見出し画像

英語の類語を手軽に、でも本格的に学ぶための一冊

英語の勉強が進んでくると、悩ましいのが類語の区別だ。

特に英語で話す、書くというときに、適切な表現の選択に迷うことが多いかも知れない。

迷ったときの選択肢として、自分がやっているものとなると、

・和英辞典をひく(そもそも単語があまり浮かんでない場合は特に)
・英英辞典をひく
・類語辞典をひく

という感じ。

和英辞典を使うことにはいろいろな批判もある。使うことを薦めている人も「必要悪」という言い方をする人もいるけど、最近の和英辞典は、英語で発信することを念頭においた工夫がされているものが多い。

たとえば、いま手近にある『オーレックス和英辞典 第2版』なんかは、そのための工夫がいろいろとなされている。

詳しくはリンク先のAmazonにのっているイメージを見てもらうのが良いかもしれない。

今回のテーマの類語の使い分けという点にしぼって言えば、例えば「仕事」ということばを『オーレックス和英辞典』で調べてみると、訳語と例文がのっているあとに「使い分けテーブル」という表がのっていて、work、job、business、task、assignment、duty、chore、labor、toil、grindという単語と使い分けの観点からの解説がのっている。

それ以外の英英辞典も類語辞典も、英語で発信をするなら一冊くらいは持っておいても良いだろう。

そういう辞書系とあわせて、今回一押ししたいのが最所フミの『英語類義語活用事典』だ。

著者の最所フミ氏のプロフィールはこんな感じ。

1908年大阪府生まれ。津田英学塾(現津田塾大学)、アメリカ・ミシガン大学英文科、同大学院卒業。1934~45年NHK国際局にてニュースおよび解説原稿を作成。さらに朝日新聞社、外務省渉外部嘱託を経て、1947~70年、日本リーダーズ・ダイジェスト社編集局、1948~74年、JAPAN TIMESの英文による映画週間評論の執筆を担当。1990年逝去。

この本が最初に出たのは1979年。それから改訂などを経て、いま入手できるものはちくま学芸文庫のもの。

昨年9月に同じく最所フミ氏による『日英語表現辞典』(こちらも名著)が復刊することになり、あわせて『英語類義語活用事典』も復刊された。

この『英語類義語活用事典』がすばらしいのは、最所氏が日本人の感覚を元にしてつくった事典だということ。その特徴をよくあらわしているのが、まえがきで英語のシノニム(類義語)を次の3種類に分けて考えると良いと書いてある部分のうち、次の箇所だ。

漠然とシノニムだと信じられてはいるがその実、異質な言葉。これは日本語訳の辞書を使って英語を学ぶ日本人の特に注意すべきグループである。(中略)英語国ではシノニム扱いされないこの種の言葉も、本辞典には入れてある。
(出所:『英語類義語活用事典』11ページ)
シノニムの辞典はアメリカにはかなりいいものがいくつかある。RogetのThesaurusは広い英語の語彙をカバーするが、日本語のあいまいさからくる独得の問題まで処理するようには出来ていない。この意味からいって、日本で仕事をする英文ジャーナリストはむろんのこと、英語の核心にふれることを目指す人々が気やすく使えるような、日本語で解説した類義語辞典が1つくらいはあってもいいのではないかと。
(出所:『英語類義語活用事典』19ページ)

(ちなみに、まえがきに「もともと本書は、私が個人的な必要にかられて作成したプライベートなメモから出発したもの」と書かれているのを読んで、その貴重な情報の蓄積に驚いた)

そういう意図で書かれている本書は、日本人にとって「かゆいところに手が届く」類義語辞典だといえる。

文庫版で400ページ程度というボリュームなので、これは調べる辞書ではなくて、通読する辞書だ。

自分は今は類書の『日英語表現辞典』(これは文庫版で600ページ程度)の方を先に読んでいるので、これが読み終わったら『英語類義語活用事典』にも取りかかりたい。

ただ、どちらの辞書も(少なくとも自分は)一読しただけで覚えられるような代物ではないので、何度も何度も通読していける貴重な辞書として(そういう意味で文庫化はありがたい)、ぜひ手元に置いておきたい名著だと思う。

【PR】シナリオプランニングの意味やつくりかたをコンパクトに解説した実践ガイドブックを公開しています。

Photo by Blaz Photo on Unsplash

この記事が参加している募集

推薦図書

サポートいただき、ありがとうございます。いただいたサポートはより善い未来を創るための資金として、知識や知恵の仕入れのために使っていきます。