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ニュー・リテールが捉えている「真のユーザー像」とは?

スタイラーと日本美食による共同トークイベント「China Conference -検索しても出てこない、中国ユニコーン企業解説 ニューリテール編-」が2019年6月14日(金)、EDGEof 渋谷にて開催されます。前回のフードビジネス編に続き、中国のイマを盛り上げる衣食住に関わる4社を例に、最新のニューリテールを語ります。

本記事ではニューリテールってなんだっけ?という基本的な部分から旧来の店舗販売とニューリテールに取り組むプラットフォーマーたちがどう異なるのかという点まで、トークイベントの事前情報としてお楽しみいただける内容をお届けします。

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オンラインビジネスは成長スピードが遅い?

小関:そもそも最初にニューリテールという言葉が出てきたのは、アリババの創業者Jack Ma(馬雲)が、2016年の Alibaba Computing Conference(阿里巴巴雲栖大会)において行ったスピーチで、今後10年から20年でオンラインのみで展開するリテール・ビジネスは消滅し、オンラインとオフラインがシームレスに融合したニュー・リテールが広がって行くというビジョンを表明しました。もちろん、アリババは傘下に天猫と淘宝網を持ち、年間の流通総額も80兆円に上るChinaの巨大オンライン・リテール事業者です。そして下の図は、そのアリババのニュー・リテール説明資料をデザインし直したものなんですが、ニューリテールを「消費者体験を中心としたデータ・ドリブンなリテールモデル」と定義しています。

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※pilotboat作成


興味深いのが、アリババによるとオンラインビジネスの問題点は
①成長スピードが遅い
②オンラインの顧客獲得コストが増加
③商品が試せない
としています。明白である③以外の2点は日本の読者にはわかりにくいかもしれないです。というのも、既存のオフラインビジネスと比べて、オンラインビジネスは成長性に富んでいるイメージがありますので。

董:アリババの言う通りで、中国のインターネット・ビジネスは非常に競争的な市場になっています。既に巨大企業が寡占しており、ユーザーの獲得コストは、どんどん上がっています。

小関:また興味深いのが、これを裏返すとオフラインの市場は成長余地がまだあることを意味してます。とはいえ、図の右側にある通り、オフライン市場も成長を維持するのに、土地や人件費などの理由によって運用コストがかかります。

董:オンラインの場合はウェブ上のトラフィックで勝負が決まるけど、オフラインのトラフィック規模は不動産で決まりますからね。両方のマーケットの問題意識を、ユーザー中心にデータ・ドリブンに店舗運営することで解決することを目指したのがニューリテールの肝でしょうね。

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小関:また付け加えると、中国の一般消費者の可処分所得が増えていて、彼らが新しいものを買う、体験するとなると、彼らの消費がオンラインだけではなくオフラインにも流れていくので、そこを取っていこうとしてるのではないでしょうか。

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董:おっしゃる通りです。淘宝網に代表されるように、オンラインでの買い物は一般的にチープな価格帯が主なので、ミドルクラスはそういった商品ではなく「高くても体験があるから買う」という選択肢を取っています。オフラインの場合は付加価値をつけやすいので、より豊かな体験を提供してモノだけではない商品価値を感じてもらうことでファンにしています。


日本では報じられないニューリテールのユーザー像

小関:6月14日のイベントで取り上げようと思っているのが、董さんが指摘されたミドルクラスに向けた衣食住のブランドが今急成長していますね。一番代表的なのが、アリババが運営するスーパー「盒馬鮮生(Heme)」なのですが、同じような要素はライフスタイルセレクトショップ「一条(Yitiao)」やインテリアセレクトショップ「造形(Zaozuo)」などでも観測できます。これら全てに共通するのが、決して安物じゃないということ。例えば、董さんの盒馬鮮生に対するイメージってどうですか?

董:たしかに日本のメディアはあまりその辺りに触れていませんが、決して安くはないですね。中国のウォルマートやカルフールと比べても高いです。日本の成城石井やデパ地下が近いです。まさにミドルクラスに向けて、体験と一緒に食品を売っていますよね。

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例えば、生簀に泳いでいる魚をその場でとって調理できたりというのも、エンタメ方向で重要な体験になっています。一条や造作も置いている商品はミドルクラス向け。彼らが付加価値の高いものを求めるようになってきて、必ずしもECが適切な購入チャネルでは無くなっています。タオバオはコモディティとかセールプライスが中心になっているので、オフラインには付加価値の高いものが進出している。

ニューリテールの主役になるのが、個人資産を持つミドルクラスと言われる人々。中国では30〜40代が多く、モバイル親和性が高いのが特徴です。世界の流行りもすぐに知れるし「より良いものが欲しい」というマインドになっている。


