見出し画像

ニムロデは神の敵か味方か(2)


「ニムロデは神の敵か味方か」続編。前回
  https://note.com/studyingbiblenow/n/n8f6d805b0266
  ニムロデは神の敵か味方か
では,「いのちのみことば(Thru The Bible)」で,原著ではNKJV(新・ジェームズ王欽定訳)を使っているのに対し,日本語版では新改訳改訂第3版を使っているため,解説文に矛盾を生じていることについて調べてみた。今回はその続編(追加資料)。

※ 復習

New King James Version:He was a mighty hunter before the LORD; therefore it is said, “Like Nimrod the mighty hunter before the LORD.”
新改訳1970:彼は主のおかげで、力ある猟師になったので、「主のおかげで、力ある猟師ニムロデのようだ。」と言われるようになった。
新改訳改訂第3版(2003):彼は【主】のおかげで、力ある猟師になったので、「【主】のおかげで、力ある猟師ニムロデのようだ」と言われるようになった。
新改訳2017:彼は【主】の前に力ある狩人であった。それゆえ、「【主】の前に力ある狩人ニムロデのように」と言われるようになった。

【新改訳2017アプリの「注解」はどうなっているか】

   https://apps.apple.com/jp/app/id1321378770
   「聖書 新改訳2017」をApp Storeで
の「注解」。

『<主のおかげで>は直訳「主の前で」,ニムロデが強くなったのは,彼がたとい主を信ぜず,主に反逆していたとしても(ニムロデはヘブル語では「我々は逆らおう」の意),摂理であり,主の恵み,あわれみによるのである.』

※ かなり苦しい解説と私は思う。<主のおかげで>と訳しているのは新改訳第三版までで,2017年版では<主の前に>と訳を直しているのだから。

【回復訳聖書のフットノート(注解)の記述はどうなっているか】

https://www.google.co.jp/books/edition/聖書_回復訳/wpU7EAAAQBAJ?hl=ja&gbpv=1&dq=ニムロデ+回復訳&pg=PA34&printsec=frontcover
https://www.google.co.jp/books/edition/聖書_回復訳/wpU7EAAAQBAJ?hl=ja&gbpv=1&dq=ニムロデ+回復訳&pg=PA34&printsec=frontcover
聖書 回復訳 - Google Books ニムロデ
   https://books.google.co.jp/books?id=wpU7EAAAQBAJ
   聖書 回復訳: 本のレイアウト
   Jgw日本福音書房, 2021/08/05

聖書 回復訳(2003):彼はエホバの御前に勇ましい猟師であった.それゆえ、「エホバの御前に勇ましい猟師ニムロデのようだ」と言われている。

『ニムロデは,反キリストの最初の予表であり,神に反対する最初のものでした。歴史によれば,ニムロデは多くの偶像のものをもらたしました(エレミヤ7:18とフットノート)。神の敵対して形成された人の政権は,ニムロデに始まる,反キリストで終わるでしょう(エレミヤ50:1とフットノート,ダニエル2:32-35とフットノート)。バベルとニネベの町はニムロデによって建てられ(10-11節),バビロンとアッシリアの国の首都となりました。この二つの国は,神に敵対する人類の二つの有力な表徴です。』

※ プレビュー画面(上記URL)ではフットノートが切れて表示されるようだ。当方,Google Books版を購入して見ているので,上記で正しい。

※ 本文では「御前に」という言葉を使い,あたかも神の味方のごとき表現をしている(ように当方には思えたが),フットノート(注解・解説)については,その逆(神の敵)として説明している。回復訳のスタンスは「原文に忠実」な訳(そのためのわかりづらさは許容)と,フットノート(注解)により補うことだから,これでも問題はないのだろう。いささか紛らわしいとは思うが。

【フランシスコ会訳には,注解なし。(ニムロド)】

・J-ばいぶる2017 フランシスコ会訳『聖書』(2011)2.0.0.0 で確認した。<10章>ニムロドの偉業 の「訳注」表示には『註008->(3) 本章中の名の大部分は民族の名称であるが、「ニムロド」は、個人の名前。』としか書かれていない。

・合本される前(神の名ヤーウェが削られる前のもの)はどうだろうか。創世記は著作権切れになっているので,WEBで公開されている。(Kindle版のは注解が省かれているので注意。)

https://blog.goo.ne.jp/utaski1930/e/f974f682cdb8e6670de82e0437408791
著作権の切れた日本語訳聖書 - ある「世捨て人」のたわごと
  http://bible.salterrae.net/francisco/
  フランシスコ会訳 原文校訂による口語訳・フランシスコ会訳聖書 索引
    はしがき と モイゼ五書解説
    創世記解説
    創世記(1958年)
があるが,「ニムロド」(ニムロデ)については記載なし。
    創世記(1958年)
の記載は下記(注解なし)。神の名(ヤーウェ)が削られてない点に留意。

|10:8クシュはニムロドを生んだ。ニムロドはこの世の最初の征服者で、
|10:9ヤーウェの前に強いかりうどであった。それで、「ヤーウェの前に強いかりうどニムロドのように」とうたわれた。

https://www.babelbible.net/pdf/pdfmari.cgi
真理子日曜学校/修道会(応接室)
フランシスコ会聖書研究所:「創世記」テキスト部 中央出版社(1958)
ffj_gen_text.pdf
の記述

