「過去未来報知社」第1話・第8回
<<第7回
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延ばし放題の髪と髭が顔の殆どを覆ってしまっているが、微かに覗く肌や目の感じは、それほど男が年をとっていない様子を表している。
あまりかまっていない感じの身なりに反比例して、来ている服は赤字に金と緑のフレークが散った少し洒落た感じのシャツで、履いているパンツも痛んでいるわけではなく、それなりのダメージジーンズのようである。 アンバランスな身なりをした長身の男は、なにを言うともなしに笑美を見下ろしていた。
「えーと……。それ、あなたの猫ですか?」
我ながら間抜けな質問だ、自分で言いながらも笑美は思った。
「……ねこ?」
男は自分の腕の中を見下ろす。どうやら、今まで自分が猫を抱いていたことに気がついていなかったようだ。
どうも様子がおかしい男だが、不思議と笑美には男に対する恐怖心は沸いてこなかった。
「ああ、ここにもいたのか」
起き抜けのようなぼやけた声で言うと、男は腕の中の猫を撫でる。
ねこは気持ち良さげに喉をならした。
その後ろのブロック塀を、足早に数匹の猫が駆け抜けていく。
ーー 猫が多い町なのかな。
笑美は猫たちを眺め、そう心でつぶやいた。
「すみません、この辺の方なんですか」
男はぼやーっと辺りを見渡す。
「そうとも言えるし、そうじゃないとも言えるし……」
なんとも要領が得ない感じである。
「ご存じないなら、結構です。ありがとうございました」
歩きだそうとした笑美の服が、くい、と引っ張られる。
振り向くと、男が遠慮がちに指で笑美の服をつかんでいた。
「な、なんですか?」
「連れて行ってくれないか」
「は?」
「六合荘、知ってるだろ」
笑美はしげしげと男を見つめた。
知っているもなにも、そこは笑美の目的地である。
>>第9回
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