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ストレンジシードの申し子!? まだこばやし インタビュー

ストレンジシード静岡のサポートスタッフ、その名も「わたげ隊」。ストレンジシードってどんなフェス? どんなアーティストが出るの? ということを伝えるべく、地元・静岡を中心に活動するわたげ隊が出演アーティストにインタビューする企画。第18回はまだこばやしのみなさんが登場です。

わたげ隊がゆく!ストレンジシード静岡2022 アーティストインタビュー
ゲスト:長谷川暢、山崎眞結(まだこばやし)
聞き手:ハボ、天野(わたげ隊)

まだこばやし

ユニット名誕生秘話(?)

ハボ:前からずっと気になっていたのですが「まだこばやし」というユニット名の由来からお聞かせください。

長谷川:よく聞かれるんですよ、「何ですかこの名前?」って。そういう時は「ま」は「舞う」の『ま』、「だ」は「打つ」の『だ』、「こ」は「声・呼ぶ」の『こ』、のお囃子ということで「まだこばやし」です、といってるんですが、本当はもっとくだらなくて。

長谷川暢さん

長谷川:お好み焼き屋で、名前つけなきゃいけないな~って、食べながらしゃべってたんです。そのお店の名前が「こばやし」で。お店の名前が付いたメニューってあるじゃないですか。その「こばやし焼き」と豚玉を頼んで、鉄板に2つ並べて焼いて切り分けたらどっちがどっちか分かんなくなって。「これ、どっち?」「これはまだ『こばやし焼き』だと思いますよ」「まだこばやし…それでいいんじゃない?名前」というところからです。ほんとは。

ハボ:まさかそんな由来だとは!その流れで、もう一つ気になっていたんですけども「まだこばやし」のロゴマークがタコなのは?

長谷川:タコですね。

ハボ:まさか、お好み焼き屋で食べたたこ焼きが美味しくて、とか…そんなわけでは?

長谷川:あれは、マダコですね。マダコの囃子で「まだこばやし」です。

ハボ:タコは足が8本で、4名の方が2本の腕で太鼓を打つから2x4の8本 ?とか、色々考えてたんですけど…

長谷川:それです、それです(笑)

ハボ:(心の声:多分違う/笑)そうだったんですね~、ビックリしました(笑)

長谷川:なんかスミマセン(笑)

「和太鼓+ダンスユニット」のこだわり

ハボ:「和太鼓+ダンスユニット」という冠を、必ず「まだこばやし」の名前の前につけているのにもこだわりがあるんですか?

山崎:一応、全員が兼任しているというところが売りであり、さっき長谷川さんが言っていた「音楽的な身体」というところもあるので、「和太鼓+ダンスユニット」は外せないというか。和太鼓とダンスで分けてないという感じがしていて。分かりやすいかなっていうのもあるんですが。

ハボ:なるほど。何をやるかがすぐ分かる。

長谷川:最初は一発で分かってほしいなっていうことで、「和太鼓+ダンスユニット」を名前の前に付けました。

ハボ:創作の進め方には、決まったスタイルがありますか?みんなで作っていく感じなのか、どなたかが基本線決めてそこにフィードバックする感じなのか、どういうスタイルで作っているのかと思って。

長谷川:基本的にはみんなで作っています。あーだこーだ言いながら。種みたいなものは僕が出すことが多いですけど、それを面白くしてくれているのはいつも他のメンバーという感じがしてます。

山崎:長谷川さんが稽古で、いろいろ提案をしてくれるんですけど、申し訳ないと思いつつ、みんなでぶっ壊しにかかるくらいアイディアを出しまくります。それが良さであり、思いがけない方向性に行ったりするのがクリエイションしていて楽しいなと、個人的には思っています。

山崎眞結さん

「太鼓はメンバー!」

ハボ:「それぞなる」のプロモーションビデオを拝見したんですが、歌うシーンがありますよね。作詞作曲はどなたがされているんですか?

長谷川:曲は基本的に僕が作っています。でも振り付けは僕じゃなくて、酒井君が作ってくれたり、みんなで出し合ったりしています。なんで歌い出したかは、なんて言ったらいいか分かんないんですけど。

山崎:「口三味(くちじゃみ)」の流れですかね?