『(3) 本章中の名の大部分は民族の名称であるが,「ニムロド」は個人の名で9節のことわざにされるほど有名な英雄である。彼の領地(以下略)』
※ 神の敵か味方かは書いてない。名の意味も書いてない。

【新共同訳 聖書事典 ではどう書かれているか?→大した記述はなし】

・図書館に,新共同訳 聖書事典 2004-3-20 初版 日本キリスト教団出版局 があったので,見てきた(2023-10-28)。
   https://www.amazon.co.jp/dp/4818405256
   聖書事典―新共同訳 - 山内真, 木田献一
   出版社 ‏ : ‎ 日本基督教団出版局 (2004/3/1)
   ※ https://bp-uccj.jp/smp/news/n40227.html
     『新共同訳 聖書事典』に関するお詫び 2021/04/09
    の出ているいわくつきの事典ではある。
・神の敵か味方かは書いてない。名の意味も書いてない。説明が簡略すぎて拍子抜けした。

【新世界訳聖書 JW.ORG が詳しい】


https://www.jw.org/ja/検索/?q=ニムロデ
あまりにたくさんヒットするし,書かれた年代によっても内容が違ったりして,迷うところはあるが,当方興味惹かれたものは下記。

https://wol.jw.org/ja/wol/d/r7/lp-j/1200003259?q=ニムロデ&p=doc
https://wol.jw.org/wol/finder?wtlocale=J&docid=1200003259&q=ニムロデ&p=doc&srcid=sch&srctype=jwo
聖書に対する洞察,第2巻
ニムロデ
・『ニムロデという名前は「反逆する」という意味のヘブライ語動詞マーラドに由来』。
・聖書解釈百科事典,メナヘム・M・カーシャー編,第2巻,1955年,79ページ の引用。

・『彼はエホバ「の前に」(好ましくない意味で; ヘ語,リフネー; 「……に向かい合った」,もしくは「……に敵対する」。民 16:2; 代一 14:8; 代二 14:10と比較),またはエホバ「の前の」力ある狩人として際立っていました。(創 10:9,脚注)中には,この場合の「……の前の」という意味のヘブライ語の前置詞に好ましい意味を持たせる学者もいますが,ユダヤ人のタルグムやヨセフスの著作,それに創世記 10章の文脈は,ニムロデがエホバに逆らう力ある狩人であったことを示唆しています。』

※ 新改訳1970,新改訳第3版(2003)は,『好ましい意味を持たせ』てしまったために,「新実用聖書注解」
   https://dp/B013QZJ4DO/
   新実用聖書注解 宇田 進, 富井 悠夫, 宮村 武夫  いのちのことば社 (2015/8/11)
 と矛盾を生じてしまった事例(新改訳2017アプリの注解書が古いという問題)なのだろうと思う。

※ それにしても,JW.ORGの内容は素晴らしい。

https://wol.jw.org/ja/wol/d/r7/lp-j/1972687?q=ニムロデ&p=doc
https://wol.jw.org/wol/finder?wtlocale=J&docid=1972687&q=ニムロデ&p=doc&srcid=sch&srctype=jwo
ものみの塔(1972)
キリスト教世界 ― 神と戦う者

※ 『ユダヤ人の史家ヨセハスは述べます。「[ニムロデは]その政治を徐々に専制政治に変えていった。神への恐れの気持ちから人びとを引き離すには,人びとを自分の権力に絶えず依存させる以外にないと考えたのである。彼はまた,もし神が再び世を水で流し去るつもりであれば,神に仕返しをしてやる,と語った。洪水も達しえないほどに高い塔を建てようとしたのはそのためであった!…今や大衆は喜んでニムロデの決意に従い,神への服従を臆病とみなし,塔を建てたのである」―「ユダヤ古代史」第1巻,4章2,3節。』との記述あり。

※ 他の資料では,このヨセフス(ヨセハス)の記述を疑問視しているものもあるようだ。私自身はその疑問視の根拠がどうも薄弱な気がする。言葉巧みではあるのだが・・・巧言令色,少なし仁というか。

https://wol.jw.org/ja/wol/d/r7/lp-j/101998809?q=ニムロデ&p=doc
https://wol.jw.org/wol/finder?wtlocale=J&docid=101998809&q=ニムロデ&p=doc&srcid=sch&srctype=jwo
目ざめよ! 1998
動物に対するむごい仕打ち ― 間違っていますか

