意味のあるトレーニングしてますか?


技術練習や(体力)トレーニングを実施する際に、「きつい(きつく感じる)練習・トレーニング=良いトレーニング(効果の高い練習・トレーニング)である。」という思考、論理が成り立ってしまうことも少なくありません。

また、「トップ選手が行っている練習・トレーニングだから良い練習・トレーニングである。」といったような思考に陥りトップ選手が行っている練習・トレーニングを真似して取り組んでいるケースも多いのではないでしょうか。

しかし、きついトレーニング(きつく感じる)練習・トレーニングやトップ選手が実施している練習・トレーニングが必ずしも良い練習・トレーニング(効果の高い練習・トレーニング)であるとは限りません。

すなわち、その練習・トレーニングがただ単にきつく感じるだけで、実際の競技に必要とされる生理学的要求を満たしているとは限らず、期待される効果が得られるとは限りませんし、そもそも才能豊かなトップ選手はどんな練習・トレーニングを実施しても高い競技パフォーマンスを発揮出来る可能性もある訳です。

●「TABATAトレーニング」は非常に”きつい”が・・・

この数年で爆発的に認知度が上がったといえるトレーニング方法に「TABATAトレーニング」といわれるものがあります。

この「TABATAトレーニング」は「20秒間の(全力)運動と10秒間の休息を6~8回疲労困憊に至るまで繰り返す」というものですが「20秒間の運動+10秒間の休息×6~8回」という部分が独り歩きをしてしまい本来の目的・効果を見失う形で広まってしまった典型例であるといっても過言ではありません。

本来「TABATAトレーニング」は1980年代後半頃に日本のスピードスケート選手が取り組んでいたインターバルトレーニングで(当時、多くの日本人スピードスケート選手がこのインターバルトレーニングを実施し多くのメダルを獲得しています)、このインターバルトレーニングの科学的根拠を検証した結果(下記リンク参照)、20秒間の最大運動の運動強度は170%VO2maxに相当すること、最大酸素摂取量を向上させること、最大酸素借を向上させること、が明らかにされ、簡単にいえば1つのトレーニング(方法)で有酸素能力と無酸素能力を向上させることが可能であることから注目されましたが、実際に実施してみると非常に”きつい”トレーニングであり、その”きつさ”だけがフォーカスされた(と考えられる)ことから「20秒間の(全力)運動+10秒間の休息×8」という部分だけが独り歩きする形で欧米のフィットネス愛好家を中心に拡がりました。

この「TABATAトレーニング」はどのような運動を用いても”きつい”トレーニングになります(厳密にいうと、きつく感じるトレーニングになります)が、例えば「腕立て伏せ」や「懸垂」を用いて「TABATAトレーニング」を実施しても最大酸素摂取量に達することも最大酸素借が観察されることもないといえますので、ただ単に”きつい”だけで本来の効果を得ることは出来ません。つまり、身体を疲弊させるだけ、やるだけ損みたいなトレーニングであるのです。

「TABATAトレーニング」の本来の目的・効果を考えるのならば170%VO2maxに相当する強度で実施出来る運動様式(例えば、パワーマックスのような固定自転車を用いた自転車運動)を選択し6〜8セットで疲労困憊に至るような内容でなければ意味がありません。

例えば、以下の動画のように笑顔で終われるような内容では本来の目的から外れたものになってしまうという訳です。

また、1980年代の日本人スピードスケート選手が取り組んでいたインターバルトレーニングには「TABATAトレーニング」のベースとなったプロトコル(20秒間全力運動+10秒間休息)とは別に「30秒間全力運動+2分間休息」というプロトコルもあったとのことですが、こちらのプロトコルのインターバルトレーニングも非常にきついものであるにも関わらず酸素摂取量は最大酸素摂取量に達していないことが明らかにされ、”きつい”だけで効果は「20秒間全力運動+10秒間休息」というプロトコルよりも劣るというものでした。

このように”きつい”からといって、その練習・トレーニングが効果的なトレーニングであるとは限りませんし、仮にトップ選手が実施していたからといっても効果的であるとは限らない訳です。

折角トレーニングを実施するなら、同じ”きつい”思いをするなら、同じ労力を費やすのなら、意味のあるトレーニングを実施しなければもったいないといえます。従って、効率的・効果的なトレーニングを行うためには自身が取り組むトレーニングの目的や効果を明確にする必要があるといえるでしょう。

●ブリックトレーニングは意味のあるトレーニング?

トライアスリートが取り組むトレーニングの一つにブリックトレーニングと呼ばれるインターバルトレーニングがあります。

ブリックトレーニングは主に「スイム-バイク」あるいは「バイク-ラン」を数セット繰り返すインターバルトレーニングですが、ローラー台とトレッドミルを用いて実施出来ることやプールサイドにローラー台を持ち込むことが困難であることを理由に「バイク-ラン」を繰り返すブリックトレーニングが一般的であり、多くのトップトライアスリートが取り組んでいることからトライアスリートにとっては当たり前のように普及しているといえます。

↓ブリックトレーニングの例(以下の動画では非常に恵まれた環境で「スイム-バイク-ラン」を5セット繰り返すブリックトレーニングが実施されています。)

ブリックトレーニングは実際に実施してみると非常に”きつい(きつく感じる)”トレーニングであるといえると共にトライアスロンレースのシミュレーション、リハーサルとして非常に有効であると推察されるのでトライアスロン競技パフォーマンスの向上が期待出来るトレーニングであると考えられる訳ですが、どのような生理学的意義のあるトレーニングなのでしょうか?

実際にブリックトレーニングについて論文検索をしてみると、それ程多くの研究が実施されている訳ではないように見受けられますが、Hueらのグループが報告している幾つかの研究がブリックトレーニングを実施する上でのヒントになり得る点を示唆していますので、その1つを以下に紹介してみたいと思います。

●論文紹介:Catecholamine, blood lactate and ventilatory responses to multi-cycle-run blocks.

Med Sci Sports Exerc. 2000 Sep;32(9):1582-6.
Catecholamine, blood lactate and ventilatory responses to multi-cycle-run blocks.

Hue O, Le Gallais D, Boussana A, Galy O, Chamari K, Mercier B, Prefaut C.

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野口克彦

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野口克彦

1998年ナイキジャパン退職後,筑波大学大学院修士課程体育研究科に進学.持久系スポーツ時における疲労とパフォーマンスの低下に関する研究活動を行なう.2001年修士課程修了後,ストレングス&コンディショニングコーチ(トレーニング指導者)としての活動を開始.

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