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”強い“とはなんだ?災害に耐える建築物の作り方

大阪北部地震、西日本豪雨、そしてつい先日の台風被害。

今夏は災害が続き、日本各地で多くの被害が起こっています。

”二次部材”と呼ばれる箇所の損傷も多い

 二次部材とは、地震や風に対して耐えるメインの部材ではなく、屋根ふき材や、外装材、天井仕上げ材などのことを指します。(ちなみに、非構造部材なんて呼び方もします)

豪雨や台風などの場合は、建物の柱や梁だけではなく、二次部材である屋根ふき材の剥がれや外壁の剥がれなども発生し、剥落による危険性もあります。

こういった被害を防ぐために、建築設計の上では部材一種類ずつ、「もしこんな力が加わったら…」という想定の下に、計算を行う必要があります。

そして「危険かも」と判断した場合は、その補強を行うことになります。

屋根ふき材であれば、より強固に取付けるであったり、劣化が進んでいれば、新しいものに取り換えるなど、いろいろな方法がありえそうです。

建物本体の補強はどうすれば良いのか?

 では、細かい部分だけではなく、建物本体の補強はどのようにすればよいのでしょうか。

これを知るには、まず先に建物が地震・風からどのように耐えているのかを知っておく必要があります。建物には大きく分けて「強度型」と「靭性型」の二種類がありました。(以前ご説明した記事があるので、よろしければご覧ください)耐震改修のやり方も、おおむねこの二種類です

 上記の記事にも書きましたが、建物は構造上、串団子モデルとよばれるもので表現されることがあります。

 屋根や部屋の重量を表すのがお団子にあたる部分で、柱などに加わる力は串にあたる部分が負担するとみることができます。

この串団子モデルを用いることで複雑な構造計算を、エッセンスに抽出してとらえることができます

では、建物における“強い”とはいったい何なのか、補強の手立てと合わせてまとめていきましょう。

「強度型」(強度抵抗型補強)

 地震に耐える為の要素(=耐震要素)を高い性能のモノと交換する、または、追加する補強方法です。

例えば、木造住宅では、外壁や内壁を剥がして既存の構造用合板や筋交いを撤去し、高い性能を持ったパネルなどに交換します。
また、耐震用の壁では無かった間仕切壁などに、新たにパネルや鉄筋の筋交いを追加したりします。

他にもお近くの小学校などの校舎で、窓面に大きな斜材が取付けられているのを目にされた方はおられるのではないでしょうか。
これはまさしく「強度型」の補強です。
「靭性型」である鉄筋コンクリート造の建物に、「強度型」の筋交いを追加することで、短所を補っているのです。

串団子で言うと、しなやかな串に太い串を追加して、2本にする工事ですね。

「靭性型」(靭性抵抗型補強)

 粘り強い性質を持った鉄筋や鉄板などを用い、しなやかさを向上させる補強方法です。

例)鉄筋コンクリートの柱に薄い鉄板を巻き、隙間にコンクリートを流し込む方法があります。
また、同じように鉄骨の柱・梁の側面に鉄板を溶接して、厚みを厚くする方法があります。

串団子で言うと、強くてしなやかな串の周りを薄い鉄で巻いて、少し太くする工事ですね。

「その他」

 直接的には強度や靭性を向上させませんが、壊れやすい部材を壊れにくくしたり、
地震の力を小さくするための補強方法です。

例)鉄筋コンクリート造の建物で、腰高さの窓が柱際にあると、柱はそのしなやかさを発揮できずに壊れることがあります。
これは、窓の上下にある壁(垂れ壁と腰壁)が、しなやかに動こうとする柱を邪魔するためです。
そこで、柱際の壁に柱が動ける隙間(スリット)をつくってあげる方法があります。

例)古い木造住宅では、屋根に瓦を載せていたり、外壁を塗り壁にしている建物が多いかと思います。
この重たい瓦や外壁をセメント板(カラーベストやサイディング)などの軽い材料にリフォームしてあげることも立派な耐震補強なのです。

串団子で言うと、串はそのままで団子を小さくすることで、揺れを小さくしてあげる工事ですね。

耐震改修は状況に応じていろいろな手法がある

 耐震改修の現場では、長所を伸ばしたり、短所を補ったり、または、長所を伸ばしつつ短所を補ったり、妨げとなるモノを取り除いたり、いろいろと手を施します。

まるで、子育てのようですね。

同じ材料で建てられた建物でも、それぞれに個性があり、地震への抵抗の方法も全て同じというわけではありません。
その個性を理解(診断)し、長所を伸ばすのか、短所を補うのか、またはその両方なのかと、いろいろと手の掛かる子なのです。


読んでくださって、ありがとうございます。 感謝感激です。