サムケ

夕飯に冷凍した焼きサンマを解凍して食べた。これが驚くほど美味しくない。決してまずいわけではないが、焼き立てのサンマと比べたら天と地ほどの差がある。
もし冷凍焼きサンマの味しか知らなければ、こういうものなのだとそれなりに美味しくいただけただろう。しかし俺は焼き立ての美味さを知っている。塩焼きにした旬のサンマの輝きをもう知っているのだ。
サンマが激安でついつい買いすぎてしまい、このままでは腐らせてしまう状況に追い込まれ冷凍という解決策を思いついたときは天才だと思ったが、まさかこんな事になるなんて。
ここで俺を苦しめる一番の原因は「比較」だろう。冷凍と新鮮の味の比較が無用な争いを生んでいる。そもそもこの二つは全くの別物だと心の底から思えるのなら、上記の通りそれなりに美味しく食べられたのだ。
サンマに限らず、比較は心の毒だ。特に他人との比較は人間をどんどん蝕むらしい。
他人を意識しすぎると心が疲れやすくなり、他人への過度な期待や比較は失望や劣等感につながりやすいという旨のTweetを目にした。アメリカの研究によると、「他人と比較する」ことによってIQが大幅に下がることがわかっているらしい。妬み嫉みに支配された俺のIQはもう一桁だと思う。
幸福感なんて所詮は絶対評価なので、視野を狭くして目の前にあるものを大事にし、当たり前の日常に感謝できるようになれば、それはもう充実した人生だと思う。
しかし理屈ではわかっていても、己の思考を制御することは難しい。薄汚い感情や不安が湧き水のようにこんこんと脳内を満たしていく。まだ発現していない不安を見つめ、意味も理由もなく憂鬱になる。冬の寒さは心にも悪い影響を与える。
やはり異性なんだと思う。結婚して子をもうけ家庭を築く、そういう当たり前の暮らしがあるべきなのだ。それが先人達の見出した最も無難な生き方なんだ。多様性だなんだ言うが、人類が長い歴史で紡いできた様式美を、つい最近誕生した概念で覆していいのか甚だ疑問だ。
独身中年男性が苦しいのは、おじさんになっても結婚できないという異常事態を受け入れる精神が確立されておらず、脳が従来のままだからだと思う。生活スタイル、いや人生の在り方を変えるのであれば、それに伴い心もバージョンアップすべきなのだ。しかしそれはアプリの更新のように簡単にいかない。社会基盤に世の常識、己だけでなく環境の変化も必要だろう。今の時代はまさに変革期だと思うのだが、移り変わりの時代を生きる人間は非常に生きづらい気がする。
とんでもない世界に堕とされてしまった。I am GOD'S CHILD。今日も意味もなく憂鬱だ。

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