長谷川:あーそうですね。「それぞなる」のなかで「トーンツトーン」と言っている部分を僕らは「口三味線」「口三味」と呼んでいて、もともとは太鼓を練習するときに使っていたんですよね。和太鼓だと、邦楽の世界は特にそうですけど、歌えるということがすごく大事なんです。まずは口で歌ってから手で打つという流れが多くて、それで口三味線で練習をするんですが、それをそのまま舞台に上げるみたいなところがありますね。

山崎:シンプルに面白いなっていう感じもあり、どの作品にも声を出すシーンが入ってますね。

天野:私も小中学校くらいで、地元の小さい団体で和太鼓をやっていて。私たちの場合は既存の曲の楽譜や曲を手に入れてそれを覚えることしかしていなかったんですが、和太鼓の作曲をするときって、何から取り掛かればいいものなんですか?

長谷川:鼻歌とかじゃないですか?僕は結構既存の曲、普通の音楽からアイディアもらうことが多いですね。

天野:J-Popとかですか?

長谷川:や、ゲームですね。僕は、個人的な趣味ですけど、ファイナルファンタジーとかそういうのからアイディアをもらうのが最近は多いですね。

天野:リズムを引っ張ってきて?

長谷川:そうですね。リズムや雰囲気を引っ張ってきて。

ハボ:今回、太鼓を4つ使われますが、それぞれの特徴を聞かせてください。

長谷川:大きく分けては2種類です。「桶太鼓(おけだいこ)」という“桶”…いわゆる板をはって桶の筒を作って、その上に太鼓の革を張ってあるやつと、「締太鼓(しめだいこ)」というもっと小さい甲高い音のするやつがあって、それぞれ2つずつ使うんです。でも、キャラクターが桶太鼓2つでも全然違って、どっしりした音と抜ける・響く音が出るのと、締太鼓も渋めの音と甲高い音という風にそれぞれキャラクターがあって。色も違うし、全員に名前も付けてるんですよ。

ハボ:なんていう名前ですか?

長谷川:桶胴太鼓の「祥鼓(しょうこ)」「承太郎(じょうたろう)」、締太鼓の「かちお」「ごんべえ」です。

ハボ:フォッカチオみたいだから「かちお」なんですね!

山崎:そうです。革部分がフォッカチオみたいな色をしているんで、省略して「かちお」になっています。

「踊りながら打つ、打つことで踊る」

ハボ:本格的にダンスと組み合わせて和太鼓をする方を他に見かけたことがないんですけども、「まだこばやし」のスタイルだからこそ伝えられることっていうのはありますか?

山崎:パフォームする可能性が無限大だと思っていて。体をフルに使って表現するって表現者としても人間としてもいいと思って。珍しさだけじゃないパワフルさが、楽しさや高揚感を伝えられたらうれしいなと思っています。

長谷川:ただ演奏するだけとも違うし、踊るだけともちょっと違うというか「踊りながら打つ、打つことで踊る」から生まれる味わいがあると思っていて。踊ることと演奏することを組み合わせるっていうと、複雑に感じるかもしれないけど、実はよりまっすぐな表現というか。その場で音が生まれて、体が生まれるっていうシンプルな作りなので、理屈っぽくなく、音や体がストレートにドンって観客に届くやり方なんじゃないかなと思っています。
(太鼓を)打つことで体が動く、その動きをダンスにするのは自然なことだと思うんです。どんな体の動きもダンスとして捉える、みたいなことはコンテンポラリーダンスの系譜的にも言えるので。

長谷川:加えて僕らが作品を作るときは、ダンスと演奏することがかい離しないようにしたいと思っています。あくまでも打つ動作やバチを持っているから生まれる身体性を基準に体の動きを作るように気を付けているので、食い違いがないというところを目指したいな、と思っていますね。

色んな方向から見てもらいたい

ハボ:今回のストレンジシードでは、市役所の大階段でパフォーマンスすると聞いています。外でのパフォーマンスに際して、期待や気を付けていることはありますか?

