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「過去未来報知社」第1話・第2回

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「……どなた?」
 はちきれそうなほど大きな腹を抱えた、唇のぼてっとした色っぽい女性が、エプロン姿で小首を傾げた。
「あの、私、今日からここに住むことになっているんですけど……」
「え?」
 女性が怪訝な顔をする。しかし、怪訝な顔をしたいのは笑美も同じことだ。
「どうした?」
 女性の後から現れた男を見て、笑美は「ああ、箪笥を人にしたらこんな感じな」と思った。
 つまりは、そんないかつい風体の男が、腕を組んで笑美を見下ろしている。
「この方が、今日からここに住む予定だって言うんだけど」
「それはないだろう。俺たちだって、今日ここに越してきたばかりだぞ」
「え?」
「え?」
「え?」
 三者三様の声を上げて、笑美と猪俣夫婦は見つめ合う。
「ほら、これが契約書だ!」
 部屋の中にとって返して小さな整理ダンスから契約書を出して突きつける猪俣夫。
 負けじと笑美は自分の契約書を突きつける。
「同じ、内容……」
「日付も、住所も、金額も……」
「あら、まぁ、いったいどうし……うっ!」
 ほんわかとしていた猪俣妻の顔が急に激変し、腹を押さえてうめき出す。
「どうした、圭子!」
「あ、あんたぁ!」
「大丈夫ですか?!」
 苦しむ圭子を支える笑美。猪俣旦那はわたわたと立ち上がり部屋を右往左往する。
 笑美は猪俣妻の背をさすりながら、その背中に怒鳴りつけた。
「なにやってんですか! 救急車! 早く!」
「わ、わかった!」

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