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7時間かけて飯田線を走破する列車に乗り通してみたら…【前編】

皆さんは「同じ列車」に何時間乗り続けたことがありますか?

通勤・通学で大体30〜40分くらい。新幹線や特急列車でどこか旅行に行くとしても、長くて3時間くらいでしょう。

3時間同じ列車に乗り続けるだけでも常人には大変なことです。しかーし!世の中にはそれをはるかに上回る「乗り通し列車」が存在するのです!!

今回はそんな“地獄のような列車”をご紹介いたします。

地獄列車・豊橋行き

地獄列車・544M列車は長野県に位置する上諏訪駅を始発駅とする列車です。僕はその列車に乗るべく朝4時に起き、普通列車を乗り通して来ました。乗る前から疲労が蓄積しています。

これが問題の列車

一見普通の鈍行列車で「どこに地獄要素があるの?」とお思いになるでしょう。それじゃあ皆さん、この列車の行き先表示をご覧くださーい!!

写真左の方向幕にご注目

「普通 豊橋」

と、豊橋??????

豊橋は愛知県の足元に位置する駅。ここ上諏訪との距離はこのくらいです。

マップⒸ2024より

はい、一瞬にしてこの列車が「地獄列車」であることがよーくお分かりになったかと思います。気になる所要時間ですが、上諏訪を9:22に発車して豊橋に着くのはなんと16:16。約7時間かけて豊橋を目指す列車なのです!!乗っているだけで一日の貴重な時間を無駄にするような列車です。

それにしても異次元の所要時間、この前只見線を乗り通しましたがアレでも5時間ほど。それに+2時間もかかるというのです。帰っていいですか(笑)?

戦いの準備

この列車を乗り通すのに必要なものはまず「食料」!そして一番大切なのが「忍耐」です!!僕も覚悟を決めました。

乗車まで時間があったので上諏訪駅のNewDaysでこの日の食料を調達しようと思います。

ところが!重要なおにぎり・サンドイッチの棚は空っぽ、お弁当も小さいのが一つか二つかといった悲惨な状況でした。
おいNewDays、仕事をしろ!僕を〇す気かーー!!

と叫んでもない以上は仕方がありません。とりあえずあるものだけをかっさらいます。カップに入った焼きそば、カロリーメイト、ポッキーを手に入れ、これで一応は揃いました。

戦利品

この日は青春18きっぷの利用期間ということもあってか、普段ガラガラの車内は少し混んでいました。買い出しの前にボックス席を一つ確保していたので、「ローカル線で立ちっぱなし」という羽目に合わずに済みました。18キッパーはどう考えても終点まで乗るでしょうし、ここで座席を確保できなかったら〇を覚悟していました。

あ〜よかった

地獄の始まり

9:22、定刻通りに列車は上諏訪駅を出発。地獄の7時間耐久が始まりました!

この列車に7時間もカンヅメ

この列車は途中辰野まで中央本線を走り、辰野から飯田線へと入って豊橋を目指します。この区間はほんの準備運動です。

発車してすぐにポッキーの一袋目を開封。朝早かったのでお腹が空いていたのです。糖分もしっかり補給、ポッキーを買ったのは意外といい戦略だったのかもしれません。

9:35、岡谷駅に到着。ここで10分ほど停車します。窓の外を見ると、またしてもNewDaysの姿が。ここで買った方がいいものを買えたのではなかろうか?実際岡谷の店は覗きませんでしたが、もしもそうなら上諏訪の店には〇意を覚えます。

岡谷駅のNewDays

9:56、辰野駅に到着。ここで中央本線は終了、メインディッシュの飯田線へと入ります。出発してから早30分が経ちましたが、旅はまだ始まったばかりです(泣)。

先はまだ長い

驚異の95駅連続停車

長野~愛知を天竜川に沿って走る飯田線にはいくつか特徴があります。その一番の特徴が「駅間が短い」こと!!