ニューリテールの経済性

小関:中国国内でアパレルECブランドを2社経営し、店舗も運営していた董さんならわかると思うんですが、店舗の運営コストは常に問題ですよね。一方でニューリテールの店舗は旧来とは違うKPIで運営されていそうです。

董:はい、実店舗であっても、キーはウェブビジネス的発想です。ウェブビジネスをやっていた人は行動指標もデータありきなので、ユーザーデータに基づいて話が進みますよね。でもオールドリテールの人はデータを活用する発想がありません。

私の店舗では毎日どれくらいの人が入って、どんな動きをするかの行動フローを徹底的に分析しました。すると試着した人はほぼ100%買うという結果が出たので、入店客には必ず試着をおすすめしました。ウェブビジネス的な発想で言うと、CVRが向上するんですね。

このように、来店客数や顧客あたりの平均購買単価、来店頻度や買上げ率といった指標を元にLTVを計測し、CAC(顧客獲得コスト)と比較をして、健全であればどんどん出店を加速させますし、わりに合わなければ退店します。

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小関:ウェブメディアみたいに店舗を運営しているんですね。前回のChina Conferencedeでも紹介した瑞幸咖啡(luckin coffee)も一年ちょっとで2000店舗ほど出店していますね。

董:おっしゃる通りです。luckin coffeeの例で言うと、顧客獲得コストは出店すればするほど激減しています。 ZARAと同じ戦略で、店舗そのものが広告なんです。良い場所に大きく出店すればそれが広告になりますから。

また、「ニューリテール」という言葉が流行った背景には、オールドリーテルの人たちが感じている驚異があります。そもそも店舗をどう捉えるかの軸が違うので、ニューリテールが入るところは、オールドリテールに全部勝ってしまうんですよ。動物という括りでは同じだけど、一方は哺乳類で一方は恐竜のような感じですね。単純に店舗経営しかしないようなところは淘汰されていくでしょう。

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小関:また、テクノロジーの側面だけではなく、ファイナンスの側面も見逃せません。luckin coffeeは創業まもなく200億円の出資を受けた後、今では既にナスダックに上場しています。 

董:私が中国で使っている例えですが、オールドリテールが普通の馬だとすると、ニューリテールはペガサスなんです。片方の翼はテクノロジー、片方はファイナンス。この二つがあるペガサスは一気に飛び去っていく笑。

あと、よく日本であるのが、オールドリテールの人がニューリテールっぽいことをやろうとなった時に、表面的なコピーをするんですね。「とりあえず無人店舗を作ろう」ではなく、大事なのはユーザー中心、データ中心です。

小関:いわゆるデザインシンキングになってないんですよね。ユーザー中心に作ってなくて、プロダクトアウトになっているケースが多く見られますね。

最後に、今回話した内容は可処分所得や消費といったマクロ経済の影響と、家の中だけではなく、街でもスマホを使うスマホセントリックな情報環境が関係しています、これは中国に限った話ではないですね。実は日本の若者や、他の新興国でも広く観測されるトレンドなので、日本企業の教養になるかもしれないですね。

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6月14日のトークイベントでは、衣食住にまつわる企業の事例を元にニューリテールの今と今後、そしてそれを日本がどう応用していくかについて語る予定です。先着40名なのでご応募はお早めに!

===イベント概要===

China Conference

-検索しても出てこない、中国ユニコーン企業解説 ニューリテール編-

日時:2019年6月14日(金)17:30〜20:00

定員:先着40名様

場所:EDGEof 渋谷

〒150-0041 東京都渋谷区神南1-11-3

https://edgeof.co/

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===タイムテーブル===

・17:00〜17:30 :受付開始(当日は名刺を3枚ご持参ください)

・17:30〜18:30 :トークセッション

・18:30〜19:00:質疑応答

・19:00〜20:00:懇親会(軽食あり)

===登壇者プロフィール===

董 路 (日本美食株式会社 CEO)

1972年生まれ、中国・北京出身。20歳で日本に留学し、1994年に埼玉大学経済学部に入学。同大学を卒業後、ゴールドマン・サックス証券に入社。その後、スタンフォード大学にてMBAを取得し、2004年に中国に帰国。

外資系コンサル、ベンチャーキャピタルを経て、2社のベンチャーを立ち上げる。2014年に事業を売却し、日本に拠点を移す。2015年12月、日本美食株式会社を設立し、スマホ決済サービス及びインバウンド集客サービスを展開中。

日本美食 https://www.japanfoodie.jp/

小関 翼(スタイラー株式会社 代表取締役)
Amazonにて事業開発を担当。ライフスタイル分野にマーケットデザインの問題が大きいこと に着目し、2015年3月にスタイラー株式会社を設立する。 未来の購買体験をアジアから作っていくことを目指す。Fintech、FashionTechを国内外に紹介。東京大学大学院修了。日英のメガバンクに勤務経験あり。

スタイラー株式会社 https://styler.link/

FACY https://facy.jp/


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