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お寺の前にある掲示板のようなものに「今月の格言」みたいなものをのせているのを見かけたことがあるだろう。

先日、あるお寺の前で見つけた「今月の格言」には、こんなことが書いてあった。

自分の物差しで見るのではなく、
自分の物差しを見直せ。

言葉遣いは違ったかもしれないが、なるほどと思う視点だ。

たしかに自分の物差しが間違っていたり、古いものだったら、その物差しをかざして見るものは、正しく見えているとは言えない。

ただし、ここで難しいのは、「自分がどんな物差しを持っているのか?」を自分で自覚することが難しいということ。

そして、そもそも自分の物差しの存在を自覚できていないと、それを見直すこと自体ができないということになる。

そういうことを踏まえると、上で紹介した「今月の格言」は、理想的には次のようになるだろう。

まずは自分の物差しを自覚せよ。
そして、それを見直し続けろ。

私がコンサルティングなどで活用しているシナリオプランニングは、この「自分の物差しを自覚する」ための有効なツールだ。

シナリオプランニングは、普段なら考えないような先の未来(例えば10年後の未来)について、複数の可能性を考える。

なぜ、そんなことをするかというと、そうやってあえて視点を現在から外して考えることで、自分が思い込んでいること、つまり自分の「物差し」に気づくためなのだ。

たとえば自動車を取り巻く未来の可能性をシナリオプランニングで複数描いてみる。

そうすると、技術の進化や社会のニーズの変化などによって、「そもそも移動する必要がない世界(そこまでいかなくても、ほとんど移動を必要としない世界)」が見えてくるかもしれない。

そういう未来を目の当たりにすると、「今後、どんな未来になったとしても自動車は残り続けるはずだ」と考えていた自分の思い込みに気づくことになる。

現在の環境の延長線上にある未来だけではなく、技術など自分たちだけではコントロールが難しい外部環境の変化によって、今の延長線上にはない、非連続な変化を自覚することで、「このままいくだろう」と思っていた自分の「物差し」を自覚するのだ。

そうやって自分の「物差し」を一度でも自覚できると、上のブラッシュアップ版の格言に書いたように、その物差しが外部環境の変化とずれてきたときに、早い段階で見直す必要性にも気がつくことができる。

このように自分の「物差し」と取り巻く環境の両方について常に自覚的でいることで、将来の変化を予測するのではなく、変化を先読みし、その変化にあわせて柔軟に対応できるような(流行りの言葉で言えば「レジリエントな」)個人や組織に変わることができるだろう。

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Photo by Markus Spiske on Unsplash

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