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VRの撮影について

お久しぶりです。
配信スタジオKのスタッフkazuです。
本日は配信とは少し違うお話をさせてください。

私は前職でVR撮影を担当しておりましたのでそちらについて
簡単にお話をさせていただければと思います。



①VRの撮影方法


VRには大きく分けて2つの撮影方法があります。
①全天球360°
②ステレオ180°立体視

①全天球360°
水平方向・上下方向ともに360°を撮影
多くは前と後ろに1つずつレンズが搭載され、前側と後ろ側で撮影した2つの映像を繋ぎ合わせて1つの映像として見せる。

空から地面まで全てが映る全天球360°撮影画像

②ステレオ180°立体視
前方の水平・上下180°が撮影可能
カメラの前方に水平に2つのレンズが搭載され、左右のレンズの視差によって被写体が立体的に見えるようになる。簡単に言うと人間の目と同じ構造。

ステレオ180°立体視の例  Canon EOS VR SYSTEM サイトより

②使用機材

360°の撮影でよく使っていたのは、KANDAO社のQooCAM8KというカメラやInsta360社のTITAN(タイタン)というボールのような筐体に水平にぐるりと8枚のレンズがついていて、11Kで撮影ができるカメラ。

KANDAO社 QooCAM8K
Insta360 TITAN

180°撮影で使っていたのはCanon社のEOS R5CにDual Fish Eyeレンズを付けて二眼立体視撮影ができるカメラでした。

Canon EOS R5CにDual Fish Eyeレンズを装着したEOS VR SYSTEM

③被写体によって使い分け


各々のカメラは下記のような使い方で分けていました。

・360°カメラ
広大な風景や、雄大な自然、工場内の作業風景など見た人があたかもその場所にいるような体験ができる被写体(観光地や工場作業風景などが被写体)

上下左右360°に景色が映り自分がそこにいるような疑似体験ができる


・ステレオ180°立体視カメラ
目の前の人や物が立体的に感じられるシチュエーション、舞台演や朗読劇、番宣用コメント、MVなど(タレントやアイドル・声優などが被写体)

二眼の視差により人物が飛び出して見えるのが特徴

上記を基本にしてクライアントの要望によりカメラを使い分けていました。

④撮影方法について(全天球360°)


上記を踏まえて、今回は全天球360°撮影方法についてのお話です。
通常カメラマンはカメラのそばに立ち、ズームやフォーカスの調整、明るさや暗さ色などの設定をしていきますが360°撮影の場合は話が違います。

前述した通り、水平方向・上下方向ともに360°を映すためカメラマンなのにカメラの傍に立てないのです。

設定済みのカメラを置いてスタッフは見えない所まで逃げます。

そのため事前に入念に設定し、後はカメラにお任せ。
これが普通のカメラと違う所です。
下は当スタジオを360°カメラで撮影した動画です。
ドラッグして隅々までご覧ください。
暗闇の中で私が隠れていますw

撮影中はタブレットなどを使い無線でモニタリングをすることもありますが、録画を開始してしまうと途中で設定を変えることはできません。

撮影途中で太陽が雲に隠れて光の加減が変わることや、撮影場所を通る人が『何だこれは?』という感じでカメラをのぞき込んでくることもあります。そんな時はまた撮り直しです。


また先述したInsta360社のTITANというカメラがかなり大変です。
このカメラは8枚のレンズで360°を11Kというとんでもない高画質で美しい風景を余すところなく高精細に撮影できる超スグレモノのカメラです。
私が撮影していたときは360°カメラでTITANよりもきれいに撮影できるカメラはほかにありませんでした。

TITANを上から見た図 200°の視野角があるレンズを8枚搭載

しかしこのカメラレンズ1つにつきSDカード1枚が必要になるため8枚のSDカード+プレビューファイル保存用にもう1枚の合計9枚のSDカードが必要です。


さらに!
高画質なためデータ量が多く、ビデオスピードクラス(ビデオ撮影時のデータ転送速度)がV30(30MB/秒)以上の処理ができるSDカードが推奨されています。

さらにさらに!
9枚中1枚でも不具合が発生するとすべてのカードの録画が停止してしまう仕様なのです。
しかも、8枚のレンズが同時駆動し、9枚のSDカードに書き込みを行うためとんでもない熱が発生し、この熱が原因で熱暴走することもあります。
そのため、1つのカメラにつき2セット18枚のSDカードを準備し、暴走した時の為に筐体自体のバックアップも準備していたので機材量も増えました。

一度このTITANを3台同時に2時間連続で撮影という案件があった時は
撮影スタッフ全員が半泣きでセッティングし『止まるなよ~止まるなよ~』と祈っていました。

3台並ぶと壮観ですが・・・


その時は何事もなく撮影が完了し皆で胸をなでおろした覚えがあります。

このように高精細な反面、扱いが非常に難しい手のかかるカメラでした。

そこで私が好んで使っていたのはKANDAO社製のQooCAM8Kという360°カメラです。
筐体は筆箱ぐらいの大きさで8Kの高画質で撮影ができ、暴走もほとんどなくあまり手のかからないカメラでした。
ただこのカメラは既に廃版になってしまっています。
上位機種にQooCAM8KEnterpriseというライブ配信もできる筐体があるのでいま手に入れるのであればこちらになります。

360°のライブ配信も可能!

今回はここまでにして次回は実際の撮影方法などをお話したいと思います。