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リーダーは「ストリートスマート」に 〜 『アムンセンとスコット』

リーダーシップに関する本をいくつかご紹介したいと思います。
まず第1回目は、『アムンセンとスコット―南極点への到達にかける』(本多勝一著)です。

この本は1986年に出版されました。人類初の南極点到達を目指した2人の偉大な冒険家(アムンセンとスコット)に関するノンフィクションです。同時期に南極に向かった二人の冒険レースの行末がどうなるか、とても興味深く記述されています。

また、2人のリーダーシップの違いという視点から読むと、企業におけるリーダーの在り方についても大きなヒントになります。

著者の本多勝一氏は、元朝日新聞の記者で、現在は雑誌『週刊金曜日』の編集委員を務めています。本作品の他、『日本語の作文技術』『中国の旅』『アメリカ合州国』などで知られています。

さて、アムンセン(ノルウェー人)とスコット(イギリス人)は、1912年にそれぞれ南極点到達を目指します。しかしながら、その結果は明暗がくっきりと分かれてしまいます。

アムンセン隊は、人類初の南極点到達に成功し、隊員全員が無事に帰国を果たします。かたやスコット隊は、アムンセン隊に遅れをとりながらも、南極点に到達するものの、帰途に全員が死亡するという悲劇的結末を迎えます。

著者はこの2人の冒険家の生い立ちや性格、冒険に対する熱望、移動手段や道中の細かな行動などを克明に記述しています。そして明暗が分かれた原因を、鋭く考察しています。

まず、スコット隊がこのレースに破れた大きな原因は、南極の移動手段を馬に托したことでした。スコット隊は、馬19頭と犬33匹をつれていきました。これはイギリスの冒険家の伝統を重んじた結果です。かたや、アムンセン隊は、犬のみ116匹をつれていき、移動手段は犬ゾリのみでした。

極寒の極地においては、馬は役に立たず、全頭が死んでしまいます。アムンセン隊が犬ぞりで、南極点までたどり着いたのに対して、スコット隊は、途中から人力で荷車を引くことになります。

この他にも、食料デボを置く際の目印の付け方、壊血病に対する対策、隊の人選などあらゆる箇所で、アムンセンはスコットよりも抜きん出ていたことが分かります。

このことから、アムンセンが「ストリートスマート」であるのに対して、スコットは「ブックスマート」だったといえるかと思います。

「ストリートスマート」とは、実体験を通して世の中を学び、臨機応変に問題解決ができる人のことを指します。これに対して、「ブックスマート」とは、本から学んだ知識はあるけれども、現場ではあまり役に立たない人のことをいいます。

伝統や常識に縛られ、本当に大切なことを見失ってしまう軍人気質のスコットに対して、アムンセンはより現実的でしたたかな冒険家だったと言えます。

スコット隊がアムンセンの船へ訪問した際、アムンセンは、116匹いる犬の半数をイギリス隊に提供してもよいと申し出ます。ところが、スコット隊は、これを断ってしまいます。アムンセン隊へのライバル心とプライドが受け入れを許さなかったのでしょう。この時点で勝敗は決まったようなものでした。

ゴーグル・長靴・寝袋などを改良に改良を重ねたアムンセンは、極地での問題解決にすぐれていたといえます。また、愛犬家であるアムンセンが、自分たちを運んでくれた犬を帰途の食料として計算していた戦略に驚かされます。

リーダーであるあなたは、この本からストリートスマートな生き方を学びましょう!


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