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ストレートエッジコラム第十五回『編集者がクリエイターと「良い打ち合わせ」をするコツ5つ』

 先月(株)KADOKAWAを退社、作家のエージェント会社『ストレートエッジ』を立ち上げた三木一馬と申します。最終職歴は電撃文庫編集部編集長です。主な担当作は、『とある魔術の禁書目録』、『ソードアート・オンライン』、『灼眼のシャナ』、『魔法科高校の劣等生』、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』などなどです。


■今回のストレート反省

 更新をサボってしまい申し訳ありません。でもそのおかげでいろんな電撃文庫が校了できました!! 


■公式サイト更新のお知らせ

 『ストレートエッジ』公式サイトの『お知らせ』と『契約作家』を更新しました。新しい契約作家の仲間として『灼眼のシャナ』の高橋弥七郎さんが加わりました。これからも良いコンテンツをつくるために頑張ります。

 つづいて本題です。

■編集者がクリエイターと「良い打ち合わせ」をするコツ5つ

 作家やマンガ家、イラストレーターなどのクリエイターの皆様方、そんな彼らに仕事を依頼した編集者やプロデューサーの皆様方が、切っても切れないことが「打ち合わせ」です。ここでコンテンツの半分……いや7割が決まる、といっても過言ではありません。僕が勝手ながら感じた、双方が気をつけるべきポイントをご紹介します。

 

①打ち合わせはとにかく楽しく明るく!

 僕の記事をご覧いただいている方は、「またか!」と思われるかもしれませんが、とにかくそれくらい大事なんです、この心得! この「必ず『対案』を出せ」という記事でも言及しているのですが、打ち合わせという席は、新たなエクストラが生まれる楽しい時間であると同時に、いわゆる誰かがつくったものに対する「駄目だし会」でもあります。

 よく、「忌憚の無い意見が欲しい」と表現されますが、そうするためには、お互いに意識を共有し、ちゃんと理解し合った上でやりあったほうが、万が一の誤解も生まれにくく、気持ちよく仕事を進めることができるはずです。「忌憚なく、といったけど、それじゃタダの悪口、誹謗中傷だよ」と思われないように、僕は前向きな話をしていくことを心がけています。

 これは、言いたいことをオブラートに包んで、無難に進める、わけではありません。ある意味、クリエイター自身の突いて欲しくない部分を突くかもしれないからこそ、「明るく楽しく!」なのです。


②伝えた言葉が受け止められる相手の気持ちを考える

 当たり前のことかもしれませんが、ビジネスでやりとりしているときは、「役職」や「立場」、「やらねばならないこと」があまりに優先されてしまい、この考えを失念してしまう編集者やプロデューサーは、実際に存在します。クリエイターもそれはしかりです。

 どちら側でも、まず『ダメ出し』するときは、その前に、まずは相手の気持ちに立って考えてみましょう。自分だったら、どう言ってくれたら、耳に痛い言葉でも聞き入れることが出来るか。たとえば、「いっやぁー、これって●●ですよねぇ~~」とかヘラヘラ笑いながら言われたほうが良い、と思う人は決していないはずです。初対面で打ち合わせしているときに、ずーっと自分の名前を一文字間違えて発言する人の意見を、真摯に受け止められるでしょうか? その逆を、貴方がしているかもしれません。

 クリエイターは自動販売機ではありません。気分の上げ下げは当然ありますし、些細な出来事でモチベーションが変動し、クオリティに影響することがよくあります。言いたいことを言う前に、「これを言われたら、自分ならどう感じて受け止めるかな?」とシミュレーションすることは、とても大切なことだと思っています。


③ケンカ腰にならない

 誰でも、自分の好きな映画や漫画、アイドル、アニメを馬鹿にされた時、カッとなることがありますよね。打ち合わせでは、そういったやりとりの積み重ねで成り立つこともあります。円満でスムーズな打ち合わせは別ですが、膝を付け合わせて侃々諤々とやりとりすることもよくあります。

