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「過去未来報知社」第1話・第10回

<<第9回
https://note.mu/su_h/n/ne3191e07d19a
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 狭い路地をうねうねと曲がり、いい加減、元来た道に戻れるか不安になってきた頃に、その建物は見えてきた。
 今までうねってきた道が急にまっすぐになったその先に、その建物は建っていた。
 細い路地のどんづまりをせき止めるように建っている和風建築。
 路地裏なのだから薄暗いはずなのだが、なぜかその建物だけさんさんと日が当たっているのは、実は知らず知らずのうちになだらかな丘を登らされていたから、と気が付く。
 眼下に六合の駅が見えていた。
 猫は笑美を振り返り一声「にゃあ」と鳴くと、塀を上って姿を消してしまった。どうやら屋敷の中までは案内してくれないらしい。
「ここは、あんまり変わらないんだな」
 声に振り向くと、いつついてきたのか、あの大男がぴったりと寄り添っている。
「わっ!」
 思わず後退りする笑美の後頭部を、男が掴んで引き寄せる。
 笑美は男の胸に飛び込む形になった。
 カッと顔が火がついたように赤くなる。
「は、離してください!」
 暴れる笑美に男はのほほんと応えた。
「離すのはいいが、暴れると頭を打つ」
「え?」
 見回すと、大人二人がやっとすれ違える程度の路地はブロック塀で囲まれている。
 つまりは、あのまま飛び退いていたら、笑美の頭は確実にこの石塀に激突していた、ということになる。
「……助けて、くれたんですか?」
「さあ……」
 相変わらず要領を得ない感じで手を離すと、男の目は空を泳いだ。
 笑美は一つ息を吐く。
 とりあえず目的地にはたどり着けたのだ。
 男のことは、後回しにしよう。
 相変わらず後をついてくる男を意識しないように意識し、笑美は屋敷へ足を向けた。

>>第11回
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