ケネニサ・ベケレ選手のラストスパートから中長距離走競技者にとってのウエイトトレーニングを考える!

2016年9月25日に開催されたBerlin marathon 2016でのエチオピアのケネニサ・ベケレ選手のラストスパートは圧巻でした。

このベケレ選手のラストスパートを観て改めて感じたことは、今後、中長距離走競技は距離に関わらずラストスパート能力の高さが競技パフォーマンスを決定付ける要因になるといっても過言ではないということです。

当方は筑波大学大学院にて、このラストスパート能力に関係する生理学的要因に関する研究を行って修士課程を修了したのですが、当時は運動生理・生化学研究室に所属していましたので、任意に定義したラストスパート能力(最大下運動直後に引き続き遂行された最大運動のパフォーマンス)と最大(最高)酸素摂取量、LT、OBLA、ラストスパートのモデルとして実施したランニングテスト(8000m最大下走運動+4000m最大走運動テスト)中の血中乳酸濃度、血中アンモニア濃度、RPE(主観的運動強度)との関係について検討しましたが、ラストスパート能力に影響を及ぼす生理学的要因を特定することは出来ませんでした。

今から振り返れば、筋力やパワー出力、等とラストスパート能力との関係について検討すれば何からの知見が得られたのではないかと考える訳ですが、近年、ナイキ・オレゴン・プロジェクトではラストスパート能力を重視し、その能力を高めるための方法の一つとしてウエイトトレーニングならびにプライオメトリックトレーニングを重視していること、下記の記事で述べられているようにラストスパートにおいて重要となるキック力を高めるための手段の一つとしてウエイトトレーニングならびにプライオメトリックトレーニングが推奨されていること、ウエイトトレーニングならびにプライオメトリックトレーニングはランニング動作における接地時間を短縮させることが報告されていること、等を踏まえて考えれば、少なからずとも上述した仮説(筋力やパワー出力等はラストスパート能力に影響を及ぼす)は正しいといっても過言ではないでしょう。

●A Lethal Kick:You don't need to be born fast to have finishing power. Here's how to develop it.

また、上記の記事において非常に興味深い点は、ラストスパート能力を向上させるためには「より多くの筋線維を動員出来るようにすること」「疲労した状態でも多くの筋線維を動員出来るようにすること」の2つのアプローチが必要であると述べられている点ですが、恐らく多くの長距離走競技者やコーチが「より多くの筋線維を動員出来るようにする」ための手段として選択するのは、スプリントトレーニング、特にヒルスプリント等の高速ランニングトレーニングであると想像出来ます。

しかしながら、「より多くの筋線維を動員出来るようにする」ためには動作速度を上げるよりも負荷を高めることの方が効率的・効果的であり、高重量のウエイトトレーニングが最も効果的、効率的に多くの筋線維を動員することが明らかにされていますので、ラストスパート能力を高める上で「より多くの筋線維を動員出来るようにする」ために何より重視すべきはランニング動作に拘らず高重量のウエイトトレーニングであると考えることが出来ます。

いずれにしても、今後、中長距離競技は距離に関わらずラストスパート能力が競技パフォーマンスを決定する要因になること、ラストスパート能力に向上させる上でウエイトトレーニングならびにプライオメトリックトレーニングは必要不可欠なトレーニングであると断言しても良いと考えます。

そして、ラストスパート能力を高めるためには、推進力に関わる下肢伸展筋群の筋力を適切かつ十分に高めること、下肢伸展筋群の筋力を十分に強化した上で基本的なプライオメトリックトレーニングを実施し、バウンディング(ストライド)等を含むスプリントトレーニングを実施していくことが望ましいといえます。

更に何より、これらウエイトトレーニングならびにプライオメトリックトレーニングは、適切かつ優秀なS&Cコーチの下で実施することを心から願います。

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野口克彦

マラソン/トライアスロン

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