長谷川:僕たちはもともと劇場よりも、外や道や広場でやるほうがいいなと思っていて。太鼓自体が全方向に音がバーンと出るということもあって、あんまり正面性というより、色んな方向から見てもらいたいなという思いがあって、どこから見ても面白い感じに作りたいと思っているので、むしろ外でやりたいぜという感じです。

山崎:太鼓自体が外でたたくような楽器ということもあり。劇場と外での音の違いがすごくあるので、今回静岡の、あの場で生まれるあの場でしかできないバージョンが生まれるのがすごく楽しみですね。

ハボ:衣装は、プロモーションビデオのものと同じですか?

山崎:一緒ですね。今までは既存のものを着用していたのですが、プロモーションビデオで着用した衣装は、池田木綿子さん(Luna Luz)にデザインを頼んで作っていただいたものなんです。生のパフォーマンスでお披露目するのは今回が初なので、すごいうれしいですね。「イエーイ!」って感じです。

ハボ:カラフルで切り替えが面白くて、かつ動きやすいデザインなんだろうなと。

長谷川:完璧です、衣装は。

山崎:かわいいですよね。

ハボ:カッコいいです。適度にひらひらしているので、動かれた時の余韻というか、身体の後をちょっと追いかけて衣装が動いたりというのがすてきだなと思って。あれが静岡の風の中で揺れると思うと。

山崎:楽しみです。

和太鼓は「何とでも繋がれる便利なツール」

ハボ:他にも地方の演劇祭、芸術祭にも出ていらっしゃいますが、都市部ではなくて地方の演劇祭などの魅力はどう感じておられますか?

山崎:青森の八戸や岩手の大船渡とか行かせていただいてるんですけども、その土地にある民族舞踊などの伝統的なものが根付いている地方が多いので、違和感なくその場にいられるあたたかさみたいなこともあるし、自然豊かなところでたたくというのは東京とはまた違う良さがあります。まだこばやしとして、積極的に地方に行って関わっていきたいと思ってます。
岩手で地元の方から鹿踊りを習う短期合宿に参加して、それを持ち帰って自分たちの作品にしているものがあるんですけど、積極的に地方の伝統的なものを取り入れた作品をやっていきたいとか、リサーチとして関わっていくとかというのは、これからのまだこばやしの活動の一つとして考えているところではありますね。

長谷川:東京のアートフェスだと、なかなか“街が変わる”ところまではいかないと思うんですよ。びくともしないというか。それと比べると、地方でやってるアートフェスは、地方ならではの面白さがあると思います。
ストレンジシードや三陸国際芸術祭や南郷アートプロジェクトとかは、アートが街にどう作用するか、街や地域の力にどうなっていくかっていうことを考えていくという側面がすごく大きいと思うんです。地域や土地や人々の生活に対してアートが影響を与えられるかどうかということを、地方のアートフェスのほうがより自由に考えられると僕は思っています。

ハボ:和太鼓があるだけに、郷土芸能との親和性が、普通のコンテンポラリーダンスより高いのかなという印象を受けました。

長谷川:和太鼓を使っていますが、文化を継承していくのを目的にしているのではなく、あくまでも「何とでも繋がれる便利なツール」という風に僕は思っています。
伝統芸能ともつながれるし、シンプルに現代のリズムとしてもつながれると思ってるし。僕らがやっているのはコンテンポラリーな表現、新しい楽しいダンスになりたいなと思ってるので、何とでも繋がれる、若者にもうける、おじいちゃんたちとも話せるみたいな、「いい感じの」になりたいなって思ってます。

完全に俺ら向きだな、ストレンジシード

ハボ:「街を変えていけるんじゃないか、地方のアートフェスは」とおっしゃっていましたが、今回静岡にどんな変化を起こしたいと思いますか?

