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~神話・民話の世界からコンニチハ~ 22 エンメルカル王の伝説より、伝われ! 粘土板の文字!

すこし遅ればせながら、新年明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願い致します。

昨日の月曜から、または今日、1月5日は仕事始めの方も多いと思われますが、今日はなんと、あの「千と千尋の神隠し」や「となりのトトロ」そして「もののけ姫」で日本の神さまがたや妖怪? お化け? の世界をアニメーションで親しみやすく描いて来られた、宮さん(宮崎駿氏の愛称です)の80才のお誕生日だそうです! おめでとうございます!

引退なんかぶっ飛ばして、死ぬまでアニメを作り続けて頂きたいものです。

彼が残していくアニメは、後進の「おおかみこどもの雨と雪」や「君の名は。」や「天気の子」や、京都アニメーションの作品などで描かれる、神性溢れる自然や街、そしてキャラクターたちを美しく描くという雨後の筍のような日本アニメの興隆に引き継がれていると思うのです。

スタジオジブリの、ディズニーとは違うアニメーションの作り方は、今後も金曜ロードショーやネットフリックスを通して日本だけでなく全世界の視聴者に観る機会が与えられますから、そこから「千と千尋の神隠し」や「となりのトトロ」や「もののけ姫」を通して日本の神々という意識にアクセスしてくれる方々も多くなり、そこから地球の地域ごとの神さまがたや伝説といった、昔の人たちが愛し残していった神話の物語や詩をアニメにしたい、という若者がどんどん出てきてくれないかな、なんて想像がふくらんでしまいます。

新年にふさわしく、ビッグドリームを語ってしまいました♪


さて第二十二回は! 第十四回から第十八回までを英雄神のギルガメシュさま、第十九回から第二十一回をギルガメシュさまの父上であられるルガルバンダさまを追いかけてきました。今回は、ルガルバンダさまの父上であられる、エンメルカルさまの伝説からお話のご紹介&インタビューです。


今回のお話

王エンメルカルさまは、都市国家ウルクの街を作り上げ、420年間治めた方でした。太陽神ウトゥ/シャマシュさまの息子であり、とても偉大な方で、初めて文字を作ったと言われています。

文字の始まりは、こうでした。

エンメルカルさまは、あるとき都市国家アラッタを支配下に置こうと考えました。しかしアラッタはとても遠く、ウルクから七つの山を越えたところにありました。

このため、アラッタの領主にエンメルカルさまから降伏の勧告を賜った使者は、その内容を伝えようとするのですが、その使者はどうしても長々としたエンメルカルさまの言葉を暗唱することができず、何度も練習しましたがダメでした。

そこでエンメルカルさまは粘土板をこしらえ、形を整えて、そこに言葉を記した文字を掘りこみました。使者はアラッタに到着したのち、エンメルカルさまの言葉を文字通り刻んだ粘土板を持って領主に面会しました。

粘土板に掘られた文字の通りに告げた使者は、

「これは我が主人が語った言葉である。これは彼の言葉である。…光り輝く王、支配者であるウトゥ神の息子エンメルカルは私にこの粘土板を与えた。アラッタの領主よ、この粘土板を調べ返答を述べられよ」

そう、アラッタの領主に無事伝えることが出来ました。


……世界最古のカンニングペーパー!!(笑)いや、カンニング粘土板。それでは、インタビューと参りましょう!


すー: ギルガメシュさま、エンキドゥさま、よろしくお願い致します。

ギルガメシュ: 何と言うか、文字そのものが魔法のようなものだな。

すー: 元祖、タブレット端末かもしれませんね。記録大事、ということがお話からよく分かります。

ギルガメシュ: ほかのところの神話は、口頭での歌や踊りや楽器の演奏、そして紙や石板などによって伝えられていることが多いわけだが……我が都市ウルクとその周辺は、メソポタミアとひとくくりには言っても、その内実はシュメール、アッカド、バビロニアといったさまざまな都市国家から出た王たちが覇権を争い、ずっとさまざまな王権が代わる代わる治めてきた場所だからな。神々の、時代ごと、地域ごと、さまざまに言われる名と性格がごちゃごちゃになっていると言ってもいい。そのなかで、確固たる言葉、つまり記録が戦があっても後世まで残るようなものとは何か。それが、粘土を使っていくらでも作れる板に、文字を彫り込むということだったんだな。

すー: 物語の記録という行為そのものが神聖っぽいですね。そのおかげで、何万点という粘土板がここ200年くらいのあいだに次々と発掘されて、古代メソポタミアの神話や伝説がまるっと現代に復活したんですよね。まさに魔法、マジックです。

エンキドゥ: オレも、冥界に行くとき、粘土板があったら、良かったのか?(第十八話を参照)

すー: そうかも! 粘土板で冥界の掟をギルガメシュさまがエンキドゥさまに伝えていたら、肉体の死は迎えずに無事戻ってこられたかも……。

ギルガメシュ: 俺がそんなまどろっこしい粘土板を使うと思うか?

すー: まどろっこしい言うた!(笑) いえ。まあ、冥界の掟はきっとエンメルカルさまの降伏勧告よりも、ものすごく長くなるでしょうから、粘土板があっても物理的にかさばるし重すぎてエンキドゥさまに渡すのはムリ、ってなりそうです。エンキドゥさま、カワイソす……。現代のタブレット端末とか、スマホがあったらうまく行ったかもしれませんね。

ギルガメシュ: 我が祖父の偉大さは正義と平和によりウルクを治め、文字によってあらゆることを記録できるようになったこと。フンババやグガランナを倒す役目を持った俺とは、これもまた対照的だな。

すー: エンメルカルさま、ルガルバンダさま、そしてギルガメシュさまのありようを俯瞰すると、三代目のギルガメシュさまが一番やらかした、という記録のようにも見えますね(笑) メソポタミア神話のなかでも人生の苦難を知った大人のための物語としては、一番ギルガメシュさまのお話は深みが際立っているように感じますけれども。

ギルガメシュ: そうして粘土板で残ったこのメソポタミア神話だが、次からはどこの話を持ってくるんだ?

すー: やはり「エヌマ・エリシュ」という、創世神話は外せませんね! ゲームではギルガメシュさまが持ってる世界で最強クラスのダメージを与えられるアイテム、という扱いになってる場合もありますけど。三代の英雄神のお話がこれで一区切りついたので、友情や、家族愛や、ユーモラスな雰囲気もあるこの三代の方々の神話に比べ、とても血みどろなのでとっつきにくいんですが、メソポタミアの中でもバビロニア系の「エヌマ・エリシュ」から創世の神々のお話をやっていこうと思います。ギルガメシュさま、エンキドゥさま、ありがとうございました。次回もよろしくお願い致します。

第二十二回「~神話・民話の世界からコンニチハ~ 22 エンメルカル王の伝説より、伝われ! 粘土板の文字!」は以上です。

すこしでも楽しんで頂けたなら、それに勝る喜びはありません。

ここまでお読みくださり、誠にありがとうございました。

次回予告

第二十三回は、メソポタミア神話の創世の物語である「エヌマ・エリシュ」(文書の冒頭の数語をさす言葉であり、「そのとき上に」という意味)から、淡水の神アプスーさまと海水の神ティアマトさま、そしてその子どもたちのお話&インタビューを予定しています。お楽しみに~。

※ 見出しの画像は、最近noteに実装されたCanvaというサービスを利用して、私が素材をお借りしたものです。




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