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「Music Lane Open Lecture」の、その先を考えてみる。

コロナ禍真っ只中の2020年12月にスタートした「Music Lane Open Lecture」はこれまでに14回開催した。始めたきっかけは、表向きには以下のような理由だった。
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沖縄の音楽関係者の海外マーケットへのアプローチを容易にするための、沖縄発のウェブ・プラットフォームを構築する。沖縄音楽を中心に、主にアジア圏内の音楽情報を集積し、アジア各国の同様の音楽情報サイトと連携を行い情報や記事を交換し、情報の「ハブ」として、多言語で発信する。ウェブ上のバーチャル空間だけでなく、リアルの現場でも、情報、音楽、人の交流をより活発なものにできるようなアプローチを行う。ウェブ・プラットフォーム開設に向けて現状の音楽シーンの状況に詳しい専門家を招いてのワークショップを実施し、参加につなげる。
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これは、沖縄県の助成金応募の際に書いたもの。
コロナ禍の中、ウェブプラットフォームを構築しつつ、オフラインでウェブマーケティング界隈に詳しい専門家を招いたレクチャーを行おうと考えたのだ。

表向きではない本当のきっかけは、以下のようなことにあった。
その時期、世界はコロナで半年どころか1ヶ月、2ヶ月先のこともわからない状況だった。そんな折り、よほど暇だったのか、”Living with Music / 音楽とともに明日を生きるために”という記事の連載を始めた。

国内外の音楽を通して知り合った友人たちに、音楽を通してコロナ禍をどう生き抜くか、そしてその先のビジョンをどう考えているのかという話を聞いて、英語と日本語の記事にしたのだ。その数16人。本当に暇だったのだと思う。

しかし、この連載を通して聞いた多くの話が、改めて最新の音楽業界のことを考えてみるということに目を向けさせてくれた。誰も悲観的ではなかったし、何も諦めてはいなかった。常に次に向けた準備を整えていたのだ。そうした前向きなエネルギーは、新しいことを始める原動力になった。

「Music Lane Open Lecture」は、素晴らしい講師の方の協力を得て、これまで14回行った。割と行き当たりばったりな部分もあったのだが、これをもっとうまく体系的にまとめられたら、ラフなカリキュラムのようなものも作れるのではないかと考えたりもする。「Music Lane Festival」と連動するやり方もあるだろう。講師を海外から招くこともお金のことを除けばさほど難しくはない。
そもそも沖縄でニーズがあるのかということだけが不透明だが、これまで14回のレクチャーを聞いていて、音楽に興味のある人であれば、誰もが何かしら得ることのできる内容であるということに間違いはない。生涯学習の一つとしても悪くない、かもしれない。
いずれにしても、なんとかもう一段上の形にすることを考える時期なのだと思う。

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これまでに行った14回の講座は以下の通り。

Vol.1 「ストリーミング概観」
講師:松島功氏(株式会社arne 代表取締役)
2020年12月10日(木)ミュージックタウン音市場・3Fホワイエ
2020年12月11日(金)てんぶす那覇3F会議室
◎講座内容
ストーミングの現状 / ストリーミング強者の特徴 / ストリーム回数とリスナーの関係性 / SNSの大切さ / 音源の納品後すべきこと(各SNSの最適化、公式へのSbumit、非公式へのsubmit)/ 進むパーソナライズド化への準備

松島功さん@てんぶす那覇。コロナ禍でのスタート。マスクはマストだった。

Vol.2「TuneCoreができること」
講師:野田威一郎(
チューンコアジャパン株式会社 代表取締役社長)
2021年2月9日(火)てんぶす那覇3F会議室
2021年2月10日(水)ミュージックタウン音市場・3Fホール
(沖縄県の緊急事態宣言発出のため、20時終了のスケジュールに時間変更)
◎講座内容
音楽シーン(海外・国内)の概観 / TuneCoreができること / 自力でやるべきプロモーションなど

