見出し画像

Manila revisited~Wanderland Music Festival②  David Lindleyの訃報、そして、失いかけていたあの熱狂を、それぞれの手に手繰り寄せるために。

ホテルの部屋からの眺め。集落の先に海が見えると思っていたら、バイ湖という湖だった。

マニラ2日目。フェス日和、よく晴れるが、暑さが心配になる。
程なく、SNSのタイムラインで、David Lindleyの訃報を知る。
デビッド・リンドレー、麻田浩さんを通して、沖縄では2回ライブをやらせてもらった。会場は那覇市久茂地にあったCLUB D-set。そのうち一回は、THE WALTZのローリーがゲストで出演してくれた。
最初に来た時は、前乗りで松山の「海遊亭」という居酒屋に連れて行った。ほかにもいろいろ行った気もするが、まるで記憶がない。兎にも角にも残念でならない。心より哀悼の意を表します。

David Lindleyとローリー。写真はその時のもの。ファイルのデータによると2005年11月13日だったらしい。18年前ということはDavid、60歳くらいか。
フェス会場のゲート近くには、3/6のArctic Monkeysの公演のビルボードが。

13:00開場ということで、13:00過ぎにホテルを出るがまだゲートはクローズしたまま。それにしても暑い。体感33度。会場内に入って、真っ先に水を手に入れる。会場は2つのステージがほぼ横並びで建っている。後方にはスポンサーブースと、飲食エリア、アートのエリアもある。

ライブの感想をいくつか。

Leo Wang(台湾)。
寺尾ブッダさんのBig Romantic Recordsから日本盤のアナログも出ているので、名前は知っていたがライブは初見。音源を聴いて勝手に思っていた印象とはまるで違って、とにかくアクティブなパフォーマンスで目が離せなかった。ヒップホップベースでレゲエを交えて披露された楽曲は言葉の壁もなく、会場でも大ウケだった。

Leo Wang(台湾)日本でも人気出そう。

YLONA GARCIAは、フィリピンのR&Bシンガー。現在は、アメリカがベースでまさに飛ぶ鳥を落とす勢いの"88rising"から音源をリリースしている。DJと2人だけの編成で、自由過ぎるステージを見せてくれた。彼女を追うカメラマンの多さが、その人気ぶりを示しているようだ。

ステージ上にカメラマン多すぎ。
"MEN I TRUST"(カナダ)ずっと緩やかに揺れてる感じです。

"MEN I TRUST"は、カナダ・モントリオールのインディー・ポップバンド。聴いていてとても心地よい音が実に印象的だった。個人的には大貫妙子さんの曲が透けてみえるように感じられた。4月には東京と大阪で日本ツアーもあるそう。改めてちょっと気になる。(大阪は売り切れとのこと)

BLAMING TIGER。次から次へと、さまざまな"技"が繰り出されて観客はステージに釘付けに。

BLAMING TIGER(韓国)。
ヒップ・ホップをベースに、K-POPを含むあらゆる要素が盛り沢山で、とにかくエネルギッシュなパフォーマンス。これはウケないわけがないという感じ。強烈なエナジーをストレートに放出するというのは、今や韓国のアーティストのお家芸的な感じになりつつある気がする。芸風とも言えるのかもしれない。

陽が落ちる頃、トイレから出てきた時に、1月に会った地元のヒップホップ・ミュージシャンWaiianとそのパートナーとバッタリ会う。Rude-α、¥uk-Bとのコラボの話もしたかったのだが、写真を一枚撮って人混みに紛れてしまった。それにしても1万5,000人と言われる観客の中で会えるなんて驚きだ。このプロジェクト自体の吉兆に違いない。

Sunset Rollercoaster(台湾)「Burgundy Red」や「My Jinji」といった代表曲への反応が凄い。もはやアジアン・インディーのスタンダードナンバー。

Sunset Rollercoaster(台湾)。
コロナ前にモンゴル・ウランバートルのPLAYTIME FESTIVAL、台湾・台南のLUCfestで聴いて以来、三度目のライブ。余裕と凄味が増して、安定感も抜群に。演奏もパフォーマンスも一段も二段も上がったように感じる。今やアジアを代表するインターナショナル・バンドの一つであることに疑いの余地はない。余裕が生まれて様々な意味で自由になった気もする。

Sunset Rollercoaster(台湾)。客席は台湾や中国系の方も多かったのかも。

お腹も空いたので、終演を待たずに会場を出る。昨夜行ったストリートフードの店で、Tapsilogを注文する。牛肉を甘辛いタレに漬けて焼いた料理。昨夜食べた豚肉料理、Tocilogの牛肉版といったところか。週末のためか高校生でいっぱいになったテーブルの隅でいただく。

Tapsilog、80ペソ、200円弱。
Tapsilogの屋台のそばにある串焼の屋台で豚の串焼(25ペソ・約60円)を1本いただく。焼いてもらっている時に、近くで遊んでいた女の子がやってきて「パ〜パ」と大声で連呼する。カワイイ。

"Wanderland Music Festival"、ブッキングのバランスの良さは、Johnのセンスだろうか。どのアーティストも素晴らしく、しっかりとキュレーションがなされた印象を受ける。欧米のアーティストもいるが、ブッキングの軸になるのはあくまで、地元フィリピンとアジアのアーティストだ。昨今のアジアのアーティストの勢いを考えると、当然のことと言える。そこに日本のアーティストは一組もいないことはちょっと残念だが、見方を変えると、日本、あるいは沖縄のアーティストの席はまだそこにあるということなのだと思う。
それぞれのアーティストに対しての、フィリピンのオーディエンスの反応の良さは非常にビビッドだ。中にはあまり知られていないアーティストもいるはずなのだが、どの出演者に対しても等しく熱い拍手と声援が贈られる。
今回のフェスの正式タイトルは、"Wanderland Music Festival / The Comeback"。そこには主催者、アーティスト、スタッフ、観客。それぞれがコロナ禍で失われたフェスの帰還を一緒に祝福し、作り上げようという強い意志がある。失いかけていたあの熱狂を、それぞれの手に手繰り寄せるために。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?