見出し画像

音楽ストリーミングをハックする方法大全【さわり】

世界各国で音楽ストリーミングが音楽産業自体を大幅に回復させている中、日本も2018年、デジタル配信売上645億円に占める音楽ストリーミングの売上比率は54%となり、初めてダウンロード(40%)を抜いた。2018年末からオリコンも自身のチャートにストリーミングを加え、CD、ダウンロード、ストリーミングの各実績を足した総合チャートもスタートした。

斯様に音楽ストリーミングは日本でもその存在感を増している。ここに記したとおり、音楽ストリーミングは楽曲が再生されるたびに一定の対価が発生する。つまり聞かれれば聞かれるほど売上になる。CDのような買切り型とは対照的な構造である。

この再生数=売上を伸ばすために、音楽ストリーミングではどんなことができるのか?その方法を網羅的に記そう、というのが本稿の趣旨である。

AmPm、Animal Hack、KOTARO SAITOと自覚的に音楽ストリーミングサービスをハックすることでその存在感を増しているアーティストも出てきている中、ストリーミングを通じて1人でも多くの優れたアーティストが名を上げていく助けになれば、と思っている。

※本記事は具体的手法を列挙する本番記事のさわりです。
※具体的な手法は次の記事に記しますが、手法を探るうえでの基本的な考えた方を記しています。

1.音楽ストリーミングの売上構成要素

最初に、CDを中心とした音楽ビジネスの売上はどのように作られているのかを考えてみる。売上を構成するモデル式は、 

購入者数 x 1人当たり購入枚数 x 1人当たり単価 になる。

実にシンプルであり、数字をつくるうえで考えるべき変数は3つだ。
1) 購入者数→何人が買ったか?タイアップも含めた宣伝活動で増やす。
2) 1人当たり購入枚数→何枚買ったか?複数種展開など販促活動で増やす。
3) 1人当たり単価→いくら買ったか?高額商品など販促活動で設定する。

例えば、AKBグループやアイドルグループが力点を置いているのは2および3である。ファンの数に拠らず売上をつくるためには、1人当たりのLTV(ライフタイムバリュー)を最大化する必要がある、というわけだ。

上記を踏まえて、音楽ストリーミングの売上モデル式を考えてみると、実はほぼCDの時と変わらず、

楽曲視聴者数 × 1人当たり視聴回数 x 再生単価 になる。

CDのときの式から、購入者が視聴者に、購入枚数が視聴回数に、1人当たり単価が再生単価に対応していると考えてほしい。

ここからストリーミングで売上を伸ばすためにできることを考える上で、まずは上記の式を頭に入れておいてほしい。

その上で、CDのときとの大きな違いをまず記すと、再生単価はアーティストやレーベルにコントロールのできる変数ではない。上にのべたようにCDの場合、商品の売価を変えることで1人当たり単価に影響を与えることができた。しかしストリーミングの再生単価は、胴元であるサービス側の売上(会員数x月額)に大きく依存する。ここにも書いた通りである。

ということで、ここからは、視聴者数を伸ばす方法、1人当たり再生回数を伸ばす方法、のそれぞれについて考えてみようと思う。

2.楽曲視聴者数を伸ばす方法

楽曲やアーティストの視聴者を増やすための活動は、CDの時代から長く続く音楽業界で最も基本の所作だ。スポットCMを出稿したり、CMやドラマにタイアップしたり、歌番組に出演したり、音楽レーベルにはタイアップチームや宣伝チームが組成されており、彼らはこうしたフリーパブリシティ活動を率先して行っている。所謂露出を増やす活動である。

実はこのタイアップ、ストリーミングで改めてその効力が確認されている。

MISIA 「アイノカタチ feat HIDE (GReeeeN)」、あいみょん「今夜このまま」、King Gnu「白日」

これらの楽曲は昨年から今年にかけて、いずれもストリーミングで特大ヒットした楽曲である。

上記ストリーミングチャートで2019/05/06付けを見てもらうと、いずれの楽曲もチャートインしており、MISIAやあいみょんに至っては数十週にわたって入っていることがわかる。これらはすべて、民放で放送された連続ドラマの主題歌として扱われたものだ。

タイアップはCDビジネス全盛の90年代に興隆した手法だったが、CDセールスが低調になるに従いその有効性に疑問符がついていた。近年、タイアップから特大ヒットになった、というニュースはとんと聞かなくなったと思うが、実はストリーミングにその復権の兆しが見えていたのだ。

ではそもそも若者のTV離れが叫ばれるほど民放TVの影響力が低下している中、なぜタイアップはストリーミングに影響を及ぼすのか?

一つにはSNSの存在がある。SNS、特にTwitterでの会話のソースはテレビの内容であることが多いと言われている。テレビ→SNS→ストリーミングサービスという動線が再生に影響を与えている可能性が高い。

ストリーミングは、会員でさえあればアプリを起動するだけで話題になっている楽曲を聴くことができる。その手軽さはタイアップソングのようにわかりやすく話題の種になる楽曲にプラスに働くのだ。

しかし、タイアップを獲得できるようなアーティスト、楽曲は本当に一握りである。大きなレーベルに所属している推されているアーティストでない限り、早々簡単に獲得できるものではない。

次回以降の音楽ストリーミングをハックする方法大全【本編】の記事では、規模の大小に拠らず、実施を検討できる施策に限って列挙していきたい。(続く)


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?