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「過去未来報知社」第1話・第47回


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「おっかしいなぁ」
 男はモニターを見つめながら、被ったキャップをとって頭を撫でた。
 つるり、としたスキンヘッドが光る。
 帽子を被っていると少年のようだが、こうなるといきなり年齢があがる。
 笑美に強引に六合荘の撮影を迫った男性スタッフ。名前を「田中」という。
 ブラックアウトしたモニターを見ながら、田中は顎を撫でる。
「六合荘が写ってる映像、全部こうなんです。
 現地でモニターチェックした時は、ちゃんと写ってたんですよ!」
 泣きそうな顔で噛み付いてくる新人に、田中は手を振る。
「分かってるよ、俺だってあの役所の姉ちゃんと一緒に見てたんだから」
 必死の新人に対して、田中は興味深そうにモニターを眺めている。
「俺、この前どこの担当してたか、知ってる?」
「田中さんの、担当ですか……」
 新人は口ごもる。 
 知らないわけではない。
 知ってはいるが、それを言って良いのか迷っている風情だ。
「俺、心霊現象のおっかけ番組やってたんだよねー」
 田中の口元に笑みが浮かんでいく。
「知ってますよ。人気番組でしたから……」
「面白かったんだけどなぁ!」
 どんどん機嫌がよくなっていく田中に、新人は身を引く。
「お前のやり方は強引すぎるって、つまんないこと言われてさあ。
 今じゃ、イケメンタレントの副収入のお手伝い、みたいな仕事してさ」
 クックック、と田中は喉で笑う。
「知ってる? 六合ってさ、なんか変わった町なんだってさ」
「田中さん、商店街でなんか色々聞きまわってたと思ったけど」
「つつけば、まだまだいっぱい出てきそうなんだよ」
「……ダメですよ、田中さん。
 ぶらり旅、毎週あるんですから、時間ないですよ」
「平気、平気。ロケハンの移動時間をちょちょっ、とね」
 新人の顔が真っ青になる。
 田中は嬉しそうに両手をもみ合わせた。
「おい、確かアカシの次の映画、撮影が六合だったよな!」
「は、はい確か来週から撮影入るはず……」
「よし、密着レポ、入るぞ!」
「は?」
「何、ポカン、としてるんだよ。
 こちとらアカシとは2年も一緒にやってるんだよ?
 そのアカシの主演映画が始まるのに何もしない気、お前? 冷たいな~」
「……この間までアイドル映画なんてくだらない、って言ってたくせに」
「さあ、面白くなってきたな」
 新人の声は、田中には届いていなかった。
 テーブルの上の全てのものを横になぎ払うと、
 田中はいそいそと書類を作り始めた。
「……さあ、怖くなってきたなぁ」
 青ざめた顔で新人は呟いた。

>>第48回
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