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「過去未来報知社」第1話・第44回

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>>第43回
(はじめから読む)<<第1回
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 結局「ぶらり諸国漫遊・商店街の旅!」に六合荘は写っていなかった。
 あれだけ面倒かけておいてなんだ、と笑美は思ったが、
 東谷は「そんなもんだよ」と笑っていた。
 画面の中で明るく、爽やかにレポートをしているアカシは、
 実際に見たアカシよりもキラキラと輝き、非日常的な雰囲気を感じた。
 横にいた時よりも画面で見るほうが傍らにいるような気がするのは、
 どこか不思議である。
「そりゃあ、あれだ。アイドルはいつも自分の側にいるような気になる、 
 あれと同じだ」
「えー、それっておかしくないですか?」
「おかしくない、おかしくない。ほら、今アカシが俺に話しかけてる」
 サンタの店のお惣菜を頬張って微笑むアカシに、東谷が手を振る。
「まぁ、基本的にカメラに向かって手を降ってるわけだけど。
 結局カメラを通じてアカシを見ているのは俺だろ?
 だから、無意識に俺に話しかけているって感じるようになってるのさ」
「だって、TVですよ」
「人間は、頭で分かっていることが意外と理解できていないもんだよ」
 言いながらアカシは自分の頭を指差す。
 書類を打つ手を止めて、笑美は首を傾げた。
「そんなもんですかねぇ」
「そんなもんですよ。逆もまた真なり、ってね」
「逆?」
「それより、書けたの? 『クリスマスの妖怪』の報告書」
「単なる課外活動報告書です! そんな書類は作りません!」
 クリスマス騒動にTV撮影。
 不慣れなことに対応している間に年は明け、
 笑美は初めての六合の正月を迎えていた。 
 とはいえ、六合役場は仕事熱心である。
 元旦の餅つき大会、出初め式、書初め大会、新春カルタ大会に続き、
 正月マラソン、成人式、と行事がめまぐるしい。
 勿論、地域対策課の本業では一つもないが、対策課は便利屋。
 いいようにあちこちの課に引きずり回される。
 さらにどういうわけか笑美は「りくもん専属アクター」とみなされたらしく、
 りくもんが登場するシーンには全て狩りだされた。
 イベントの中にはアカシが登場するものもちらほらあった。
 先日からなぜあんな人気アイドルが田舎町に? と疑問に思っていた笑美だが
 どうやら近く、アカシ主演の映画撮影があるらしい。
 その撮影場所貸し出しにかこつけて、市長が呼び寄せているらしい、と聞き
 流石は商魂たくましい六合の市長、と笑美は頷いた。
 りくもんの中で何度かアカシと目があった気がしたが東谷の言葉を思い出し
(だから、アイドルってのは怖いねぇ……)
 と笑美は小さく首をすくめていた。

>>第45回

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