『ミステリーホームズ』制作ノート ディベロップ編

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こんにちは。
Studio GGのShunです。

今回は前回の続き、『ミステリーホームズ』の制作ノートのディベロップ編を公開したいと思います。

前回の記事はこちら

→『ミステリーホームズ』制作ノート デザイン編


「演繹法的推理」の実現

『ミステリーホームズ』の推理が何故「ジジ抜き」的なシステムのゲームよりも本当に事件の推理をしている感じがするのか、
それは『ミステリーホームズ』が意図的に「演繹法的推理」を実現しようとしていることに起因していると思います。

「演繹法的推理」とは私の造語ですが、いわゆる「消去法的推理」に相対する推理方法を指してそう呼んでいます。

「消去法的推理」では、Aという情報が得られたとき、「Aでない」ということが推理でき、その情報をたくさん集めることで、真相を推理することになります。

それに対し、「演繹法的推理」では、Aという情報が得られたとき、「AならばBまたはC」等というルールを基に真相は「BまたはC」という推理することになります。
これにより、例えば、「血痕」が見つかったので、使われた「凶器」は「ナイフ」「毒ナイフ」「槍」のいずれかである、といったような推理が出来るようになるわけです。
この推理は「消去法的推理」よりも本当に推理している感じがすると思います。

しかし、ゲームの根幹が論理パズルである以上、可能性は有限なので、実際には「消去法的推理」になってしまいます。
にも関わらず、「演繹法的推理」であると感じさせるためには、
非常に多くの真相の可能性を用意し、「証拠品」から選択肢が大幅に絞れる明示的なルールを導入することが必要です。

『ミステリーホームズ』のディベロップではまず、これを意識した調整が行われました。


「ジジ抜き」の完全な排除

前回の記事のとおり、「トリックカード」を導入したことで、ゲームの方向性は決定しました。

しかし、まだ「凶器」は「ジジ抜き」をベースしたシステムを用いていました。

「トリックカード」を導入したことで、「ジジ抜き」の比重は下がったものの、やはり「ジジ抜き」のシステムを用いていることは、実際の事件の推理とは乖離があり、没入感を損ねます。

そこで、「凶器」も「トリックカード」同様、特殊効果を持つ「凶器カード」に変更しました。

凶器カード

これにともない、「凶器」も7種類に変更し、必ず全ての「凶器」が各部屋に置かれるルールとなりました。

また、各「凶器カード」の効果では、上記した「演繹法的推理」を実現するために、
・「ナイフ」や「槍」は「血痕」
・「拳銃」や「ライフル」は「銃弾」
・「毒紅茶」は「毒薬」
というように、それぞれ「証拠品」を生むようにしています。

この「凶器カード」を導入したことにより、「演繹法的推理」を行っている感覚を実現することができ、ゲームのシステムとしてはほぼ完成と言える状態になりました。


サプライズの面白さ

一時期、Twitterなどで「人狼」ゲームの面白さの実態は何なのか、という話がありました。

そこで、挙げられていたのが「サプライズの面白さ」です。

「人狼」では、人の発言を基に推理を組み立てますが、本来、人の発言は何を言うのも自由であるため、正しい情報であるという保証は全くありません。
しかし、「人狼」では情報が不足している状態で推理をしなくてはならないため、この人の発言は正しそうだ、等のある程度の決めつけを基に推理することになります。
ここで、自分が「真実」であると仮定した情報が「真相」により「嘘」であると明かされたとき、サプライズが発生するわけです。

『ミステリーホームズ』でもこの「サプライズの面白さ」を意識したゲームの調整を行いました。

具体的には、
・「犯人」プレイヤーが嘘をつける余地を残す
・「証拠品」により、真相が確定しにくくする

ということを意識しています。

『ミステリーホームズ』では、探索により集めた「証拠品」を基に真相を三〜五択程度に絞り、その後は、プレイヤーの言動などからある程度の決めつけをして推理させるようにしています。
これにより、推理結果に対する「サプライズの面白さ」を実現しています。


パズルではなくゲームを作る

『ミステリーホームズ』の手番進行は初期プロトタイプの時点から大きな変化はありません。

ゲームのテーマから
・制限時間以内に証拠を見つけて推理する
・複数人で協力して部屋を探索する
となっていましたので、
・使える時間をタイムトラックで表現、探索行動や推理により、時間を消費する
・各部屋を手分けして探す事が効率よくなるよう、移動に時間コストをつける

というところまでストレートに決まっていたためです。

しかし、その制限時間の設定や各行動に必要な時間コストに関しては調整が必要でした。

当初は最終版と比較して、制限時間が長めに設定されていました。
そのため、ゲーム終了時には、ほぼ全てのタイルを取り切って推理するのみとなってしまうことが多かったのです。

しかし、もし、タイルが全部引けてしまうのであれば、それはタイルが全て捲られた状態から事件の真相をするパズルでしかなく、証拠品を集める工程は全く必要がない、ということになってしまいます。

これでは、せっかく証拠品を手分けして集めている意味がなくなってしまうため、
「トリックカード」や「凶器カード」は「死体」のある部屋や、「犯人」の「アリバイ」の部屋、その隣接する部屋に証拠を残すようにし、各部屋の重要度に差がつくようにしました。

これにより、どの部屋を、誰が捜索するのか、の部分の選択に戦略性が生まれ、パズルではなく、ゲームになったと言えます。

また、これによりどの部屋を誰が捜索するかという議論自体が、「一般人」と「犯人」のバトルになったとも言えますね。


スマホアプリの導入

アプリ

当初、いわゆる「夜の時間」のセットアップは「一般人」が目を瞑っている間に、「犯人」がセットアップした後、短めのタイマーをスタートさせる、という形で行っていましたが、
・手順が長いので、サマリーを見ながらでもセットアップが大変
・無音なのもあり、目を瞑っているプレイヤーが暇い
という問題がありました。

ゲームマスターを立てれば、解決する問題かもしれませんが、必ずしも1人余分にメンバーを集めれるとは限りません。

そこで、スマホアプリを作成し、それにBGMの再生と、手順の支持をさせるようにしました。

BGMにより「犯人」の立てる音が聞こえにくくなる、手順の支持により「犯人」は手順を間違えにくくなり、目を瞑っている「一般人」も進捗がわかることにより体感時間が減る、等の効果が期待されました。

実際、アプリを導入したことで、セットアップのしやすさは向上し、待ち時間の負担は軽減しました。

アプリを作ることに決めたのは割と入稿時期近くだったため、ちょっと慌ただしかったですが、作って良かったと思います。


終わりに

以上が、『ミステリーホームズ』の制作ノートになります。

『ミステリーホームズ』はこれまでの「Studio GG」のゲームに比べると、「犯人」のセットアップが大変である等、欠点があるゲームではあるのですが、
それを補ってあまりある面白さと新規性があると考え、出版することに決めました。

実際、セットアップ等で躓いてしまう方もいたものの、多くの方から非常に高い評価をいただいており、作って良かったと思っています。

これを読んでいて『ミステリーホームズ』をプレイされていない方がいましたら、ぜひ一度プレイしていただければと思います。

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Shun@Studio GG

ボードゲームデザイナー。 「Studio GG」のゲームデザイン担当。 noteでは主に作ったゲームの制作ノートやゲームデザインに関するコラムを投稿していきたいと思っています。

Studio GGのボードゲーム制作ノート

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