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第十九話 青色申告

さて、納税者が自ら所得税額を計算して納税する”確定申告”、前回はおおまかな流れをお話ししましたが、心の準備はできましたか?

申告するために、収入や必要経費などの状況を帳簿に記帳して、書類を保存しておくことが必要なのですが、一定水準の記帳をして正く申告をする人については有利な計算がすることが許される制度があります。それが「青色申告」なのです。

申告書には「白色申告」「青色申告」があります。届出をして、ある条件を満たせば青色申告をすることができるのですが、青色申告をすれば節税につながる効果の特典が得られます。どんな条件で、どんな特典なのでしょうか。

青色申告できる人

所得には10種類あると以前の記事でお話ししましたが、そのうちの「不動産所得」「事業所得」「山林所得」のある人が青色申告をすることができます。
不動産所得とは、土地の賃貸料、アパートやマンションの家賃収入など。不動産の売却した時の収入は不動産所得ではなく、「譲渡所得」となります。
事業所得とは、農業、漁業、小売業、サービス業などの事業の所得です。
山林所得とは、山林を売却することによって生じる所得のことです。

青色申告をする人は、「青色申告承認申請書」を所轄の税務署に提出しなければいけません。青色申告をするその年の3月15日までに提出します。また、新たに新規開業をした場合は、業務開始した日から2ヶ月以内に提出します。

青色申告をやめる場合は、取りやめようとする年の翌年3月15日までに「所得税青色申告の取りやめ届出書」を提出します。

青色申告の特典

青色申告にすることで、所得から一定金額を差し引いて税負担を軽減させる「控除」が受けられます。どんな控除があるのか見てみましょう。

①「青色申告特別控除」
一定の要件を満たせば最高65万円の控除になります。一つは「複式簿記」で帳簿を記帳していること。これは、正規の簿記に基づいて記帳する方法で、「損益計算書」「貸借対照表」など、聞いたことはありますか?それらを含めて決算書を作成することになります。「ナンジャそりゃ!?」という方も大丈夫です。会計ソフトで項目を埋めていけば作成できるようになっていますし、税理士さんに相談することもできます。

もう一つの要件は、「電子帳簿」で申告する人です。前回の「電子帳簿保存法」でお話ししましたが、DX化を促すために税制優遇しています。e-Taxもやらない、電子帳簿もやらない人は10万円の差をつけて、55万円の控除になります。

「単式簿記」といって、お金の出入りだけを記帳した、家計簿のような簡易簿記の場合は、10万円の控除になります。より節税効果を高めるには、複式簿記で帳簿を作成して、電子申告をすることを目指した方が良いのです。

なお、青色申告の帳簿は、7年間保存する必要があります。

②「青色事業専従者給与」
配偶者や15歳以上の家族、親族に支払った給与を必要経費として算入することができます。例えば配偶者に月20万円の給与を出すと、年間240万円全額を経費に計上できます。これは大きいです。白色申告の場合は経費としては認められないが、一定金額の控除があります。配偶者86万円、その他15歳以上の家族50万円です。

ただし、その事業にきちんと従事して、対価として適正な金額でないといけません。「青色事業専従者給与に関する届出書」をやはり3月15日までに提出するのですが、そこに記載した金額の範囲内で支払われなくてはいけません。

また、専従者給与を受け取った人は配偶者控除は受け取れず、扶養者でもなくなりますので、注意が必要です。ただ、私がなんとなく個人的に感じているのですが、配偶者控除は将来的になくなる方向に動いているのではないかと思っています。

③「所得税の繰戻し還付と繰越控除」
事業をしていれば、利益が出ることも赤字となることもあるでしょう。赤字であれば税金がかからないとはいえ、資金繰りが厳しくなる年があるかもしれません。その上、資金が乏しくなったにも関わらず翌年に黒字回復したらそのまま税金がかかってきて、厳しいままになってしまいます。

そこで、赤字を申告すると過去に支払った所得税の還付を受けることができる「繰戻し還付」という制度があります。つまり、過去の損益と相殺できるということです。同様に「繰越控除」は、今年の赤字を翌年以降に繰り越して将来の黒字と相殺できる制度です。これを利用できるのは、青色申告事業者だけです。

いかがですか?白色申告と青色申告の大きな違いは、帳簿の付け方による特別控除、家族への専従者給与です。その他、経費の減価償却の特例など、細かくはもう少しありますが、経費のお話はまた別の回にしたいと思います。

いくら青色申告の届出をしていても、申告期日を守らなかったら65万円の控除が10万円にまで下げられてしまったり、専従者給与の事前届出を出さなかったら全額否認、パートとの掛け持ちも全額否認です。注意しましょう。

では次回、経費のお話をお楽しみに。



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