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「声」がひらくコミュニケーション Voicyと考える新しいPRのかたち(Voicy・浅井淳さん)【前編】

人と社会のコミュニケーションのありかたを探り、さまざまなPRパーソンの道しるべとなる記事を届ける「PR Compass」。今回は音声メディアが企業のPRに果たす役割について、株式会社Voicy・浅井淳さんにインタビューしました。

Voicyは10月に法人向けのサービスとして「Voicy Biz」をローンチしました。

各業界を代表する専門家やミュージシャン、インフルエンサーなどが良質なコンテンツを発信する音声メディアとして、ビジネスパーソンを中心に根強い人気を得てきたVoicy。なぜいま、法人向けサービスをリリースしたのでしょうか。前編では「Voicy Biz」の概要と企業の広報活動における「音声メディア」の特性についてお話を伺いました。

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浅井淳さん

企業が”声”を活用する「Voicy Biz」

——先月20日にリリースされた「Voicy Biz」のサービス概要をおしえてください。

音声メディア「Voicy」を、企業様に活用していただくためのサービス群を総称して「Voicy Biz」としています。これまでは個別に要望があった際に企業様にもお使いいただいていましたが、今回、公式にパッケージ化しました。

サービスは「オープン型」と「クローズド型」の2種類に大別されます。Voicy上に開設するチャンネルの公開範囲の違いです。「オープン型」はVoicy上に企業アカウントを開設して、社外へのPRツールとして活用していただくもの。「クローズド型」は限られたコミュニティ、主に社員を対象に情報を発信するチャンネルです。「声の社内報」として、インナーブランディングに利用いただけます。

現在、オープン型で約20社、クローズド型では約10社の企業様に開設していただいています。先月ローンチしたばかりですが、多くの問い合わせをいただけていますね。

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Voicyトップページ

——クローズド型のような社内コミュニケーションもPRにおける大切な領域ですね。個別企業へのコンサルティングも行っているのでしょうか? 

はい。個別の要望に応じ、運用についてワンストップでサポートさせていただいています。たとえば、放送コンテンツの改善案やリスナー増加のためのアドバイスなどですね。クローズド型でいえば、社長が出演してビジョン・ミッションの浸透を図る放送や、社員インタビューや雑談形式の放送など、コンテンツの種類を幾つか提示しながら番組表づくりのお手伝いも行っています。

また、私たちはひとつひとつの放送について、逐一データで検証しています。どの曜日のどんな時間帯にどれくらい聴取されているか、どのタイミングで離脱されたか、最後まで聴かれた放送はどんなコンテンツか。聴取レポートやデータの提供も含めて、サポートさせていただいています。

——施策に対する成果を数字として正しく把握でき、その次にも活かせるという点は、企業にとって重要ですね。

エンゲージメントを高める「声」の親密性

——音声メディアによるPRの魅力はなんでしょうか。

一番の魅力は、情報発信しているひとのキャラクターが伝わりやすく、情緒的価値に訴えかけるツールであることです。

クローズド型をご利用いただいている企業様には、人材サービスを提供されているエン・ジャパン様や、モビリティプラットフォーム「CREW」を提供するAzit様があります。両社とも、組織改編が頻発する環境のなかで、チーム全体でミッションの共有をどう行えば良いかという課題を抱えていました。紙面で伝えたり、月次定例会議で社長が喋ったりするだけでは、社員が受け身になってしまいがちです。それを音声で発信することで、親近感をもってメッセージを受け取り「自分ゴト」として捉えることができる。

企業のTwitterを運営されている方を「中の人」と呼んだりしますが、テキストメディアでは、会社の看板を背負って演じてしまう部分があると思うんです。一方で、音声メディアはその人の「個性」でしか話すことのできないツールであり、より人間性が表に出ます。

オープン型の場合は、パーソナリティの方が、実際の商談の場でお客さんから「Voicyを聴いています」と言われたという話もお聞きします。

——たしかに芸能人の方に「ラジオ聴いています」と伝えると、すこし距離が縮まった感じがします。

それと同じですね! オープン型チャンネルで言えば社外のリスナー、クローズド型チャンネルでは社員との距離が近くなる。親密性を高めるエンゲージメントパワーが強いPRツールとして、音声メディアが存在すると思っています。
 
関係性の深化は、データでも実証されています。先ほどお話したAzit様は、Voicy導入後にモチベーションクラウドで社内のエンゲージメントを測定した結果、「歴史の共有」「情報伝達」等の項目が改善したそうです。

人員拡充が活発な組織は、現場と経営陣の間に「壁」が生まれてしまいます。さまざまなバックグランドを持つ社員に、どう経営陣の考えを届けるか、カルチャーを浸透させるかが課題となりがちです。

——ベンチャー企業で長く働かれている方であれば、誰しも頭を悩ませるポイントだと思います。

Voicyを通して社長自身が会社の歴史を伝え、意思決定の背後にあるフィロソフィーを共有することで、テキストや対面のようなコストをかけずに縦横のコミュニケーションを円滑にすることに成功されていました。こうしたAzit様の事例は、ダイヤモンド・オンラインさんにも取り上げられました

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音声と動画の違いとは? キーワードは「能動性」 

——テキストよりも音声の方が親近感が湧くというのは理解しやすいと思います。しかし、動画との違いはどこにあるのでしょうか? 動画にも音声はありますし、さらに顔や身振りも見えるため情報量は多いですよね。

テキストの場合は、読むときに学習だと思ってしまいます。一方動画では、映っている人からプレゼンされているような気分になる。共通しているのは、視覚情報として「提示」されて、受け身になってしまうことです。

音声に耳を傾ける場合は、なんとなく自分の心の中で相槌を打ったり、ときにはツッコミを入れてみたりと、語り手に対して能動的に反応するような体験になります。音声は流し聞きもできますが、内容をしっかり理解しようと思ったら、意識を向けて傾聴する必要があります。

また、心理学の分野でも「動画と音」よりも、音声のみで聴いた方が情報に対する信頼や理解度が上がるという研究結果があるようです。人間のインプットの大半は視覚情報です。逆説的ですが、音声の方が見かけに惑わされず話の本質を理解できるのかもしれません。

さらに、テキストや動画と違って声にはネガティブな感情が残りにくいです。能動性と親密さは「炎上」の少なさに繋がっています。たとえば、有名な芸能人がラジオのパーソナリティを務めたとき、Webの記事や動画では見られない赤裸々な私生活を語って、好印象を残すことができたという話があります。企業の広報活動の場合も同じです。

——企業アカウントのパーソナリティのファンになる、ということもありえそうですね。
 
最近では、所属企業の枠を超えて活躍する会社員の方も目立ってきています。そういう文脈でも音声メディアを活用していただくと、企業の広報活動に活路を見いだせるのでは、と思っています。
実際に、オープン型を利用していただいているマネックス証券様やグロービス経営大学院様は、自社の認知向上や長期的な視点での潜在顧客の育成という目的で利用していただいています。ファンを作ることに成功されていますね。

=後編に続く=

後編では、IoT時代に「音声がインフラとなる」未来で、PRがどう変化していくのかについて伺います。

浅井淳さん
マーケティングリサーチ会社のプレイングマネージャーを経て、2019年6月Voicyに入社。ビジネスディべロップメントとして、営業の最前線で「声のインフラ」の実現を目指して日々奮闘中。

(聞き手、編集:原光樹 構成:原子耕)

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