怪談『後方確認』

私が、新居に越してしばらくして気づいたのは、帰り道に使用する新居までの直線の道が、殺人現場であることであった。

五年以上前のことだが、その町のその道で、女子大生が帰宅途中、コンビニで弁当を買った帰り道、背後から追ってきた不良学生に腰を刺され、財布を奪われ、血塗れの状態で我が家にたどり着くも、玄関先で絶命したという事件であった。

彼女は、追いかけられてから刺され、家に辿り着くまで、全力で走って逃げたのだという。
その時間、どれほどの恐怖を感じたであろう。

コンビニの防犯カメラに被害者を追って走る不良学生の姿がバッチリ撮影されており、犯人は捕まったのだが、かつての、住みたい街ナンバーワンに光り輝いた栄光は陰りをみせることとなった。

その事件があった道が、これなのだ。と気づいて以来、帰路の途中、時折、背後から何者かが、はっ、はっ、という息使いで、走って来ることに気がつく。

だがそれは、ある程度道を進めば、いなくなってしまう。

私が気になったのでネットで調べると、丁度事件のあったあたりの道で、はっ、はっ、という息づかいの追走者が現れることがわかった。

だがそれは、しばらくは、はっ、はっ、と、自分の後ろを息荒く走っているのだが、何度めかの曲がり角をすぎると、いなくなってしまうのだった。

ちょうど、事件の被害者の女子大生の家がある曲がり角で、その息づかいはなくなるのだった。

そのことに私が気づいてからというもの、帰り道に背後から何者かがはっ、はっ、と走って着いて来ていても、気にすることはなくなった。

しばらくすれば、幾つかの曲がり角のの後、その息づかいはなくなるのだ。

そう考えて気にはしていなかったのだが、この間、ここが被害者の女子大生の家のあった場所だ、という曲がり角を過ぎてからも、はっ、はっ、という息づかいはやまなかった。

しばらくすると消えたが。

それから数日経った。

その後、何度かその道を通って帰ったが、だんだんとはっ、はっ、という息づかいは、あの曲がり角を超えても、ずっと背後から聞こえるようになった。はっ、はっ、

ひょっとすると。

ひょっとすると、はっ、はっ、という息づかいが聴こえる、ということに私が気づいてしまったが故に、憑いてきているのかもしれない。はっ、はっ、

まさか、そんな、と思いながら、今日も無事に帰宅して、こうやってパソコンに向かっているが、はっ、はっ、今もまだ、はっ、はっ、背後からの、はっ、はっ、という息づかいがやまない。

振り返れない。



はっ、はっ、


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竹内佑

お芝居やライトノベルやらを書いています。 http://www.amazon.co.jp/-/e/B00J5QJI8A 欲しい物リスト→http://amzn.asia/fleoNuZ

厭な話

小説。
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