通常のローカル線ですと次の駅に到着するのに最低でも5分ほどかかるのですが、同じくローカル線である飯田線は平均2~3分で次駅に到着してしまいます。決してスピードを出して走っているわけではありません。それくらい駅間が首都圏の鉄道並みに短いのです。

現在はJRの路線になっていますが、飯田線は私鉄として開業しました。その時代の名残で駅と駅の間隔が短く、その分路線上の駅数が他と比べて圧倒的に多いのです。

実際、この列車は中央本線を含めてなんと95駅連続で停車します!!発車して加速をしたと思ったらすぐに減速し、あっという間に次の駅に停車。これが95回も続くのです。普通の感覚ならば発狂してしまうでしょう。

駅がめちゃんこ多い

これはJR東海が掲示している路線図。グニャグニャとS字を描いているのが飯田線です。ご覧ください…、気の遠くなるような旅でございます。

駅数だけではありません。飯田線は単線のため、途中いくつか上下線とのすれ違いを行う必要があります。そのため何駅か長時間停車を強いられるところがあるのです。

現に宮田という駅に到着しましたが、ここで8分間も停車します。もちろん駅周辺には住宅以外何もありません。むしろ住宅があるだけマシです。只見線だったらあたりは森・森・森です。

上って下ってグニャグニャカーブ

飯田線の特徴、お次は「激しい起伏」です。

飯田線は南アルプスと中央アルプスの谷間を天竜川に沿って走行します。川がもたらした平地にはたくさんの人が住んでおり、飯田線はそのおかげで存続しています。

南アルプス(天然水♪)

平地ならば起伏は無いのかというと、そうではないんですねぇこれが。線路脇を観察すると、いくつもの勾配標を確認できます。単位は「‰(パーミル)」、1000メートル進んで何メートル登る(もしくは降りる)のかを示す標識です。

そんな勾配標ですが、飯田線の勾配標には平気で10とか20とかの数字が表示されています。鉄道では20くらいになると相当な坂になります。そんな急坂が途中いくつもあり、列車は登ったり降りたりしているのです。

向こうに壁のような登り坂が!!

加えて大量にあるのが「急カーブ」です。下の地図にある路線の一部をご覧ください。

赤く引いたのが飯田線
マップⒸ2024より

一直線に進むのではなく、グニャグニャとカーブを描きながら進んでいるのが分かるでしょう。Ω(オメガ)という記号のようなカーブであることから、「Ωカーブ」と呼ばれる特徴的な線形です。

なぜこのような線形なのかというと、橋やトンネルをつくるお金が無かったからです。先ほど飯田線は私鉄だったと言いましたが、当時は高度な建造物をつくる資本も技術もなかったので、山や川に差し掛かった際にはそれをグルっと迂回して進むより他はなかったのです。

下り坂からの大カーブ

Ωカーブに差し掛かると列車は90度方向を変え、窓の景色も大きく変わります。右手にあった山が、いつの間にか正面もしくは左手に見えるなんてことが起きるので、鉄道ファンとしてはとても面白い部分です。

連続して現れる坂とカーブ。飯田線はまるでジェットコースターのような線形です!もっとも、コースターほどスピードは出ませんが(笑)。

まだ半分にも達してない

12:19、主要駅の一つである飯田駅に到着。この駅は飯田線特急「伊那路」の起点で、ここから先は特急列車も走行する区間になります。

飯田駅
特急伊那路号

ちなみに、ここが中間点だと思ってはいけません。全行程213.7㎞のうち消費したのはたったの84.4㎞、まだ100㎞すら達していません。この旅の壮大さ(壮絶さ)がよーくわかるでしょう?

まだ半分にも達していませんが、これ以上記事が長くなってしまうと皆さんが疲れてしまうので、今回はここまでにしたいと思います。
本当は中間駅である天竜峡駅までいきたかったのですが、これはもう自分の要約力の無さを恨むより他はございません。

それではまた【後編】でお会いしましょう!!

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