山崎:静岡にあまり行ったことがないので、パフォーマンスをして近づきたいなというところからですね。

ハボ:まずは、今の静岡がどうなっているかを知るところからですかね。

山崎:そうですね。「はじめまして。こんにちは。まだこばやしです。」って乗り込んでいって、市役所でパフォーマンスさせていただいて、握手できたらいいなという感じはありますね。…それめっちゃ最高だなって思いました。

長谷川:あとは、市役所前のあの広場で太鼓打ったら、結構いい反響が出ると思うんですよね。ホールに変化するっていうか。
変化って、それぞれ見てくださった方や通りかかってくださった方の中で起こることだと思うんですよね。こういうのが公園にあっても楽しそうだなとか、自分が知ってる静岡のこういうとこでやったら面白そうなんじゃないかとか、私が知ってるこういう人たちとやったら面白いんじゃないかとか。僕らには音も踊りも歌も、それから衣装も、いろんな要素があるので、見てくださった方々の中に、ちょっとずついろんな変化や繋がりが起こるような、みんなの“いろんなもの”になったり、いろんなものを繋ぐ“何か”になるといいな。それが僕たちと繋がるとかでもいいし、それが街に住むみなさんのいい変化になるといいですね。

ハボ:人が集まって街なんだなって、人の中の変化が街の変化っていうのが、おっしゃる通りだなと思いました。

長谷川:あと、周りの風景の力で僕たちのパフォーマンスが素敵に見えることがあると思うし、逆に僕らのパフォーマンスも変化すると思います。街によって僕らが変化することで、街自体の見え方が変わってくると思うので、お互いに刺激があって変化が生まれて、それも面白いねって風に連鎖していくと素敵じゃないかしらと思います。

山崎:地元の方がいつも見慣れてる景色じゃない発見みたいなのがあると面白いなと思いました。街全体が劇場になるっていうか、パフォーマンスの場になるっていうのは、ほんとに素敵だし、それってその場所に親しみがあるというか愛がある県民の方だからこそのアイディアだと思うので、発見の1つになったらすごくうれしいです。

ハボ:まさにストレンジシードに出演していただくにふさわしい発言が次から次へと!

長谷川:いやずっとそう思っていたんですよ。完全に俺ら向きだな、ストレンジシードってずっと思っていたんです。

ハボ:よかったです。今回、出演していただけて。

長谷川:ありがたい。

山崎:ありがたいですよね。「きたーー!」って感じでしたもんね、お話をいただいた時。

長谷川:「はい待ってました!」って、ね。

わたげ隊:楽しみにしています!

和太鼓+ダンスユニット〈まだこばやし〉
玉川大学芸術学部和太鼓チームの卒業生であるダンサー・和太鼓奏者によりユニットを結成。
長谷川暢、酒井直之、齊藤礼人、山崎眞結の4人で構成されている。
全員がダンスと打楽器演奏を兼任するスタイルで、東京を中心に活動。迫力と冗談と原始的な力を武器に、打楽器演奏の身体性と、音楽的な身体が交錯する力強い作品を創作している。
「南郷アートプロジェクト」や「三陸国際芸術祭」等、国内の芸術祭に多数招聘。
座・高円寺主催「みんなのリトル高円寺」等、子ども向けWSや参加型の作品を創作し、幅広い世代に向けた活動を行う。
これまでの主な作品として「がわ」「まうら」「それぞなる」「DAN/DAN」等がある。
https://mybq6r.wixsite.com/madakobayashi

ストレンジシード静岡2022
『それぞなる』
和太鼓+ダンスユニット〈まだこばやし〉

「それぞれが」「鳴る」「共鳴する」ことをテーマに、4人のダンサーが、かわるがわる打ったり、踊ったり、たまに歌ったり??
目まぐるしいリズムとダンスの渦にあなたも巻き込まれるかも!?​
それぞれの個性と〈まだこばやし〉ならではのコミカルさ、構成が際立つ代表作を、ストレンジシード静岡スペシャルバージョンとしてお届けします!

日程:2022年
5月3日(火・祝)14:00 / 17:30
5月4日(水・祝)11:40 / 15:50
5月5日(木・祝)13:10 / 17:30

会場:市役所エリア[大階段]

振付:まだこばやし
出演:長谷川暢/酒井直之/齊藤礼人/山崎眞結
衣裳:池田 木綿子(Luna Luz)

詳細はこちら
https://www.strangeseed.info/

インタビュー:ハボ、天野(わたげ隊)
テキスト:ハボ(わたげ隊)
記録:ゆうか(わたげ隊)
編集:山口良太(ストレンジシード静岡 事務局)
編集協力:柴山紗智子

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