怪談『定点カメラ』

「夜中に突然目が覚めて、そっから眠れなくなることがあるんですけど」

保険の事務をやっている名坂さんは言った。

「そういう時につい、枕元にあるスマフォを見ちゃうんですよね。余計眠れなくなるってことはわかってるのに」

名坂さんは、スマフォを操作して、呟きサイトやアプリのゲームをすることが多いのだという。

「でもその時はちょうど、夏の終わりに沖縄に行った後で」

ふと、夏に友だちと行った旅行先の思い出を思い出した。

「その時に行った岬に、定点カメラがあるって知ってたんで、ふと見てみようと思ったんですね」

夜中の岬に設置されてる定点カメラなんて見ても、何も映るはずはない、とわかってはいながらも、名坂さんはスマフォを駆使してその定点カメラが設置されているサイトにアクセスした。

「案の定、真っ暗で何も写っていませんでした」

ただ、おかしなことになっていたという。

「台風なんてきてる情報はないのに、カメラの向こうの風景が、暴風雨っぽかったんですよ」

スマフォの画面には、暗い中、細かな白い雨粒がひっきりなしに横合いにレンズに打ち付けられる風景が写っていたという。

「真っ暗な中、報道されてないだけで、沖縄は今台風なのかなあ、と思いながら、真っ暗な画面を寝床で眺めていました」

そのうちまた眠くなるだろう、と名坂さんは思っていた。

「定点カメラのレンズに、どんどん雨粒がこう……増えていくのをぼーっと見てたんです」

そのときであった。

「レンズにたまりつつあった雨粒が、一気に横合いから拭き取られて」

しかもそれは、白い指の腹が拭き取っていったのだという。

「え? こんな夜中に、誰か作業してるの? と思って吃驚しました」

カメラの向こうに台風かなんかがきてるので、作業員が仕事に来たのでは、と思ったらしい。

「次の瞬間、毛のない子供の顔のアップがいきなりカメラの前に現れて、じっとこっちを見たんです」

毛のない子供ってなんですか。

「わかんないですよ。とにかくこう、髪の毛も、眉毛も、睫毛もないんです。ツルンとした顔の子供が、じっとこっちを見つめていて」

カメラには照明機材がついていたのか、と、その真っ白な子供の顔を見て、初めて名坂さんは気づいたという。

「とにかくもう、いきなりそんな毛のない子供の顔がアップで現れたので、吃驚しちゃって、スマフォを消しました」

どうしてそんな一瞬で、子供ってわかったんですか。

「正確には、子供かどうかもわかんないです。今思えば……女性だったのかもしれません。とにかく、驚きました」

後日、名坂さんが見ていた岬の定点カメラのことを調べると、沖縄戦の時に、学徒兵が火炎放射器で燃やし殺された場所だとわかった。

夜中に沖縄の定点カメラを見る時は注意しなければね。

※登場する人物名は、全て仮名です。

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竹内佑

お芝居やライトノベルやらを書いています。 http://www.amazon.co.jp/-/e/B00J5QJI8A 欲しい物リスト→http://amzn.asia/fleoNuZ

厭な話

小説。
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