 そこでクリエイターさんがよく思うことの一つは、「創作しているのは自分なのに、なんで自分一人で決められないんだ」です。発注者としては、「なに当たり前のこと言ってるんだ。こっちが依頼者だぞ」と思ってしまうでしょう。しかし、クリエイターにとって創作とは、我が身を削ってつくりあげる、愛娘のような存在であり、インディーズ時代からずっと応援してきた理想のアイドルであり、手塩にかけてコーチングし、ついに一流になったピッチャーでもあるのです。

 理屈では「依頼者の指示を守らないと」と思っても、感情ではそう思えません。ですので、依頼者側は、指示通りにならなかったとしても決してケンカ腰になってはいけないのです。自分の子どもをけなされたようなものだからです。それを理解した上で、どう説明すればお互いの落としどころを見つけられるかを考えていくのが、編集者の腕の見せどころです。


④二種類の思考回路を使い分ける。

 ジキルとハイドみたいですが……これは車でいうところの、外部のボディをつくる打ち合わせではなく、内部のエンジンをつくる打ち合わせ……つまり、小説やマンガの内容打ち合わせの時に有効なアプローチです。

 思考回路1は、徹底的に脚本術をベースとしたメソッド論理で考える回路。これは勉強すればするほど身につく知識であり、ベテランのプロデューサーなら誰でも経験的に持てるものです。この第三者的な目線があると、そつのない、失敗しにくい優秀なストーリーをつくることができます。いわゆる、脚本の美しさを突き詰める方向性です。

 思考回路2は、徹底的にアナーキーに、傲岸不遜に信じる道を進む考え方。これは理屈ではありません。煩悩やリビドー、超個人的な心のよりどころ、こだわり、中二的な思考……そういったものを突き詰める回路です。これが創作の中に入っていると、風船の中に入ったハリネズミのように「尖り」となり解き放たれます。作家との打ち合わせでは、この二つの回路を使い分けることが大切です。

 作家から原稿を受け取ったとき、僕は二回読み直します(時間が無いときは両方の回路を同時に働かせます)。一度目は回路1による徹底的な理論算出。二度目は回路2による徹底的なアナーキズム。この二つから生み出される「ポジティブ提案」と「ダメ出し」は、作品の質を向上させます。必ず。


⑤一人反省会をしよう!

 僕は家に帰ってから、今日あった打ち合わせを反芻します。あのときもっとうまくいえたのではないか、どうしてもっと良い言葉を思い付かなかったのか……。

 一度書ききった原稿も時間を置いて読めば新たな発見(や間違い)が見つかるように、打ち合わせもクールダウンしたあとに脳内でやりとりをリプレイしてみれば、そのときは出なかった良いアイディアや、作品全体の方向性のアプローチについて思い付くことがあります。

 この行為、どうでもよさそうに思えて意外とバカにできません。パソコンでいうところの、離席時の自動デフラグのようなものだと思ってください。僕はこの一人反省会で、脳内の情報整理を行い、さらなる客観的な閃きや、よりディープなネタの発見をしたことが一度や二度ではありません。騙されたと思って、トライしてみてください!

 ……ただ、「げぇ、家に帰ってまで仕事のことかよ……」と感じてしまうでしょうから、これはあまりオススメとはいえませんが……。

 

 以上、コツ5つ、すこしでも創作と、その打ち合わせに役立つなら幸いです。 


■今回の質疑応答

> ミヤザキユウさん

> いつもたのしみにしています! 『面白ければ何でもあり』もすごくよかったので、小説家志望の友人に勧めました。勧めた結果、「書いた小説を読んでほしい」と言われたので今度送ってもらうことになったのですが、私もポジ出しをして友達の小説を少しでもいいものにできたらと思います。そこで伺いたいことがあります。三木さんが原稿にポジ出し、いいね探しをするときに心がけていることなどありますでしょうか?普通に向き合うと、ついついダメ出しが先に立ってしまいそうな気がします。

