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「過去未来報知社」第1話・第19回

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>>第18回
(はじめから読む)<<第1回
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「それでおめおめ帰ってきた、と」
「それが初仕事の報告をしにきた部下に言う言葉ですか!」
 いきりたつ笑美に、東谷は目を見張る。
「随分、勢いづいてきたね。六合荘効果かな?」
「今日は変な人にばっかり会ってるからです」
「ちなみに、その中に僕は入っていないよね?」
 さあ、と目を反らす笑美。
 東谷は、なぜか嬉しそうに手を組む。
「けっこう、けっこう。
 しかしなぁ、今のままでは彼は依頼は受けないのだろう?」
「というか、まともに会話ができる状態じゃないですからね。
 そのネコさんって人が帰ってくれば、仕事、始めるんじゃないですか?」
「ネコさんか~。アレも気まぐれだから」
「課長、ご存知なんですか? ネコさんのこと」
「当たり前だよ~。ネコさんを経由しないであそこの大家と話したことがあるのは、
 僕の知ってる中では西畑さんだけ」
 笑美は、ポン、と手を打つ。
「あ、そうだ。
 西畑さんに仲介役をお願いすればいいんじゃないでしょうか?」
「いや、そらだめだ」
 あっさりと却下され、ガクッとなる笑美。
「なんでですか? 学生時代から知ってるみたいだし、仲良さそうな感じだったし」
「だめなものは、だめ。その話をしてもだめだよ」
 東谷の声は穏やかな中にも、
何かゴリッとしたものを含んでおり、笑美は口を閉じた。
「そんな余計な事を聞かせたら、
 また仕事の邪魔をするつもりか! って僕が怒られるでしょ」
 一転して能天気な声をあげる東谷に笑美はツッコむ。
「お小言が嫌なだけですか!」
「まあね」
 東谷はにやにやと答える。
「じゃあ、引き続きネコさんの捜索と」
「はいはい、まだ続けるんですね」
「見つかり次第、六合荘に住めるようにお願いしてみなさい」
「はいはい……は?」
「だって、君。住むところ、ないんでしょ?
 根津さんの話だと、空いている部屋があるそうじゃない」
「嫌ですよ! あんなわけのわからない隣人のいるアパート!」
 東谷は軽く首を傾げる。
「人間なんて、誰も彼もわけのわからない生き物だよ。
 どこに住んだって同じ、君次第だって」
 時々この人は、分かってんだか分かってないんだか分からないことを言う……。
 笑美は計り知れない上司の顔をみつつ、
(この街にはまともな人間は自分しかいないかもしれない)
 と思い始めていた。
 棚上げする能力だけは、人一倍な笑美だった。

>>第19回
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