2021年2月10日@ミュージックタウン音市場

Vol.3「2021年版 音楽出版の最新事情〜インディーズ・アーティストはどう付き合うべきか」
講師:齋藤妙子 氏(
Downtown Music Japan 代表取締役)
2021年10月19日(月)那覇・てんぶす那覇会議室
2021年10月20日(火)コザ・ミュージックタウン音市場
◎講座内容
出版権とは何か、原盤権との違い / 世界で出版権はどう徴収されているのか / 海外の出版vs日本の出版 / JASRACは必要なのか・アーティストの選択肢

Vol.4「海外のファンベースを獲得するインターネット広告基礎講座」
講師:金野和磨 氏(Gerbera Music Agency合同会社代表・プレイリストメディア「Pluto」代表)

2021年11月16日(火)コザ・ミュージックタウン音市場
2021年11月17日(水)那覇・てんぶす那覇 会議室
◎講座内容
GMAが行うプロモーションのアウトライン / Instagram広告、YouTube広告の概要・特徴 / 具体的な事例 / インターネット広告で成果を挙げるために知っておくべき考え方 / 広告で成果を挙げた後に実施すべきこと

Vol.5「アーティストが、国境を越えるべき理由」
講師:秋山信樹 氏(アーティスト / DYGLヴォーカル・ギター)

2021年12月22日(水)那覇・Live House Output
◎講座内容
DYGLの活動のビジョン / 海外を拠点に選ぶ理由 / ロンドンでの生活と活動の実際 / 海外発信のメリットとデメリット / 制作やツアーブッキングについて / 沖縄のバンドへの海外活動のススメ

ギターロックバンド”DYGL(デイグロウ)”は、日本のバンドでありながら、アメリカやイギリスに長期滞在して制作を行い、ライブ活動も行ってきた。1stアルバム「Say Goodbye to Memory Den」(2017)は、Albert Hammond Jr.(The Strokes)とGus Obergのプロデュースで制作され、海外でも注目を集めた。2ndアルバム「Songs of Innocence & Experience」(2019)発表後は、約6ヶ月間52都市に及ぶワールドツアーを敢行。ヨーロッパ、アメリカ、アジア、日本をまわったツアーでは、東京だけでなく、北京、上海、ニューヨークでの公演が売り切れるなど、ポテンシャルの高さを見せつけた。DYGLのボーカル・ギターの秋山信樹氏(沖縄出身)を講師に、DYGLのバンド活動の背景や経験について聞きながら、日本のバンドが海外で活動を行うことのノウハウを紹介してもらった。

Vol.6「デジタル配信の時代、日本で最も可能性のある沖縄から発信する意義」
講師:山口哲一 氏(
StudioENTRE代表取締役 / 株式会社バグコーポレーション代表取締役 / iU超客員教授)
2022年1月18日(火)那覇・てんぶす那覇 会議室
2022年1月19日(水)コザ・ミュージックタウン音市場
◎講座内容
「東京中心/日本市場完結」の音楽ビジネスから「デジタルとグローバルの時代」という環境変化・デジタルとインディーズ音楽の親和性・沖縄から発信する優位性とは何か? 沖縄音楽をどうブランディングするか〜韓国の方法論も参考に。

Vol.7「SNS全盛の今、必要不可欠なPRマインドについて考える」
講師:田中 デイビーズ 智子 氏(フリーランスPRエージェント / エンタメサイト
Onigiri Media運営)
2022年2月21日(月)コザ・ミュージックタウン音市場
2022年2月22日(火)那覇・てんぶす那覇 3 F会議室
◎講座内容
PRとは? パブリックリレーションズとは何か? / 時代は、広く報じる時代(広報)からパブリックリレーションズ(PR)へ / メディアに取り上げてもらうことの意味 / 1on1ショート・コンサルティング