→実は、ポジ出しは自然と出来てしまっていたことなので、コツと言われても難しいのですが、「同じ目標目指して歩む者同士なのだから、その道中は笑い合いながら進む方が人生楽しい」ということを考えておくといいかもしれません。


> 目高足正さん

> お返事いただき感謝します。いやぁ申し訳ございませんとしか言いようがないです(笑)。禁書3期の発表はありません! と以前おっしゃっていた時は三木さんすごく残念そうで悔しそうでしたし、起業なさったことを知った時は、「あの人もしかしたら3期のこともちょっと考えてるのでは…!?」と勝手に思ってしまい、つい軽い気持ちで質問のツイートをしてしまった次第です。へんに僕らの期待が高まってしまい、それがプレッシャーになったりされているのであれば土下座しますorz! そうですか! チャンスはあるのですね!! 嬉しいです。モチベーションすごく上がりました! 頑張りますっ!!

→こちらについては、アンオフィシャルですがしばしお待ちくださいませ。


> コペットさん

> はじめまして。いつも楽しみにしています。質問を募集しているとのことなのでさせていただきます。1つ目の質問です。禁書のスピンオフに超電磁砲と一方通行のコミックがありますが、このような原作とは別のスピンオフの編集などは原作の編集者である三木さんも共同でされているのでしょうか? 

→はい、監修は行っています。鎌池さんももちろんチェックしています。僕はまず作家さんと、二次派生コンテンツ(マンガやゲームシナリオなど)については、「どれくらい関わるか」を相談して決めます。たとえば「すべて向こうの編集さんに任せます(自分は執筆に集中します)」という作家さんなら、編集者チェックのみで進めますし、「全て確認したいです」という作家さんなら、プロットからネームからすべてみてもらって、行き詰まったらアイディアももらいます。そのサポートをするのが原作編集者ですね。


> 2つ目の質問です。SAOや魔法科がオリジナルストーリーでの映画製作が決まっていますがこちらのシナリオは文庫の編集者である三木さんが担当されているのですか?それとも映画のシナリオや脚本関係の方が担当されているのでしょうか? あと、映画のお話は電撃文庫から出ますか?できれば文庫で読んでみたいと思っています。

→『SAO』も『魔法科』も、専門用語で『ゼロ稿』と呼ばれるものよりすこしプロットに近いくらいの『シナリオ原案』を原作者である川原さんと佐島さんがお書きになっており、映画はそれがベースとなっています。そこからシナリオにエンコードするのは、『SAO』は監督であったり、『魔法科』ではシナリオアシスタントさんだったりします。今回の映画については僕(編集者)が脚本を書いているわけではありません。以前、名前は出ていませんが書いたことはあります。映画のストーリーが電撃文庫から出るかどうかは今のところ未定です。すみません。


> 中村大地@部長さん

> はじめまして。コラム読んで思ったことは自分も当てはまる部分が2.「生産性の高い人」は、1度決断したことをあえて忘れる!高校時代に気持ちの切り替えがなかなか出来なかった事が多かったことがあります。今では気持ちの切り替えが出来るようになったのでよかったな。ってこのコラム読んで思いました。また、気持ちの切り替えが出来ないままで社会に出たら自分の才能がフルに発揮できないで終わってしまうんだな、と感じました。コラムとは話が変わるんですが今月末にあるW@KU WORK第1回講演会に当たりました!lどんな公演になるのか楽しみにしてます!当日お会いできるの楽しみにしてます!

→感想ありがとうございました! 講演会、いかがでしたか? 頑張ったつもりです……!


