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第二十六話 住宅ローン④団信と繰上げ返済

住宅ローン完済という途方もない長い道のりを考えると、”早く返してスッキリしたい””利息の負担をなるべく無くしたい”と考えますよね。住宅ローンの返済中に、例えばボーナスや退職金などのまとまったお金が入ってきたら、ローン元金の残り全てや一部を返してしまうことができます。

繰上げ返済

繰上げ返済とは、通常の返済以外に元金の一部や全部を返済することを言います。繰上げ返済を行うことでローンの元金が減るので、利息も減り、トータルの返済額を減らすことができます。

繰上げ返済の方法には2種類あります。
「返済期間短縮型」
毎回の返済額を変えずに、返済期間を短縮します。利息の軽減効果が大きいのはこちらの方です。
「返済額軽減型」
返済期間を変えずに毎回の返済額を減らします。


でも、ちょっと待ってください。いくつかの理由で、繰上げ返済はしなくていいのでは?という意見もあります。順番にお話しします。

理由① 手元資金

自営業でもサラリーマンでも、病気や怪我、事故などで突然お金が必要になることがあります。お家のリフォームなど、メンテナンス費用がかかるかもしれません。返済しても潤沢に資金がある場合は良いですが、そうでなければ繰上げて返済してしまったものは返してもらうわけにはいきません。また、まさかの時のお金は銀行から借りることはできません。手元に資金があることはとても大切です。

なら、預金か、小規模共済やNISAで運用しておけば、必要になった時にすぐに手元に用意することができます。また、自分の事業への投資に回した方が良い場合もあるでしょう。

理由② 団体信用生命保険

住宅ローンを組むとき、私たちは「団体信用生命保険」(以後、団信)に加入します。団信とは、住宅ローン返済中に債務者が死亡した場合、残りのローン残債を保険会社が金融機関に支払ってくれる生命保険です。残された家族は残りのローンを支払う必要がなくなります。

賃貸の場合は万が一のことがあっても家賃を支払続けなくてはいけません。それが家を購入した場合は支払わなくても良くなるのです。住宅ローンという非常に大きな負債を抱えることにはなるのですが、この保証が付いているだけで、安心して借りることができるのです。

保険料は金利に含まれています。金融機関が保険会社に支払っている形になり、すべての金融機関で加入が義務づけられています。同じ保障内容で他の生命保険に入ろうとすると、高い保険料を払わなくてはいけないでしょう。

繰上げ返済をすると団信の保障も外れるので、繰上げ返済のメリットと団信に入り続けるメリットを比較して検討しましょう。

団信の種類

保険料は金利に含まれると言いましたが、基本になる一般団信にプラス、金利を上乗せすることでオプションを選択することができます。どんなものがあるのか見てみましょう。

「一般団信」
先述の通り、掛け捨ての死亡保険。万が一の際、ローン残高が0円になります。高度障害でも同様です。高度障害というのは、失明、言語や咀嚼機能の障害、脳や脊髄の障害、両手首や足首のうち二箇所以上の切断などです。

「ワイド団信」
団信保険加入時は他の生命保険と同様に審査があり、もともと健康に問題がある人は加入できないですし、ローンも組めません(フラット35は可能)。ただ、薬を使用していたり疾患があってもワイド団信なら入れる場合があります。金利は0.2~0.3%上乗せになります。

「夫婦連生団信」
ペアローンを組んだ場合、どちらかに万が一の時があるともう一方の人が返済しなければいけないのですが、夫婦連生団信の場合はその場合も残債が0円になります。フラット35の”デュエット”という商品などがあります。

「がん団信」
がんと診断されたら残債が0円になる”がん100%団信”と残債が半分になる”がん50%団信”があります。表層のがんやごく早期のがん、転移を起こさないがんは適用外になります。0.1%~0.3%の利息上乗せだとして、総利息額を考えて判断すると良いでしょう。若くローン返済を始める人にとっては、がん罹患の確率と天秤にかけると、がん団信はつけなくてもいいかもしれませんね。

「疾病型団信」
こちらはがん団信などとは違い、入院で月をまたいだり支払日をまたいだりした時に、その月の支払いが免除されたり入院費が支給されたりします。入院保険のような感じです。3大疾病型、7大疾病型、全疾病型など、いろいろあります。

「その他」
銀行によってオリジナル商品があります。”身体障害2級以上”とか、”要介護2以上”など、細かく条件が異なります。先に団信の内容をチェックしてからローンを組むことはあまりないかもしれませんが、ローンを申し込んだ金融機関はどんな団信を用意しているのか、理解しておくと良いでしょう。


以上、団信についてお話ししました。繰上げ返済には”金利の支払い総額を減らすことができる”、”借金から解放される”などのメリットがあります。金利が高いほど繰上げ返済の効果は高いと言えます。しかし、繰上げ返済には数万円程度の手数料もかかりますし(フラット35は繰上げ返済の手数料無料)、今回お話ししたようにローンを借り続けるメリットもあるのです。

以前、知人の年配の女性の「繰上げ返済なんかしなければよかった。若くて経済的に苦しい時に無理して返済したけれど、今の方が子供も独立してよっぽど余裕がある。」という意見を聞きました。人それぞれ状況が違うので、長期的に見て、自分にとってはどうするのが良いのかを考えて判断しましょう。


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