浅草ロック座 2023年10月公演「まつろわぬもの」第三期

1景は白鳥すわんさん。バレエは踊れる人だとは当然知っていたけど、浅草でこういうキビキビした雰囲気のダンスは初めてじゃないかな。
客席を見る視線に強く意識をおいていたのかなと思う。徹底して観客を誘うような、それでいて嘲りもするような笑みを含んだ表情が印象的だった。
ベッド着は背中から手首にかけてでっかいモールのような飾りがついていて面白い。バレエダンサーが踊る蜘蛛のベッドショー……イメージどおりのしなやかさでなんか新鮮だった。

2景は広瀬あいみさん。群舞の衣装は1stから共通。ややおさえた振り付けが悲しみを押し殺すような風情あり。南まゆさんとの振りのコントラストも絶妙。クールな表情の中にも悲しみが織り込まれている。
ベッドショーでは、モチーフの人物を演じている時間とポーズを切る瞬間とがシームレスにつながっていて、あふれる感情の爆発がポーズ切りになっている、生活とストリップとのつながりを感じる景だった。

3景。パブリックイメージに近い前田ののさん、という感じがする一幕。群舞の樋口みつはさん、白鳥さん、デビュー週のももせおとさん含めて、めいめいが自分のペースで踊っているのが見ていて楽しい。
ののさんのソロシーン。群舞と同じ色合いのミルキーブルー的なドレスで登場。虫たちはドレスのアクセント+髪飾りで出てきました。あおむし演出、3rdに向かうにつれて少しずつ落ち着いてこなれた感じです。
気難しいお姫様という同じテーマの中でも、群舞ではかわいさ、3曲目ではコケティッシュさ、立ち上がりはめいっぱいの表情のメリハリをつけて魅せる、といった異なるいじらしさを感じた。

やっぱり4景にきましたか、矢沢ようこさん。1st(赤西涼さん)、2nd(鈴木千里さん)と見てきての矢沢さんの群舞は、なんだろう、すべてにバランスのとれたダンスという感じ。これがロック座のスタンダードなのだなあと感じる。
群舞が終わって、移動盆に乗って前盆に向かってくるときの、直立不動なのに出てくる凄み。サマになります。ポーズ切りも立ち上がり曲の大サビまであまり見せずにこの満足感。一仕事終えたと感慨に浸りながら帰っていく矢沢さんの背中……さすがでした。

5景はデビュー週のももせおとさん。群舞の途中、ふと演者5人の輪ができたときに自然な笑顔を見せていたのが印象的だった。新人さんがラスト数日の公演であんな感じで笑ってくれていると、見ているほうも心なしか安心する。
ベッド着はピンクでフリフリのついた振袖ドレス。短めのスカートから出たお尻がかわいい。曲にのってポーズ切り中に動いたり、ファンサもいっぱいで、あれほどまでに恥じらいがないと若干不思議ちゃん系?……なんて思ったりもしましたが、楽しくやっている姿を見るに越したことはないですね。


6景の前半は矢沢さんと樋口さんのコンビダンス。なんかすごくいい、面白い組み合わせだ。踊りの波長が合っている気がなんとなくする。そこまでキビキビし過ぎず、かといってユル過ぎず。
ベッドは髪飾りにツノをつけたいで立ちで登場。1stのような血は吐かないものの、口から……唾液? 水? を出して苦しみながらオナニーをするという、これまでとはまた別方向の衝撃。しかも、そんな自分に激しい自己嫌悪を感じていた様子。とてもアナロジーの効いたベッドショー。あえて鮮血のビジュアルよりも“ばっちい”という印象を観客に向けるのは、より生々しくて醜くて、面白い演出だと思いました。

7景は南まゆさんメイン。2ndまで見てきて個人的に傑作だと感じていた景ですが、今回もこれまでの感動がそのまま引き継がれていると思いました。まゆさんの凛々しくて手足を大きく使ったダンスはこれまでにないカッコよさを感じるし、群舞のメンバーも他の景からまたひとつギアを上げたというか、キャラが立っている感じがした。
ベッドショーでは、最初は2ndまでと似たベッド着で登場。上着を脱ぐと白い衣装だったのが新鮮だった。身体をとにかく大きく使った振り、ポーズ切りも大胆なものが多くて、ポーズ中に身体がブレることもあったけど、それすらも躍動感となって迫力ある演技に仕上がっていた。

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