※ 『神は,わたしたちが動物から恩恵を受けることを許しておられます。聖書の原則は,食物にし,衣服に用い,身を守るために動物を殺すことを許しています。(創世記 3:21; 9:3。出エジプト記 21:28)しかし,命は神にとって神聖なものです。動物に対する人間の支配権は,命に対する敬意を表わし,平衡の取れた仕方で行使されなければなりません。聖書は,ニムロデという人物のことを批判的に述べています。ニムロデは,単にスリルを味わうためだけに,動物や,おそらく人間をも殺したようです。―創世記 10:9。』
との記述。動物に対する見方の解説は素晴らしい。

※ 「箴言 12章10節」もどこか他で目にした記憶があったが,ここでだったか。聖書は人間のために動物を支配することだけを強調しているといった批判をよく見かける気がするが,聖書には,動物の保護(自然保護)についての考えも書かれているという視点が抜け落ちているようだ。(以前,日本亀会議か淡水亀情報交換会で話したような記憶があるなぁ。)

https://wol.jw.org/ja/wol/d/r7/lp-j/1975720?q=ニムロデ&p=doc
https://wol.jw.org/wol/finder?wtlocale=J&docid=1975720&q=ニムロデ&p=doc&srcid=sch&srctype=jwo
ものみの塔(1976)
二番目の千年

「大洪水から200年たたないうちに,ニムロデはかこくな独裁者また王となっています。彼は至高の神に敵対して自分を高め,そのことから『エホバの前にあるかの力ある狩人ニムロデのごとし』ということわざができたのです。彼が狩ったのは動物だけでなく疑いなく人間も含まれていました。それで彼は暴政によって人類を支配しました。彼の反逆の道がバベルという都市および『頂きが天に達する塔』の建設によって頂点に達したとき,エホバは人類の言語を乱すという奇跡を行なわれました。」

※ ここでも,狩人の狩る対象が,動物だけでなく人であることが書かれている。「いのちのみことば」バーノン・マギー博士は,一歩進んで「人間のたましいの猟師」と表現している訳ではあるが。

【百科事典では?】
https://kotobank.jp/gs/?q=ニムロデ
   https://kotobank.jp/word/ニムロデ-110352
   ニムロデ(英語表記)Nimrod
   ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ニムロデ」の意味・わかりやすい解説

   ※ 簡略化すぎ。神の敵か味方かの視点なし。

   https://kotobank.jp/dejaword/Nimrod
   Nimrod
   プログレッシブ 独和辞典の解説
   『1 ((人名)) 〔聖書〕 ニムロデ(バビロニアの王で狩猟家.バベルBabelの塔を建てた).』
 
   ※ この方が,まだしっくりくる気がする。「バベルBabelの塔」=神の敵 とひと目で分かる。

※ ほか,ニムロデが建てた都市の解説が百科事典には有り,宮殿跡発掘や大英博物館での展示など,興味深いものがいろいろ有る。

※ それにしても,なんと聖書の記述の簡潔なことか。当時の人たちには常識だったので説明を省いたのだろうか。「いのちのみことば」のような詳しい注解がなければ,まず個人研究では見落としていたことだろう。

※ 聖書翻訳。今ならWEBで簡単に聖書翻訳を比較できる時代になったが,昔の訳者にとってはそうではあるまい。だからこそ,誤訳や間違った対処(原典には多数記載のある神の名を削ってしまうという大それたこと)をしてしまったのだろう。ピンときたら,すぐに調べられる時代になったことを喜びたい。もっともWEBには偽情報・勘違い情報もあるので,注意が必要ではあるが。

以上

【ご参考】
https://note.com/studyingbiblenow/n/n51fe5cc26220
テーマ別索引「今聖書を学んでいる」/note「プロフィール」機能をテーマ別索引にし「クリエイターページに固定表示」してみる。~懶道人(monogusadoujin)

https://note.com/studyingbiblenow/n/n8f6d805b0266 20231018:ニムロデは神の敵か味方か
https://note.com/studyingbiblenow/n/n89c2ac0a361a 20231029:ニムロデは神の敵か味方か(2)

https://note.com/studyingbiblenow/n/n2323f4212519 20230816:「いのちのみことば」(Thru The Bible)PDFを合本し,Kindleでリフロー(Reflow,文字サイズ可変)で読む・文字列検索できるようにする
https://note.com/studyingbiblenow/n/n4c0e2eef953a 20230817:「いのちのみことば」(Thru The Bible)の複数アプリ,公式サイト,Podcast
https://note.com/studyingbiblenow/n/n1bea7893a8f6 20230907:「RSSRadio Podcast Player」~iPhone標準搭載の「ポッドキャスト」(Apple Podcast)は「いのちのみことば(Thru The Bible)」が更新されないために代わりに使用。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?