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祝! 想定外の出来事に柔軟に対応できると思う学生が69%増! 2019年度の「社会創造演習」を振り返る⑥

2019年度の「社会創造演習」をアンケートで振り返る。第5回〈ほしい未来〉編につづいて今回は〈デザイン〉編を分析していきます。

※メイン写真は、花とハーブを使って朝起きたくなるジャムをつくるプロジェクト「はっぴージャムジャム」より


〈目次〉

第1回
そもそも「社会創造演習」って?/例えばこんなマイプロジェクト7選!

第2回
〈ソーシャルデザインに必要な力〉を測る32の指標/アンケート結果(全体編)/2020年度の32の指標

第3回
「〈本来の自分〉として一念発起する力」とは/〈本来の自分〉編のネタ元/〈本来の自分〉編のアンケート結果

第4回
「秘められた〈リソース〉に光を当てる力」とは/〈リソース〉編のネタ元/〈リソース〉編のアンケート結果

第5回
「日々の煩悩を〈ほしい未来〉に転じる力」とは/〈ほしい未来〉編のネタ元/〈ほしい未来〉編のアンケート結果

第6回
「必要な〈デザイン〉を自在に実現する力」とは/〈デザイン〉編のネタ元/〈デザイン〉編のアンケート結果

第7回(※近日公開!)
総まとめ


「必要な〈デザイン〉を自在に実現する力」とは

〈ソーシャルデザインに必要な力〉の4つめが、必要な〈デザイン〉を自在に実現する力です。本当に必要とされていることと自分ができることを見極め無理のない解決方法を〈デザイン〉し、それを忍耐強く実行する力ともいえます。

ソーシャルデザインのプロセスは葛藤や焦りの連続です。よかれと思ってやってみたことが押し付けになってしまったり、まったく思い通りに進まなかったり... 結局は「やってみないとわからない」ことだらけだからこそ、ひとつひとつハードルを越えながら学びを深めていくことが大切になるのです。


〈デザイン〉編、8つの指標

詳しい分析に入るために、結果の全体像と、〈デザイン〉についてのマインドセット、スキルセットを測るための指標をご紹介しておきます。


マインドセット編


スキルセット編


まず「どんな方法で、ソーシャルデザインするのか?」という大きな問いを、「何から始める?」「何を身に付ける?」「何を打ち破る?」「何を振り返る?」という4つの切り口に分解します。(どうしてこの4つなのか気になった方は、関連記事「菩薩薩たちからの〈16の問い〉」へ!)

そして、それぞれの問いについてマインドセットとスキルセット、2種類の指標を考えます。


【問い⑬】何から始める?

M13. 何か問題が起こったときは、人任せにせず自ら動くことが大切である
S13. 思いついたことを、まずは小さくでもすぐに実行することができる

これらの指標は、「デザイン思考」という考え方からヒントを得ました。プロトタイプをつくり、失敗を重ねることで問いが磨かれ、より本質的なデザインが可能になるのです。ただし、M13のスコアが最初から高かったので、調整のため、2020年度は「M16. ゴールに近づいているとすれば、手段がどんどん変わっていってもいい」をM13としました。


【問い⑭】何を身に付ける?

M14. 足りないスキルを学ぶことで、次第にできるようになることは嬉しい
S14. 足りないスキルがわかったとき、それを身につけるための練習に取り組むことができる

これらの指標は、「ダイナミックスキル理論」という考え方からヒントを得ました。足りないスキルを自覚し、それを身に付けることで、もうひとつ上のステージのプロジェクトを実践できるようになります。ただし、M14のスコアが最初から高かったので、2020verでは「M14. できることだけでなく、いま足りていない知識やスキルを自覚することは大切である」とし、S14も「S14. 足りない知識やスキルを身に付けるための計画を立て、実際に取り組むことができる」としました。


【問い⑮】何を打ち破る?

M15. うまくいかないときこそ、成長するための絶好の機会である
S15. さまざまな葛藤や焦りを、誰かと共有することができる

これらの指標は、「レジリエンス」という考え方からヒントを得ました。想定外のことだらけだからこそ、心の柔軟性を高めることがプロジェクトの成功の鍵を握るのです。2020verではよりレジリエンスにフォーカスし、「M.15 思い通りにならないときこそ、自分の思考や行動のパターンを見直すチャンスである」「S.16 想定外のことが起こったときでも、柔軟に対応することができる 」をS15としました。


【問い⑯】何を振り返る?

M16. ゴールに近づいているとすれば、手段がどんどん変わっていってもいい
S16. 想定外のことが起こったときは、柔軟に対応することができる

これらの指標はM13と重なる部分があり、2020verではより「リフレクション」という考え方にフォーカスし、「M.16 しっかり振り返る時間を持つことで、次の一歩はよりよいものになる」「S.16 できたこと、できなかったことを自分の言葉で振り返り、その学びを次にいかすことができる 」としました。


〈デザイン〉編のアンケート結果は?

それでは改めて、アンケート結果をみていきましょう。


【問い⑬】何から始める?

「S13. 思いついたことを、まずは小さくでもすぐに実行することができる」が76%増、マインドセットにスキルセットが追いついた指標となりました。最終的には8割超えとなり、まさにマイプロジェクトを実行した大きな成果といえそうです。


【問い⑭】何を身に付ける?

こちらは先程も書きましたが、マインドセットのスコアが高く、有益な指標とはならなかったのが反省点でした。また、結果的に2019年度は場作りや発表に挑戦したのですが、それらのスキルが身に付いたかどうかを明確に振り返れていなかったので、2020年度ではこの授業で身に付けることができるスキルセットを整理し、意識的にステップを踏むことにするなどカリキュラムを工夫したいと思います。


【問い⑮】何を打ち破る?

こちらはM15で明確に「思う」という学生が325%増となり、約半数まで増えたのは大きな手応えでした。一方、S15では明確に「思う」という学生は増えたものの、全体的には中間から減少していました。これは後半のマイプロジェクト演習で、信頼関係が育まれているグループと不十分なグループに二極化してしまったことによるものかもしれません。このあたりは来年度に向けた反省材料としたいと思います。


【問い⑯】何を振り返る?

こちらはもともとスコアが高かったとはいえ、M16で10割の学生が「思う」と答えれくれたことことは大きな成果でした。またS16の方も後半のマイプロジェクト演習を通じて、69%増、7割を越えとなったのも、カリキュラム的には成功といえそうです。


ということで、〈デザイン〉編をまとめると、

・マイプロジェクトを実行することで、想定外のことに対する柔軟性が高まる

・グループの信頼関係によってスコアに差が出る

・指標の被りがあったので調整が必要

といったところでしょうか。

来年に向けた改善点としては、レジリエンスやリフレクションにフォーカスしrたワークを洗練させていきたいと思います。

以上、〈デザイン〉編のアンケート分析でした! 次回は学生からのコメントをピックアップしながら2019年度の総まとめをしたいと思います。

〈第7回につづく〉

はじめまして、勉強家の兼松佳宏です。現在は京都精華大学人文学部で特任講師をしながら、"ワークショップができる哲学者"を目指して、「beの肩書き」や「スタディホール」といった手法を開発しています。今後ともどうぞ、よろしくおねがいいたします◎