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耐震診断の概要をシンプルに説明してみる


「耐震診断」という言葉、いろいろなサイトでも目にすることがあると思います。
「診断」という言葉通り、建物の健康状態を判定することを指します。

建物の診断に取り掛かる前に、調査を行う必要があります。

調査が終わって、必要な情報が揃うと、いよいよ耐震診断を行います。

ここからは少し専門領域に入りますが、眠たくならないよう、かいつまんでご紹介したいと思います。

耐震診断でいったい何がわかるのか

 耐震診断の特徴は、調査で得られた情報を基に、その建物がどれくらいの強さを持っているか、その建物が地震に耐えることが出来るのかを、「数値」で判定してくれることです。

「数値」で判定することで、建物の所有者も、診断をする人も、近所の人も、自治体もみんな、同じ目線で建物を見ることが出来ます。
「強そうだから、多分大丈夫」「うちの建物は大地震を生き残ってきたから大丈夫」という
根拠のない主観や、経験則を許してくれません。

「数値」は謹厳実直なのです。

「数値」といってもいろいろある

ただ、ややこしい事に、この「数値」の呼び方は構造種別(木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造)によって変わります。

 木造の場合は、「上部構造評点」、鉄骨造の場合は、「Is値」と「q値」、鉄筋コンクリート造の場合は「Is値」と呼びます。いろいろあるので混乱しそうです。
ちなみにIs値とはSeismic Index of Structure(耐震指標)の略です。
鉄骨造のIs値と鉄筋コンクリート造のIs値は似て非なるもので、両者とも建物の強さを表しますが、算出の方法が少し違うのです。

 では、「上部構造評点」もしくはIs値はどのくらいの数値であれば「安全」と言えるのでしょうか。

ずばり、数値がいくつなら安全といえるのか

 今のところその答えとして、広く共有されているのが、一般財団法人 日本建築防災協会が示す指標です。それでは、順番に見ていきましょう。

木造(上部構造評点)
1.5以上     …倒壊しない。
1.0以上~1.5未満…一応倒壊しない。
0.7以上~1.0未満…倒壊する可能性がある。
0.7未満     …倒壊する可能性が高い。

鉄骨造(Is値、q値)
Is≧0.6かつq≧1.0   …倒壊、崩壊の危険性が低い
その他         …倒壊、崩壊の危険性がある
Is<0.3またはq<0.5 …倒壊、崩壊の危険性が高い

鉄筋コンクリート造(Is値)
Is≧Iso        …安全
Is≦Iso        …疑問あり

???
倒壊しないの? 一応って!
危険性が低いって、安全なの?
疑問ありって、どういうこと?

 みなさん、いろいろ突っ込みを入れられたと思います。

これは地震→法律改正を何度も繰り返してきた経緯からも、100%安全ですとは言えないのです。(これは新築の建物も同じですが・・・。)

そして、ここでまた新しい言葉が出てきました。鉄筋コンクリート造のIsoです。
これは、構造耐震判定指標と呼ばれるもので、建設地であったり、建物の用途によって決まる値です。
一般的には第1次診断で0.8、第2次診断、第3次診断で0.6とされています。

あ、またここで新しい言葉が出てきました。
第○次診断です。

耐震診断にもグレードがある?!

 実は建物の診断方法には、グレードに応じてメニューが用意されています。

体の健康状態が気になった時も「ちょっと心配だから看てもらおうか」というものから、
「あなたは重病の恐れがありますので、精密検査を受けてください」というものまで、幅広く診断項目がありますね。それと同じです。

診断のグレードを上げると、調査すべき項目も当然増えてきます。
そうなると、費用も同様にかさみます。
ですがその分、より一層詳しい診断ができるのです。

 過剰な検査や調査は必要ないと思いますが、少しでも重病の可能性がある場合は、
グレードを上げて診断することをお勧めします。

それでは、構造種別ごとに簡単にどのような診断メニューがあるかご紹介しておきます。

●木造の場合

Ⅰ.「誰でもできる我が家の耐震診断」
なんと木造建築の場合、詳しい知識がなくても、簡易に診断をすることもできます。日本建築防災協会のウェブサイトに概要が記載されています。


「住宅の所有者等が、自ら診断することにより、耐震に関する意識の向上・耐震知識の習得ができるように配慮されており、技術者によるより専門的な診断へ繋げられるように作成されています。」(日本建築防災協会ページより引用)

Ⅱ.一般診断法
 調査を行って、耐震診断を行いますが、時に調査には壁をはがしたり、天井をはがしたりする必要があります。
そのような大掛かりな調査をせず、目視や打診、図面上から情報を読み取り、耐震診断をする方法です。


Ⅲ.精密診断法
 一般診断法よりもさらに詳細な調査を行い、診断を行う方法です。
詳細な調査を行うことで、一般診断法では無視していた耐震要素を考慮したりと、より厳密に診断を行うことが可能です。

●鉄骨造の場合


Ⅰ.一般診断法
 木造と異なり、鉄骨造の場合は、診断方法に関わらず詳細な調査を必要とします。
高層ビルや特殊な形状の建物(ドーム等)以外はこの診断法で診断します。

Ⅱ.精密診断法
一般診断法で、「倒壊、崩壊の危険性が高い」と判断された場合や高層ビル等、一般診断法で診断できない建物を診断します。
すごく難しい計算を行います。

●鉄筋コンクリート造の場合

Ⅰ.第1次診断
特に大がかりな調査を必要としない診断方法です。診断に必要な図面があれば、診断を行うことが可能です。
ですが、診断方法の性質上、1次診断で耐震性に「疑問あり」と判断された場合は、2次診断、3次診断が必要となる可能性が非常に高いです。
調査項目が少ないため、耐震要素として、目に見える壁と柱しか考慮していません。

Ⅱ.2次診断
 大がかりな調査を必要とする診断方法です。
1次診断よりも詳細な診断を行うため、1次診断では、検討できない補強方法などを採用して検討することが可能です。
耐震要素としては壁と柱しか考慮しませんが、さらに詳細な計算を加えて、より精密な診断を行います。

Ⅲ.第3次診断
 2次診断よりも詳細な計算を行います。
「詳細な計算」とは簡単に言うと、建物の耐震要素を総動員して、さらにそれぞれの耐震要素がどのように結びついているかも考慮して、検討します。
ただ、気を付けなければいけないのは、建物の形状や構成によって、2次診断よりも悪い結果となる可能性があるという事です。

と、このように、建物の種別が多種多様にある事を受けて、診断の方法についても多種多様に存在しています。

耐震診断となれば、その費用も気にかかることかと思います。

いったいどのような手間とお金がかかるものなのか、ヒントになればうれしいです。

読んでくださって、ありがとうございます。 感謝感激です。