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「間違ってるかもしれませんけど…」をunlearnする

いろいろな人に「note、いいですよ」とか「新井さんもnoteやってみるといいんじゃないですか?」と言われて、ここまできた。

そうかぁと思いながら、そういえば前にアカウントはつくっていたはずと思ってログインしてみると、どうやら2014年4月にアカウントは作っていた。noteがサービス開始してすぐくらいのタイミングでアカウントを作っていたことになる。

そして、実際に公開で投稿しているのはこのつぶやきのみ。

管理画面を見てみると、こんな感じ。

さっき紹介したどうでもいいつぶやき以外は、なにかを書いてみようとしている形跡はあるものの、結局、公開するまでには至っていない。

最後に書こうと試みていたエントリー「会社を立ち上げてみて」というのは、5年前に書こうとしていたものらしく、編集画面を見てみると、

昨日は5月の1日

とだけ書かれていた。ここでやめるって、寝落ちでもしたのか?というツッコミくらいは出るけど、我ながら何も覚えていない。

これまでインターネット上で書いてきたもの

自分がインターネット上で何かを書き始めたのは、大学に入った1997年頃で、懐かしのジオシティーズ上だった。

その後、1999年に当時使っていたプロバイダのnifty上で、「英語征服」というたいそうな名前の英語学習者向けのウェブサイトをつくり、同時にメールマガジンも始めた。この時のまぐまぐはメールマガジンを創刊すれば読者がどんどんつくような時代で、2年くらいやっていたら1万人を超えた。

そして、この時くらいから、ただ書きたいことを書き散らすというよりは、「これを書いたら、どういう反応があるか?」みたいなことを考えるようになった気がする。

その後、2003年にMovable Typeで立ち上げたブログでは、再び好き勝手には書いていたけど、シンクタンクに転職したり、自分の会社を立ち上げたりした後に書くものは、再び「これを書いたら、どういう反応があるか?」を意識して書いていた。

クライアント先のワークショップでよく耳にするセリフ

今の自分の会社ではシナリオプランニングをメインのツールに据えて、お客さまのご支援をしている。

(シナリオプランニングって何?という人は、弊社ウェブでスミマセンが、こちらをどうぞ)

世間的に言うと「コンサルティング」ということになるけど、実際はお客さまと一緒にワークショップをやって、未来についての可能性を検討し、その結果を元に戦略や計画やビジョンをつくったり、不確実な時代を乗り切っていける組織づくりなんかをすることが多い。

だから「コンサルティング」とはいえ、「先生」というわけではなく、一緒に未来のことを考えていく「メンバー」としてお客さまの中に入っていっている。

その一緒にやるワークショップでよく見る光景というか、耳にするのが、グループの中で、誰かがなぜだか申し訳なさそうに自分の意見を言うという姿だ。その時、そういう人は決まって、この記事のタイトルにも入れたようなセリフを言う。

「いやぁ、これ、間違ってるかもしれないんですけどね、私としては…」

さまざまな会社にお邪魔し、さまざまな立場や年齢の人とワークショップをやるが、どういう会社であっても、このセリフを聞くことができる。

厄介だなと思うのは、言う人がこのセリフを言うときに、あまり自覚的な様子がないこと。つまり、自分の意見を言うときに、あたかも自動再生されるかのように、このセリフが飛び出してくる。

端から見ていると「あぁ、そういう前置き、いらないのにな」といつも思う。

もちろん、そういう無意味とも思える遠慮というか、前置きをしなくて済むようにワークショップの設計をしたり、場づくりをするのが、弊社の役割だというのは認識している。

ただ、自分が気になっているのは、わたしたちの中にある「自分の意見を言う前に、つい、こういう前置きをしてしまう」何かなのだ。

捨て去る(unlearn)にも目を向ける

インターネットが登場して、誰もが情報発信できるようになってきたと言われているし、上で振り返ったように、自分はその恩恵を受けてきたひとりだ。

しかし、その「誰もが」発信できるようになった情報を、同じように「誰もが」読むことができるようになってもきている。

そうなると、自分が「これを書いたら、どういう反応があるか?」を常に考えるようになってしまったように、いつしか、書くことそのものよりも、書いたあとの反応の方を気にするようになってしまっている。

実はこれは情報発信の場でだけ起きているのではなく、先ほど紹介した組織の中でも起きている。つまり、組織の中で、周りに伝えることそのものよりも、伝えたあとの反応の方を気にすることが増えてきてしまっているように思う。

もちろん、反応を気にすることが、書く内容や伝える内容をより良くする助けになることは確かだ。

しかし、自分自身の書くことの経験や、お手伝いしている組織の中で見聞きした経験を踏まえると、どうも後者の「どういう反応があるのか?」の方に時間やエネルギーを割きすぎのように思う。

自分自身が悪い例の典型で、「どういう反応があるのか?」の方にエネルギーを注ぎ過ぎて、noteでの最初の本格的なエントリーを書くのに、実質、5年以上もの時間をかけてしまっている。

私たちは新しいことを身につける(learn)ことに熱心だが、そういう過程で、自覚的・無自覚的に身につけてしまった良くない習慣を捨てようとする(unlearn)ことには無頓着だったりする。

新しいことを身につけることが、こんなにも声高に叫ばれている今だからこそ、むしろ、自分の中の捨て去る(unlearn)にも目を向けていけるといいなと思う。

その中でも、個人や組織から健やかさを奪っているような気がしてならない、相手の反応を先回りして、肝心の書くこと、伝えることにブレーキをかけてしまうようなことは、積極的に捨て去っていけるといいんじゃないかと、5年間上がらなかったとてつもなく重い腰を上げて、noteのエントリーを書いている。

Photo by Gary Chan on Unsplash

■最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
シナリオプランニングを学びたい・試してみたいという方は株式会社スタイリッシュ・アイデアのウェブサイトをぜひご覧ください。




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