布を使ったコラボ展を野老澤町造商店という所沢市の地域活性化拠点施設で開催します。

所沢は古い町なので、蔵があるお家も多いのですが、このご時世、みなさん蔵を潰されるんですね。その蔵から出てきたものを使っています。所沢にゆかりのある生地を使ったバッグが並びますよ。

旧町写真と昭和バッグ展
日程:9月6日(金)〜9月18日(水) ※木曜休
時間:10:00〜18:00
場所:野老澤町造商店
   埼玉県所沢市元町21-18 所沢駅から徒歩13分

ーぜひ伺わせてください!
最後に…この先、kibi-ru ACTIONが目指すことは何でしょうか?

今やっている福祉施設との協業をなるべく長く続けたいと思っています。これは簡単にやめられることではないし、積み重ねて結果がでるものだと思っています。

色んな人と「きびるアクション」をしていきたいですね。なるべくボーダーレスで、フラットな関係性を築けていければいいなと思っています。

日本・海外、新しい・古い、健常者や障害者関係なく、色んなものの美しい部分だけ混じり合ったものを作りたい。それをどれだけできるかが、表現したい最大のテーマです。

武堂詠子プロフィール

高校生デザインコンペ(バンタンデザイン研究所)で大賞をとったことをきっかけに、日本デザイナー学院グラフィックデザイン科でグラフィックデザインを学ぶ。卒業後、編集プロダクションに勤務。8年以上、企画・取材・撮影で多忙な日々を過ごし、結婚を機に上京。出産により、一旦仕事は休止するものの、子供の通園バッグづくりがクリエイティブ魂にふたたび火をつける。2013年「きびるアクション」を開業。世界各地の少数民族の布や、国内の古布・リユース素材を直感で組み合わせながらオンリーワンバッグを制作。テーマ性の高いグループ展や、地域色を出したイベントの企画・コーディネートにも取り組んでいる。2019年から福祉施設との協業をスタート。ものづくりの世界でできる社会貢献を模索中。

文:ストアーズ・ドット・ジェーピー広報 加藤千穂
写真:てんび〜


ライジングセラー!
9

STORES.jp

本格的なネットショップが、誰でも簡単に作成できる『STORES.jp (ストアーズ・ドット・ジェーピー)』です。 STORES.jpはこちら▶https://stores.jp/

STORES ASSIST PROGRAM

STORES.jpが才能ある個人やスモールチームを応援するのプログラム「STORES ASSIST PROGRAM」
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。