Vol.8「世界が注目するSXSWって何? その最新動向とアプローチ法を知る」
講師:オードリー木村 氏(Tom's Cabin Tokyo JP Assistant Producer / BENTEN Label Founder/Owner / SXSW Japan Nite Event Organizer, producer)

2022年10月31日(月)ミュージックタウン音市場ホワイエ
◎講座内容
世界最大の音楽ショーケースフェスとしてスタートしたSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)は、毎年3月にアメリカ・オースチンで開催される。オードリー木村氏は、長年その日本の窓口として、SXSWの名物企画「Japan Nite」をプロデュースして、数多くの日本のバンドを海外に紹介してきた。今回は、音楽の視点から、SXSWのアウトラインや過去に紹介した日本のアーティストの事例、具体的なアプローチの仕方などを紹介してもらう。

Vol.9「2023年版 避けて通れないサブスクをいかに攻略するのか」
講師:松島功氏(株式会社arne 代表取締役)

2022年12月20日(火)ミュージックタウン音市場ホワイエ
◎講座内容
サブスクリプションの現状 / サブスク強者の特徴 / 再生回数とリスナーの関係性 / SNSの重要性 / 音源の納品後にやるべきこと(各SNSの最適化、公式へのサブミット、など)

Vol.10「インディペンデントアーティストの活動サポート最前線。〜お金をかけずに出来る事〜」
講師:佐藤浩一 氏(株式会社スティールストリート取締役)

2023年1月18日(水)ミュージックタウン音市場 3Fホワイエ
◎講座内容
音楽レーベルTrigger Recordsの運営、著作権管理、デジタル・ディストリビューション、イベント制作・SUSHIBOYSのエージェント業務(LIVE制作、PR、出版)、etc。さまざまな業務を通して、独自に行ってきたインディペンデント・アーティストのサポートの方法について具体的な例を通して紹介する。

Vol.11「音楽フェスもアジアの時代に!」
講師:津田昌太朗 氏(CHARLOTTE INC. 代表取締役 /
Festival Life 編集長)
2023年2月
◎講座内容
世界の音楽フェス・日本の音楽フェスの今 / コロナ禍の影響 / アジアの音楽シーン / レポート:Heads In The Clouds(22年12月) / レポート:Lollapalooza India(23年1月)/ これからのアジアの音楽フェス

Vol.12「マーケティングを超えて創造する音楽〜2020年代におけるインディペンデントレーベルのあり方を考える」
講師:対馬芳昭 氏(origami PRODUCTIONS CEO)

2023年5月19日(金)ミュージックタウン音市場ホワイエ
講座内容
origami PRODUCTIONSの業務について / 仕事への意識 / アーティストとの関わり方 / レーベル・プロダクションとしての展開について

Vol.13「ワールドミュージックの現在 そこから読み解く沖縄音楽の可能性」
講師:
サラーム海上 氏(DJ/中東料理研究家)
2023年8月7日(月)→ 台風接近のため、9月21日に延期
(金)ミュージックタウン音市場ホワイエ
講座内容
2023年のワールドミュージックシーン / WOMEXとは何か? / WOMEXほか、国際的な音楽ショーケースの審査を通るためにできること / 沖縄音楽のワールドミュージック市場での可能性

Vol.14「コライトの現在地」
講師:高波 由多加 氏(
Namy& Inc. CEO & Founder)
2023年11月15日(水)ミュージックタウン音市場ホワイエ
◎講座内容
コライトって何? / コライトに辿り着いた経緯 / 成功例と失敗例 / 福岡で実践してきたこと / コライトをどのように実現させるか / コライトの意義とは

<リポート記事は近日公開>

Vo.15は、林 潤 氏(株式会社Spincoaster代表取締役)をお迎えして、2023年12月21日(木)にミュージックタウン音市場で開催。
音楽情報メディア「Spincoaster」をはじめとした、さまざまな取り組みについて話をしていただく予定です。


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