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愛は会社を救う 〜 中央タクシーの神対応 その②

中央タクシーの誠実さを示す逸話として、1998年の長野オリンピックでの対応があります。

オリンピックは国内外から多くの関係者が集まるため、長野市のタクシー業界にとっては、まさに特需です。中央タクシーもその恩恵を受けるはずでした。ところが、ドライバーの一人から、「毎日病院へ通っているおばあちゃんやおじいちゃんの対応はどうしたらよいか?」との疑問の声が上がったのです。

そこで、中央タクシーでは、この特需に乗るべきか、いつもの顧客を優先するかで、話し合いが始まりました。すると運転手たちは口々に「いつものお客様のところへいきましょう」と言ったのです。それを聞いた社長は、顧客優先を決断します。

結果、オリンピック期間中の売上は、中央タクシーが最下位となりました。しかし、その期間は、それまで中央タクシーを利用していなかった長野市民にその良さ知ってもらう絶好の機会となったのです。

そして、オリンピックが終わった後は、競合タクシー会社の売上は激減し、再び中央タクシーがトップになったのです。結果的には、目先の利益にとらわれなかった中央タクシーは、お客さんからの信頼をこれまで以上に得ることとなりました。

それでは、なぜ、中央タクシーの社員(ドライバー)は、利益を度外視してまで顧客を優先する行動をとれるのでしょうか? その答えは、社員が経営理念を忠実に守っているからなのです。

中央タクシーの経営理念は、「お客様が先、利益は後」です。後はマニュアルがなく、乗務員に義務付けられているのは、「乗務時の自己紹介」「人手によるドアの開け閉め」「雨の日の傘」の3つだけです。それ以外のサービスは、経営理念に基づき社員が自主的に行動した結果なのです。

この経営理念が社員一人ひとりに深く浸透しているからこそ、伝説の神対応が生み出されるといえます。そして、乗務員が乗客へ最大限の「愛」を与えることにより、この会社は「愛される会社」となっているのです。顧客を愛し、顧客からも愛される状況が生まれているのです。

愛される会社になるためには、社会への貢献度を高めることが必要です。ですから、ほとんどの会社が、社会への貢献を「経営理念」に掲げています。ただし残念なことに、その経営理念が社員に浸透していない会社がほとんどなのではないでしょうか?

あなたの会社の経営理念は社員に浸透しているかどうか、今一度考えてください。そして、「愛しあってるかい?」の問いかけには、「イエーイ!」とコール&レスポンスができるようにお願いしますね。

なお、中央タクシーの創業から今に至る紆余曲折は、以下の書籍に詳しく書かれてあります。また、今回紹介させていただきました神対応エピソードは、この本を参考とさせていただきました。

『ダントツ企業「超高収益」を生む、7つの物語』宮永博史著 (NYK出版新書)


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