> ast7さん

> 初めまして。拝読させて頂きましたが、少し気になったのは、これは人によりけりの部分もあるのではないでしょうか? という点です。多少無茶を詰め込むのも、時間の猶予を信じないのも、精神論で頑張るというのも……。例えば無茶をして自分を動かす様々な容量がオーバーして逆効果になったり、猶予を優先しすぎて精神的に息が続かなくなったり、精神論で動かすのも、僕個人は申し訳ないですが、精神論を振るって例えば鬱は甘えだとか大病でも休むことは馬鹿、許されない等と暴力に使われて、他者が言われてたり自分も言われたりと……等、総じて、それぞれが「これが真実」として良い働きの実現を運用されている世界は、確かにあるのでしょうが、しかしそれが全てではないように思えます。ここに記述した自分の考えは恐らく仰ることと違うのでしょうが、あえてそのままコメントさせて頂きます。忙しいのは言い訳というツイッターの一言、それは「忙しいくて心身共に辛く息苦しいこと、それは甘え」と言われてるような気がしました。それでは失礼します、お邪魔しました。

→これはその通りですね、言葉が至らず、申し訳ありませんでした。普遍的、汎用的に表現しているところが誤解を生むところだと感じました。僕は、どちらかといえばこういったコラムで、本当に頑張っている人にエールを送りたかったのだと思います。今の世の中、物事に熱くなることについて、冷や水を浴びせたり、「何マジになっちゃってんの?」といった、「斜に構えた態度」のほうが「俺は分かってる」感が出て優越感に浸れるというか、頑張っている人に対して上位に立てるというか、そういった風潮がすこしあるかな、と感じていたので、そんな雰囲気に流されないように一緒に頑張ろう、と言いたかったのです。そうは読めない内容で、申し訳ありません。


> srrさん

> こんにちは!コラムいつも興味深く読ませていただいてます。心に響くものがあり、己を振り返る良い機会にさせてもらってます。SAOについて、疑問に思っていることがあるので教えてください。アインクラッドの世界で、キリトやアスナは現実の姿と同じ容姿をしていますが、なぜリズベットはピンクの髪の毛でいられたのですか?現実姿ではこげ茶の髪だったので不思議に思いました。あの世界って、化粧とか出来るんですかね?それともみんなすっぴんなのでしょうか?女性って普段化粧してるじゃないですか。そういうのってゲームのグラフィックでツルツルの肌に再現されているものなのですか? 高校生ならニキビの一つや二つありますよね?

→リズベットの髪の色は、もともとは茶色です(アニメの一話でもそうなっています)。アインクラッドでは、アクセサリー機能で服装も髪型も髪の色も自由に変更出来ますので(もちろんコルがかかったり、手に入れないと表現できないものがあります)、どこかのタイミングでピンクにしたんでしょう。化粧も可能だと思います。『タイタンズハンド』のロザリアさんは口紅を塗ってますしね。ニキビはさすがにどうかなぁ……。再現されていないかも。ディテールフォーカシングシステムでアップにすればわかるかもですね。


■今回のストレートフォト

 やはりレーベルといえばTシャツ! ということで、ストレートエッジTシャツをつくりました。先日創立決起会をしまして、そこで皆様へのお土産にさせてもらいました。コルク佐渡島さんも着てくれた―

■『ストレートニュース』

 すみません! これを読んでいただいている皆様にご相談です。ブログ書き続けていると絶対にネタが枯渇するので、心優しい閲覧者の皆様、質問とかいろいろ送ってください。それに答える形で記事を書いていきたいと思ってまして……!! 罵倒・糾弾・誹謗中傷も大歓迎です!! ヘイトを浴びるとなんか気持ちいいよね。よろしくお願いいたしますm(_ _)m


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三木一馬

編集者(エージェント)です。イラストは「はいむらきよたか」さん。(株)ストレートエッジ(http://straightedge.jp)所属。

エージェント会社ストレートエッジのマガジン

コメント3件

ご多忙の所、自分のコメントに対してのご回答、ありがとうございました。
三木さんの会社の契約作家さんが協力して何かする事ってあるんですか?
こちら回答させていただきました!
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