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インタビュー調査の常識・都市伝説のウソを暴く~序章

今回からはタイトルのようにインタビュー調査について常識だと思われていることやそれ故に生じている様々な問題を暴露するという立ち位置で論じていきたいと思います。そしてその問題に対しての対策を提示していきたいと思います。

また、一般的に持たれているインタビュー調査への誤解や疑問に対してのお答えや考え方も同様に提示したいと思います。

それらは従来、私に言わせると「歯切れの悪い」説明しかされてこなかったものであったり、偶然居合わせた対象者やインタビュアーの性格や資質に「責任転嫁」されてきたりしたものでした。特に後者については、インタビューの成果やクオリティの良否というものが「偶然」に左右されるという無責任な言説であり、インタビュー調査に真摯に関わるならば看過はできないはずのものです。

しかし典型例を示すと、この仕事に関わる人の誰もが「今日の対象者は良かった、あるいは良くなかった」という発言をしたり聞いたりすることがあったと思います。そのような発言が聞かれること自体がこの問題の根深さを物語っています。これは結局インタビュー調査のクオリティは偶然に良い対象者に恵まれないと担保されないという認識で言っているわけです。暴露しますと業界団体の事務局の方ですらそのようなことを私におっしゃったことがあります。これはプロとしてあまりにも情けなく、無責任な態度です。

しかし私自身もそれらに対しての明確な答えを見つけるのに長年の時間を要しておりました。そしてコロナ禍前あたりから答えが出始めました。これは意識マトリクス理論とALI理論の確立によるものです。さらにコロナ禍によって発生したインタビュー調査のオンライン化の流れがそれを加速させました。オンライン化は私にとっては言わばインタビュー調査への「ストレステスト」のようなもので、「オンライン空間」という人間本来のコミュニケーションが大なり小なり制約される条件の下でインタビュー調査を行う経験が増えたことによりその本質的なノウハウ、メソッドが磨かれる機会でした。それが故に、インタビュー調査において従来常識とされていることや都市伝説的に盲信されていることのウソを暴くことができました。またインタビュー調査に対して一般的に持たれている疑問についてもロジカルにお答えできるようになりました。その結果、従来インタビュー調査においてありがちな問題とされていたことに対しても効果的な対策を講じることができるようになりました。すなわちクオリティを高めることができたわけです。

また、インタビュー調査のオンライン化に伴って注目されたオンラインインタビューにおける困難も、実のところオフラインの時から元来あった問題がオンライン化によって増幅されて顕在化しただけのことで、つまりその原因は「オンライン化」ではなく、そもそもオフラインの時からあるインタビュー調査の設計や運営上の問題が原因であったに過ぎないということも結論付けられました。それは例えば「今日の対象者は・・・」ということが「あたりまえ」と思われている陰に隠れている問題であったということです。「声が大きく話を独占する人が出現する」ことや、「他人の態度にバイアスをかけ引っ張る」現象などが時々発生するのが「あたりまえ」のことだと思われていることなども同様です。それが「あたりまえ」であったり「偶然に発生する」ことであったりすることだとしている限り潜在しているそれらの問題の根本要因に手が付けられることはありえません。これらの現象にメスを入れなければならない所以です。

私の真意を述べる「枕」なので唐突ですが、日本の経済はバブル崩壊以来低迷状態を脱していません。むしろ長期にわたって「徐々に死んでいる」状態です。現在「GAFA」と呼ばれるような世界のトップ企業の位置には30年前には「トヨタ、ホンダ、松下、ソニー」といった日本企業が肩を並べていたのですが、その位置が奪われてしまいました。日本のGDP順位は中国、ドイツに抜かれ4位となり、一人当たりのGDPは世界トップから現在20~30位程度に転落しています。

マーケティングリサーチ、特にインタビュー調査はその状況を変革できる力を持っていると信じますがその「今日の対象者は・・・」を当たり前の言い訳として通用させてしまった業界、リサーチャー達の怠慢がこの体たらくを生んだ一因であると言って私は憚りません。これは、日本が情報戦に非力であったことが太平洋戦争に敗戦した一因であったことに相当、相似する現象であると思います。大層な物言いとなりますがこれに対策することは日本経済の再生につながると考えています。

実のところそこに自らも反省と痛みを感じる故ですが、まず身の丈に合わせ、この「インタビュー調査の常識のウソ」を暴露し、インタビュー調査のクオリティを高めるところから日本経済再生の反転攻勢の第一歩としてみたいと思ってこの連載を続けてきています。

次回から本編に入りますが、まず、インタビュー調査において起きるとされている諸問題、たとえば「沈黙」や「低調な発言」であったり、「声の大きな人の影響」などといった問題とその原因の分析を行っていますので、その紹介から入ろうと考えています。


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